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5章呪われた魔王
5章2話何もかも失った魔王
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シラユキは魔王を背負い、王神達の追っ手から何とか逃れ、ピロロ王国の魔王城に何とか戻った。
玄関前で待っていたのはマツタケとヒヨリだった。
魔王の怪我は重傷はもちろんだが、シラユキ自身も脚に酷い火傷を負っていた。
銀髪は乱れ、焼け焦げ、群青の両眼は泣いていた、それでも声を振り絞る。
「魔王様に早く治療を」
マツタケは起床明けだったのか、磨いていた歯ブラシを落とし、驚く。
「どうしたんや」
当然、ヒヨリもおっとりした顔を歪め、口を抑える。
「魔王様」
「早く治療を……」
*
瀕死の魔王は龍の湯へという魔王の専用の治療の浴場へ運ばれた。
今もメイドロボット達による懸命の治療が行われている。
そして、ある一室では、シラユキ、マツタケ、デュランダルを交えて、話が行われていた。
「大丈夫かいな?」
「こんな傷すぐ治る。それよりも、我々でドラグロワ王神から魔王様のお力を今すぐ取り戻さなければならない」
すると、立ちながら腕を組んでいたデュランダルが足でテーブルを叩く。
「シラユキとやら、本気で言ってるのか? 神に刃向かうなど狂気の沙汰だ。そもそも、あいつは魔王様ではない、偽者のどこの馬の骨か分からん、ただの小僧だ。助けてやる義理はない」
その瞬間、シラユキの氷剣がデュランダルの眉間に向けられた。
尖った先は骨に触れる触れないかのギリギリのライン。
冷徹な群青の両眼には少し涙を浮かべていたが、憎しみの炎が上回った。
対して闇の中に灯った紅の両眼は一切動じることはない。
「小娘あまり調子に乗るなよ」
「どっちがだ? 魔王様を侮辱するな」
「事実を言ったまでだ、あの魔王は偽者だ? まさか、知らなかったとでも言うのか?」
「私にとってあの方が魔王様だ。なぜなら、あの方から私が創造されたからだ」
「その力は本物の魔王様の力。あの小僧の力ではない」
「侮辱するなと言ったはずだぁぁぁぁぁ!!!!」
シラユキの矢先はデュランダルの眉間に突き刺さす。
しかし、デュランダルの眉間の骨は思った以上に硬く、掠り傷程度が限界だ。
瞬間、デュランダルも、黒刀を下ろし、シラユキの白い顔に刃を向けた。
恐ろしい闇の殺気が生じる。
「殺すぞ」
「撤回しろ。魔王様は偽者ではないし、魔王様の力だ」
「馬鹿な臣下だ」
デュランダルがシラユキの頭部を斬ろうとした瞬間、マツタケがソファーでくつろぎながら、呑気に話し出す。
「確かにあの男は魔王ではないんや、クリムトという男や。だが、シラユキを創造した力はクリムトの力その物や。なぜなら、ピロロ様は創造のスキルを持っていなかったからな。ワイを創造する時は、自らの遺伝子を創造の媒体に預けて、創造しなければならなかったんだ。そうやろ? デュランダル?」
「……」
デュランダルは刃を下ろし、懐に閉まい、息を荒げながら、後ろを向いた。
「命拾いしたな小娘」
シラユキは興奮を抑えるも、怒りの両眼は変わらない。
「現状、王神と戦うのは無理や」
「行かなければ良い。私は行く」
「冷静になろうや。シラユキ一人で倒せる相手ちゃうで」
「じゃあ、どうすれば」
どうしようもならない現状に、悔しさを露わにするシラユキ。
その時、更なる不運の報せが届く。
メイドロボットが室内に入り、告げる。
「第二支部向日葵畑の墓地にて、第三支部隊長、鬼蜘蛛将軍(アラクネ)とその他部下が墓地荒らしを行っています」
「何やと!? そこはワイの管轄や。でも、保護魔法が効いてるはずやが」
「その保護魔法は消滅していると見られ、墓地の中に侵入したという情報が」
「何やと! とにかく、行くしかないな? 行くで?」
マツタケは裸一貫なのは変わらないが、念の為にナイフをふんどしに入れる。
「姉ちゃん行くで」
「馬鹿を言え、魔王様の側を離れる訳にはいかない」
すると、デュランダルが、相変わらずの殺気を向けながら、
「偽者の魔王の警護は任せろ」
眉間に皺を寄せ、睨むシラユキ。
清楚で美しい顔なのにも関わらず、口が悪い。
「貴様に任せられるか!」
「ここにいる者であの墓地に行くのはお前しかいないだろう。偽者を血を受け継ぐ者だからな」
「殺されたいのかぁぁぁ!」
シラユキが吹雪の氷を投げつけようとするのを制止するマツタケ。
「やめや、やめや」
「離せ!」
すると、突然、マツタケが何かに気づいた。
「あっ! そういうことか? ワイらじゃあの墓地には入れんのや。たぶん、シラユキなら入れるかもしれん」
「どういうことだ!」
「原因は分からないが、おそらく、あの墓地に掛けられた保護魔法はクリムトのやで」
玄関前で待っていたのはマツタケとヒヨリだった。
魔王の怪我は重傷はもちろんだが、シラユキ自身も脚に酷い火傷を負っていた。
銀髪は乱れ、焼け焦げ、群青の両眼は泣いていた、それでも声を振り絞る。
「魔王様に早く治療を」
マツタケは起床明けだったのか、磨いていた歯ブラシを落とし、驚く。
「どうしたんや」
当然、ヒヨリもおっとりした顔を歪め、口を抑える。
「魔王様」
「早く治療を……」
*
瀕死の魔王は龍の湯へという魔王の専用の治療の浴場へ運ばれた。
今もメイドロボット達による懸命の治療が行われている。
そして、ある一室では、シラユキ、マツタケ、デュランダルを交えて、話が行われていた。
「大丈夫かいな?」
「こんな傷すぐ治る。それよりも、我々でドラグロワ王神から魔王様のお力を今すぐ取り戻さなければならない」
すると、立ちながら腕を組んでいたデュランダルが足でテーブルを叩く。
「シラユキとやら、本気で言ってるのか? 神に刃向かうなど狂気の沙汰だ。そもそも、あいつは魔王様ではない、偽者のどこの馬の骨か分からん、ただの小僧だ。助けてやる義理はない」
その瞬間、シラユキの氷剣がデュランダルの眉間に向けられた。
尖った先は骨に触れる触れないかのギリギリのライン。
冷徹な群青の両眼には少し涙を浮かべていたが、憎しみの炎が上回った。
対して闇の中に灯った紅の両眼は一切動じることはない。
「小娘あまり調子に乗るなよ」
「どっちがだ? 魔王様を侮辱するな」
「事実を言ったまでだ、あの魔王は偽者だ? まさか、知らなかったとでも言うのか?」
「私にとってあの方が魔王様だ。なぜなら、あの方から私が創造されたからだ」
「その力は本物の魔王様の力。あの小僧の力ではない」
「侮辱するなと言ったはずだぁぁぁぁぁ!!!!」
シラユキの矢先はデュランダルの眉間に突き刺さす。
しかし、デュランダルの眉間の骨は思った以上に硬く、掠り傷程度が限界だ。
瞬間、デュランダルも、黒刀を下ろし、シラユキの白い顔に刃を向けた。
恐ろしい闇の殺気が生じる。
「殺すぞ」
「撤回しろ。魔王様は偽者ではないし、魔王様の力だ」
「馬鹿な臣下だ」
デュランダルがシラユキの頭部を斬ろうとした瞬間、マツタケがソファーでくつろぎながら、呑気に話し出す。
「確かにあの男は魔王ではないんや、クリムトという男や。だが、シラユキを創造した力はクリムトの力その物や。なぜなら、ピロロ様は創造のスキルを持っていなかったからな。ワイを創造する時は、自らの遺伝子を創造の媒体に預けて、創造しなければならなかったんだ。そうやろ? デュランダル?」
「……」
デュランダルは刃を下ろし、懐に閉まい、息を荒げながら、後ろを向いた。
「命拾いしたな小娘」
シラユキは興奮を抑えるも、怒りの両眼は変わらない。
「現状、王神と戦うのは無理や」
「行かなければ良い。私は行く」
「冷静になろうや。シラユキ一人で倒せる相手ちゃうで」
「じゃあ、どうすれば」
どうしようもならない現状に、悔しさを露わにするシラユキ。
その時、更なる不運の報せが届く。
メイドロボットが室内に入り、告げる。
「第二支部向日葵畑の墓地にて、第三支部隊長、鬼蜘蛛将軍(アラクネ)とその他部下が墓地荒らしを行っています」
「何やと!? そこはワイの管轄や。でも、保護魔法が効いてるはずやが」
「その保護魔法は消滅していると見られ、墓地の中に侵入したという情報が」
「何やと! とにかく、行くしかないな? 行くで?」
マツタケは裸一貫なのは変わらないが、念の為にナイフをふんどしに入れる。
「姉ちゃん行くで」
「馬鹿を言え、魔王様の側を離れる訳にはいかない」
すると、デュランダルが、相変わらずの殺気を向けながら、
「偽者の魔王の警護は任せろ」
眉間に皺を寄せ、睨むシラユキ。
清楚で美しい顔なのにも関わらず、口が悪い。
「貴様に任せられるか!」
「ここにいる者であの墓地に行くのはお前しかいないだろう。偽者を血を受け継ぐ者だからな」
「殺されたいのかぁぁぁ!」
シラユキが吹雪の氷を投げつけようとするのを制止するマツタケ。
「やめや、やめや」
「離せ!」
すると、突然、マツタケが何かに気づいた。
「あっ! そういうことか? ワイらじゃあの墓地には入れんのや。たぶん、シラユキなら入れるかもしれん」
「どういうことだ!」
「原因は分からないが、おそらく、あの墓地に掛けられた保護魔法はクリムトのやで」
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