あそこにいる公爵令嬢は、実は脱走してきたゴブリンです

一色

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2章アストレア家

2章7話遊び

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 そして、デブと出っ歯の使用人の女に嫌な顔で、雑巾とバケツを渡された。

「ほら、貧乏人」

「あ……ありがとうございます」

「あれ? あんたちょっと顔変わった?」

「確かに、少し綺麗になったというか……凄い美人だわね」

「何を言ってるのよ、見間違いよ。馬小屋のミアが美人の訳ないでしょ。ブスよブス。ブス」

「それもそうだわね。アハハハハハ」

 二人は笑いながら、去って行った。
 どうやら、ミアは使用人にも馬鹿にされ、苛められているようだった。
 どの顔で、私をブスと蔑むのか、自分の顔を鏡を見てから言え。
 心無いことを言われ傷つく度にどんどん私の心は醜くなっていく。
 あいつらにも腹が立つし、そんな自分にも腹が立つ。
 やり場の無い怒りをどこへ晴らせば良いか分からず、涙を垂らしながら、廊下で雑巾を拭いた。
 そのストレスを忘れるように一心不乱に。
 そこへ、銀髪の少女レイカが蔑んだ目つきで、腕を組みながら、やってきた。

「私の機嫌を損ねたら、こういうことになるの。覚えておきなさい」

 この餓鬼。
 もう、この餓鬼に取り繕うことは無い。
 どうせ、私を貶めようとしているのだから。
 私は眉間に皺を寄せ、強い顔で、立ち上がり、レイカを見下げた。  

「調子に乗るなよレイカ」

 レイカは私の顔に臆することも無く、髪を掻き分け、上品さを示して、急に目を見開き、恐ろしい顔をする。

「人殺し」

「まさか……」
 
 この子……私が……ミアを殺したことを……。

「見たわ。あんたがミアに毒を飲ませた所をね。証拠ならあるわ」

 レイカの手元から私が水入りのコップに毒を入れ、弱ったミアに飲ませている決定的な写真が数枚舞い上がった。
 私は声を震わせ、脚を震わせ、動揺しながら、崩れ落ち、必死でその写真を集めた。
 すると、レイカが私の髪を引っ張り、こう言った。

「あんたは今日から私の奴隷よ。夏休み中、たっぷりこの家でしごいてやるわ」

「あ……あ……」

 私は睨みつけ、拳を作りレイカを殺そうと思ったが、メイド達が向こうの廊下を頻繁に通るので、無理だった。
 すると、レイカは私の後ろ髪を引っ張り、床に強く投げつけた。
 次の瞬間、私の頭上に冷たい水が掛かる。

「あああああ!」

 凍える程の冷たい水。
 バケツがごろごろと転がったのを見送った後、見上げるとレイカが鼻で笑い、こう言い残す。

「明日、この家に友達を招待したの、ミアも来なさい」

「……」

「分かったら返事?」

「はい」

「悪いようにはしないわ。私の言うことを聞いてれば、あんたの扱いも変わってくるわよ」

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