最強の魔王による転生令嬢を巻き込んだ異世界チート無双計画

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6章愛憎渦巻くゴブリン文明

6章3話不安な一致

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 何?
 今なんと言った?

「ゴブミ姫の誕生だ!」

 魔王は目を震わせ、頭を抱え、あの忌々しい過去を思い出す。
 いや、あいつは死んだ。死んだんだ。
 そして、数十分後、皆で食べたり、飲み食いをする楽しい宴の時間が始まった。
 怪物や人間達が飲み交じる不思議な光景。
 裸の女達が踊ったり、火の棒で見事な演技をする道化の人間。
 ゴブリンキングは巨大な肉にむしゃぶりつき、一升瓶の酒を飲み干し、その演劇に大興奮。
 しまいには、酔っ払って、自ら服を脱いで、全裸で踊り子と踊る始末。
 また、踊り子の美女の尻を触ったり、胸を触ったりとセクハラ三昧。
 もちろん、そんな横暴な王に咎める者や注意する者は誰一人おらず、大笑いで見過ごすのだ。
 一方、新婦のリアは終始暗い顔で、ゴブミをあやしている。

 やがて、酔っ払ったゴブリンキングとリアが子を連れて、あの神官男の元にやってきた。
 リアは暗い表情で、作った笑いをする。
 周りの者は即座に立ち上がり、礼をした。
 ゴブリンキングはゴブミを鷲掴みのまま、堂々と皆に見せる。

「ひくっ……ひくっ……ほれ……可愛いだろうがぁ」

 良く見ると、その赤ん坊は、リアの薄い緑の毛、白い肌、緑の両眼の下にそばかす、神官の男の太い眉に似ている。
 この子がゴブミ。
 ゴブミは魔王をずっと、無言で見つめている。
 魔王は怖くなって、視線を逸らした。
 この子があのゴブミの訳がない。全然似てないじゃないか。
 あいつは、醜い顔で、性格も酷い奴だった。

「あひゃ……ひゃひゃひゃ」

「それにしても、リア様にそっくり。あれ? ゴブリンの血は……」

 酔いが一瞬で醒め、ぴりつくゴブリンキング。
 それに呼応して、聞いてはまずいことを聞いてしまったという沈黙が周囲に訪れる。
 でも、それを一蹴するのがゴブリンキング。

「ガハハハハハハ。ゴブリンの血液を少し入れたんだがな、足りんかったようだ」

「あははは」

 苦笑いするしかない周囲。
 ゴブリンキングも何やら違和感を感じ、やはり押し黙り、ゴブミをじろじろと見る。
 その空気を何とか穏やかにする臣下達。

「まあまあ、ところで、何か用があったのではないですか?」

「我が娘を見せたい奴がいてな」

 隣にいる神官の男はどうやらゴブリンキングの側近で、信頼の置ける人物らしい。
 ゴブリンキングが顔を真っ赤にし、ゴブミの頭を撫でながら、

「ドラグロワ。我が娘のゴブミだ。お前に見せたくてな」

「ゴブリンキング様に大変良く似ていますね」

「ガハハハハハハハハハハ。そうだろ」
 
 ドラグロワは死んだ両眼で、頭を下げる。
 その瞬間、魔王とシラユキは驚愕で、固まる。
 まさか、目の前にいる男が世界を滅ぼす神であるドラグロワ龍王神だと思わなかった。
 しかし、あの神は人間ではなく、龍だったはずだ。
 けれど、ゴブミの件もそうだが、否定は出来ない。
 そして、俺が過去に戻ってきたのは、今まで優しく接してくれたこの男を殺すという残酷な役目だということだ、それを改めて認識した。
 地上へ出ると、入口付近には黄金の向日葵畑が広がっていた。
 だが、水も無いこの砂漠地帯には異様な光景で、どうやって育ったのかは分からない。
 更に黄金の砂漠地帯を抜け、巨大な黄金のピラミッドや建造物が見える。
 ハイテクな機器を頼らず、人の労働と高度な知恵だけでここまでのものを創り上げたのだから、称賛ものだ。
 少し歩くと、人々が賑わう街中が見えてきた。
 割と民家も、石造りでしっかりとした建物。
 粗末な、地味な色な、布切れの民衆が楽しそうな顔で、買い物に行ったり、家路に帰って行く。
 すると、隣でドラグロワが自慢げな顔で、

「どうだ! ここには何でも揃ってる。野菜や肉、好きものを買うがよい」

 明るく振る舞ってはいるが、どこか無理をしているようだ。
 だが、それでも、俺はこの男、ドラグロワを殺さなければならない、アカリのために、世界のために。
 しかし、やはり、思いとどまってしまう自分がいる。
 優しくしてくれた男に対して、殺すという不義理はどうしても出来ない。
 普段の俺ならば、そんな私情は挟まず、殺していたのに。
 そんな折、一人の汚らしい老婆が倒れていた。
 見てみぬ振りは当然だが、ドラグロワだけは違うようだ。
 すぐさま、買い物籠から落ちたトウモロコシやレモンを拾ってあげ、立ち上がれるように手を貸した。
 そんなドラグロワは正義と優しさのある男。
 どこか、アカリと似ていて、惹かれるものがある。
 だが、老婆はいきなり怒り出して、ドラグロワの手を払い、渡された買い物籠も捨て、

「触るんじゃないよぉぉぉぉぉ!」

 白い髪の毛は汚く、目は魚のように濁り、歯は黒い。
 山姥の顔だ。
 騒然となる街中で、老婆は山の方を睨む。
 黒く、僅かに白く降りかかった、高い山、黒い雲で頂上は見えない。
 ボルザック火山。
 突如、老婆は頭を抱え、狂ったように叫ぶ。

「噴火じゃ! 噴火じゃ! 噴火じゃ! ゴブリン文明は滅亡じゃあああああああああああ!!!!」

 老婆は裸足で、叫びながら、一直線に走り出し、その際、大きなゴブリン騎士にぶつかり、地面に転んで、運悪くあった石に後頭部をぶつけて、動かなくなった。
 なんだあれは。

 ドラグロワは老婆を言葉を聞いて決心したのか、黄金の両眼で、決意して呟く。

「ゴブミはおれの子だ。愛の誓いを先にしたのはおれだ。ゴブリンキングではない」

 そして、血が流れるまで握り締め、怨み、憎しみ、怒りがごちゃ混ぜになった目をするドラグロワ。
 魔王は何か声を掛けようとしたが、ドラグロワは聞く耳を持ってくれない。

「おれはあいつを殺し、娘と妻を取り戻す」

「あいつって?」

「ゴブリン文明の創始者ゴブリンキングに他ならない」

 今まで、ゴブリンキングにあれほど忠誠と尊敬を誓ったように話していたのは何だったんだ?
 ドラグロワは血を流すまで、握り締め、叫ぶ。

「忠誠? 尊敬? そんなものこれぽっちもない。あんなのは嘘だ。ただ、皆はあいつの暴力を恐れているだけだ。あいつが創始者? 笑わせるな! 元々我々と地底王が千年もの間、共に死ぬ思いで地道に築き上げあげてきた地底文明をあいつが根こそぎ奪い、王も、人も、魔獣も殺し、自らを王にし、人間を奴隷として、ゴブリンを高等種族に置くことにしたんだ! 許すものか! そして、今度は大切なものまで……もう黙ってはいられない」

 長年の恨みと想いを寄せる人が奪われるという私怨が合わさり、憎しみは更に深くなる。
 
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