上 下
114 / 140
5章呪われた魔王

5章7話人狩り

しおりを挟む
 脅迫の黒眼を放つダルイ。これ以上の質問は許されないと云った目だ。
 デュランダルも、気迫に押されず問い掛ける。

「ゴブリン文明?」

「ゴブリン文明を解き明かすと言うことは、龍王神の秘密を明かすことになるのだ。それは、神に抗うことだ」

「……」

 その時、呻き声が聞こえ、向こうの木々にいたマツタケが胸から血を流し、倒れていた。
 団長の部下である大賢者達がぞろぞろと現れ、周囲を包囲する。
 ダルイは冷徹な黒眼で、

「お主達はここで死んでもらう。潔く、神の啓示に従え」

 デュランダルはすぐさま鬼気迫る様子で、シラユキにある青い石を渡し、言い放つ。

「早くそれを持って、魔王と共に向日葵畑の地下へ行け!」

「ど……どういうことだ」

「過去へ戻って王神を殺せ! さもないと、世界は終わる」

「わ……わかった」

 何とかシラユキ達は向日葵畑の地下へ逃げ込む。
 デュランダルはダルイと一人で戦うつもりだ。
 すると、ダルイの合図で、大賢者達は最上の聖なる呪文を唱え始め、デュランダルは意識朦朧とし、立っていられなくなる。

「……なんだこれは」

「言っておく神への畏敬である時間操作は効かない。拙者らにはその操作を止める神が付いている」

 デュランダルがふらついたその瞬間、大賢者達が右手を差し出し、光のレーザー剣を発生させ、一斉にデュランダルを突き刺した。

「グハッ……ハァハァ」

「最強の死神よ。誇れ、賢者の前で眠れるのだからな」

 
         *
   各王国から善良なる民衆達に同時生中継で声明が発表される。
 異例と云える超大国の王達が映し出され、歪な両眼と同じような内容を口にする。

「これから、我々王国は何のスキルや才能も無い市民や低級職業は排除することを実施します。もちろん、奴隷や囚人も同じです。生き残るのは、王族、貴族、上級職業、高い称号の者のみ。この世には優秀な者しかいらない! 愚かな、無能市民は斬り捨てる!」

 その発言を街中で目にし耳にした善良なる市民達は困惑と恐怖を覚える。
 すると、歪な笑みを浮かべた騎士集団がやってくる。
 危険を感じた市民は逃げようとするが、騎士が笑いながら追い掛けてきて、背中から斬り捨てる。

「あぁぁぁぁぁぁ!」

 女や子供でも容赦はしない。
 泣き喚く子供がいれば、喉をまず潰し、斬り捨てる。
 子を守る母親を見つければ、一切の情をかけず、親子ごと斬り捨てた。  
 やがて、街中は血と屍の街となる。 
 絶叫が響き、血の臭いが蔓延する。
 騎士や英雄の集団は奇怪に笑い、屍を踏み潰しながら進む。
 これは王国の命令であり、神の命令である。

         *
 空から絶望に苦しむ民衆を見、歪んだ喜びを覚える龍王神ドラグロワ。

「オホホホホ、これだ! ワシが見たかったのは! 幸せから地獄へ堕ちる愚かな民衆よ!」

 隣ではアカリの器を手に入れたゴブリアが無感情の両眼で、ドラグロワに歪つに微笑む。

しおりを挟む

処理中です...