学習能力スキルを使ってチートスキルを覚える魔術の商人

一色

文字の大きさ
12 / 53
2章魔術師学院(閑話)

12話寮

しおりを挟む
 そして、寮について、フレスから色々と聞いた。
 廃れた城だが、百室程部屋があるらしい。
 また、広大な庭や池も所有している。
 住むにいい環境だ。
 窓辺に浮かぶ空は夕暮れの気配が窺え、奇妙な鳴き声をする黒鳥が不気味な雰囲気を醸し出す。
 ふと、視線を戻すと、フレスがソファーに座りながら、寝ている。
 きっと疲れているのだろう。
 今はこのままにしてやろう。
 すると、真正面の大きな扉が開き、金髪の男が現れた。
 よれよれのワイシャツとズボンを着込んだシルバラード=イルガ講師だ。
 にっこり笑う兄さん。
 どうしてここにこの先生がいるんだ。

「イルガ先生……」

「お前! はやくキッチンへ来いよ!」

「え……」

「ワイワイ、ガヤガヤの歓迎パーティーやろうぜ! な? な? 楽しいぞ!」

 なんだこの陽気なノリは。
 突然のイルガ講師登場に、歓迎パーティーやるぞと戸惑うしかない。 
 俺は強引にに促されるまま、廊下一直線を進むと、灯りのあるキッチンらしき部屋に通される。
 そこは広い部屋だった。洋館と呼ぶべき部屋。
 キッチン兼リビング。
 犬族の少年が憎たらしい笑みを浮かべていた。
 イルガは両手を叩き、

「Aクラスのホラホラ寮の諸君って、フレスはまだ寝てるのか……まあ良い。本日の入学式、小試験お疲れ様」

「ありがとうございます」

「この寮の管理人はこのイルガ講師が担当するからな。困ったことがあったら何でも言うんだぞ」 

「はい」

「さあ、それでガロロから自己紹介してもらおうか」

 その犬の少年は茶の短髪で頭頂部分がツンツンした耳とつり目の少年がブラウンの瞳をしている。
     1年Aクラス入学試験25位。

「俺はボルクス騎士伯家の長男ボルクス=ガロロ。まず言っておくがトーマス=ゼルフォード! 優秀な奴だときいたが、所詮はFクラス合格上がりの新入生、一方、俺はAクラスで合格した! つまり、おめぇよりも格上な訳だははぁぁぁぁ! あとな俺は校内ランキング1位になる。ライバルだとかそんな幼稚なことは言うんじゃねぇぞ! おめぇなんて相手じゃねぇんだよ!」

 なんだこいつ……。

「まあ、今日はこの辺りにしてやるよ。新人」

 ちなみに、魔術師のランクについてはルーキー、プラチナ、ブロンズ、シルバー、ゴールド、ダイヤモンド、エキスパート、マスターまでランクがある。
 最上級のマスターランクになれば名誉報酬は莫大な物になる。
 将来の末代まで繁栄するだろう称号。
 誰しも欲しくてたまらないだろう。
 だがこの高等学院を卒業し、魔術大学に入り、軍隊に所属したエリートコース街道を歩いた天才でも成れるかは分からない。
 その天才の中でも、ほんの一握りが成れるのだ。
 そして、結局、イルガが眠いということで観迎会は今度やることになった。

         ・
 夜、雑草だらけ庭から見える暗闇の空はとても綺麗なものだった。
 暗闇に浮かぶ満点の星が煌めく。
 その空を悲しそうな、どこか儚げな横顔で、エメラルドの女で、見上げる金髪のショートカットの少女。
 いつも陽気な笑みを見せてくれるのに、どうして、一人になると彼女はそんなに消えてしまいたいような顔をするのだろうか。

「眠れないのか?」

 頬に一筋の涙が流れ、必死で拭い、無理矢理な笑みを見せるフレス。

「あっ……ごめん、ちょっと無くしものしたのを思い出して」

「これのことか?」

 このペンダントを渡さそうとは思っていたが、いつしか忘れていた。
 フレスははっとした表情で、ペンダントを手に取り、涙を流し、胸に抱き締めた。

「良かったっ……」

「大事なものだったんだな。すぐ渡せば、良かったな。やっぱり、お母さんが恋しくて、ホームシックでもかかったのか?」

「うん……」

 言葉少なげな返事で終わるかと思いきや、彼女は拙い口調で話始めた。

「このペンダントに映っている写真は私の母親なの……優しくて、温かくて、美しかった……けれど、死んでしまったの」
 
「そうだったのか……」
 
 これ以上、俺に掛ける言葉はなかった。
 家族を失った悲しみは痛い程、分かる。
 そして、俺が生きている目的は家族を殺された復讐だ。
 
一時限 魔法歴史学
 元世界魔術師団所属ガルーダ教授 
    大教室

「1299年オルゼル一世はアナトリア西部にオルゼル帝国建国……最強の君主だと思う。1326年ブルザを征服し、首都とする……えーとなオルゼル帝国はな……」

 他の生徒は黒板に書かれた文字を空の画面に一生懸命に写していく。
 大変そうだ……。
 基本、魔術の勉強とは魔力数式や言葉を理解しながら、紙や魔力板に書き写していくのだ。
 だが当の俺はそんなことしてなくても、理解出来なくても、勝手に脳や身体が学習し、数秒も経過すれば、理解した脳と身体になっているのだ。
 記憶は一言一句違わずに、映像も鮮明に覚えられる。
 長期記憶にインプットされれば、永遠の記憶が刻まれる。
 短期記憶にインプットされれば、数日経過したら消失する。
 例えば、魔法歴史の教授は色々と自分なりの解釈を述べていたとする。

「ん……なんだゼルフォード……その態度は?」

「いや……」

「今、先生が言ったこと当然頭に入ってるんだろうな? 頭から足まで言ってみろ! 教科書なんて見るなよゼルフォード!」

 
「1299年オルゼル一世はアナトリア西部にオルゼル帝国建国……オルゼル一世は最強の魔術師だった。1326年ブルザを征服し、首都とする……えーとなオルゼル帝国はな……と言ってました」

 俺は一語一句違わない、スーパーコンピューターのような語り終え、大教室内をシーンとさせた。
  教授は唖然とした。
 このように3時間ぐらいまでの長い教授の講義の話なら一言違わずに覚えられる。
 けれど、俺にはこの教授の最初から最後まで何言ってるのか全く分からなかった。
 【ゲーム学習能力MAXスキル】のおかげで脳や身体は理解してるだろうが、俺の心では理解はしていないだろう。
 だから、高度な勉強をしても、覚えてるのか覚えてないのか分からず、いつももやもやとした感情に襲われる。
 そして、タイミング良く授業終了の鐘の音が鳴る。

「教授……どこか間違っていたら言ってください」

「……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...