時空魔術操縦士の冒険記

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2章ダンジョンへ向かおう

王戦1

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 とうとう王戦の日がやってきた。
 闘技場《コロシアム》の観客席には中層の要人しかおらず、閑散としていた。
 闘技場のバトルフィールドには白帽子の審判員が一人。
 一回戦第一試合はシャルマン陣営VSエドワード伯爵陣営。
 シャルマン陣営はシャルマン、俺、ロペスの最強パーティー。
 
 両側の空間から魔戦が出動する。
 左側から聖魔白騎士《ランスロット・パラディン》、シルバディウス、重戦車《ゼル・フォーゲン》。

 右側からエドワード伯爵陣営はエドワード伯爵、兵士1、兵士2。

【海賊英銃士《ガトリン》】
 右側から巨大な砲弾を肩に完備し、軽快な動きが可能となる細い体躯。
 茶と黒の魔戦。
 右目には黒のスコープを着用する事で、命中率が格段に上がる。
 海賊風のフォルムとなる。
 軽量化にした事で回避スピードが上がり、銃撃特化専用魔戦では最高峰の俊敏性と命中率を持つ。
 もちろん一発に放たれる破壊力も計り知れない。
 ヘルニア製の最新型。
 その機体を操縦するのはエドワード伯爵。

 他の兵士は灰色の騎士型魔戦。
 白騎士とほぼ同タイプの機体。
 盾と槍を使い攻撃。
 ヘルニア製の最新型。

 エドワード伯爵は鼻息を鳴らして、嫌みな表情をする。

「トーマス・アル、シャルマン……貴様らを……余はここで葬り去る」

「あんたまだ俺達を恨んでたのかよ。もういいだろ?」

「黙れぇぇぇぇ!!!! 不愉快なガキは生かしちゃいけない!!!!」

 目を剥き出し、唾をあちらこちらに飛ばすエドワード伯爵。
 俺は溜め息をつく。
 変な奴に目を付けられたな。
 すると、シャルマンが高く笑い、冷静に告げる。
 その分析に同調する俺とロペス。

「大丈夫さ……正直言って敵はそれほど強くないよ」

「いや、恐れてはいない」

「大丈夫ガァ。一気に粉砕ガァ」

「ははは……そうかい」

「貴様らぁぁぁぁ!!!! 余は貴様らを許さんぞ!!!!」

 怒りの声を上げるエドワード伯爵。
 そして、審判員がスタートの合図をする。
 先に動き出したのが灰色の騎士型魔戦の二機が槍を前に出し、出撃。
 兵士は雄叫びを上げる。

「おぉぉぉぉぉ!!!!」

 即座に重戦車《ゼル・フォーゲン》は大血剣《だいけつけん》で応戦。
 槍が高速連続で急所を狙ってくる。しかも右と左にニ機。
 重戦車は両手の大血剣で弾いていくが、二刀流の大剣では重量もあり若干である弾くのがワンテンポ遅れる。
 後半の矢継ぎ早の連打にとうとう重戦車は後退する。
 兵士らは余裕の笑みを浮かべる。

「敏捷性は無いようだなっ!!!!」

 騎士型の魔戦らの槍の乱打が止まらない。
 円を描くようにして槍の突き出しの連続。
 弾き返されたら、クルッと右へ回りながら、回転を利用して槍の横殴りの殴打。
 青い光芒の槍が殴るようにして重戦車の頭部に命中。
 重戦車は横へ弾丸のように吹き飛ばされる。
 壁に激突して黒煙が生じる。

「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 重戦車は攻撃力は高いが敏捷性が劣る。
 対して騎士型の魔戦は魔術や攻撃方法は少ないものの、攻撃力はややあり、敏捷性は高い。
 それにしてもあの強いロペスが押され過ぎている。
 それ程相手は強いのか。

 ロペスは渾身の声を振り絞る。

『スピードブースト』
 大規模な風の魔力を全身から放出し、敏捷力を高める。

 黒煙を払いのける迷彩色の重厚なる四角い機体。
 更に両手に携えた大血剣に緑の魔力を灯す。
 スピードアップと圧倒的な威圧感を全面に押し出し、突撃。 
 山に潜む野獣の咆哮。

「まだまだまだまだガァァァァァァァァ!!!!」
 

 大血剣を突き出し、緑の光条が迸《ほとばし》る。 
 灰色の騎士型の魔戦ニ機はあまりの迫力にぎょっとする。
 しかし、驚いてばかりはいられない。
 もう目前には剣撃が迫っているのだから。
 瞬間、ニ機は盾を展開し、攻撃を受け止め、二つの黒銀の盾を隣り同士に合わせる。
 鉄壁の防御が構築され、二つの盾は髑髏《ドクロ》マークを完成させた。

「ガンッ」

 盾と大剣が激突。
 盾から湧き出る緑の魔力。その魔力は両側へ離れるように出て行き、後から大規模な爆音と凄まじい風圧がフィールドに発生。

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」
 
 そして、暫《しばら》くすると緑の閃光が消え去る。
 
 観客席からどよめきが起き、状況を確認しよう声を上げる。

「なんだこれは!?」

「ど……どうなった?」

「ん?」

「どこだ?」

 あまりの爆風と爆発に俺とシャルマンも状況確認できなかった。
 俺は周りを見渡し、声を荒げる。
 シャルマンは紺髪を揺らせながら冷静を保ち、金眼を見開いた。

「ロペスさんぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「いる」

 黒煙が消えると灰色の二機と迷彩柄の重機体は対峙したままだった。
 ロペスは目を見開き、動きが止まる。
 重戦車は二つの大剣を盾に突き出したまま停止していた。
 ピンク色の魔力の両手が重戦車を自由を奪っている。
 ピンク色の魔力の正体が何か分からない。
 ロペスは危機を察知したのか、すぐさま退避しようとするが、重戦車で大剣を振り回し、抵抗しようとするが退避できない。
 それは敵から攻撃を受ける致命傷となる時間。
 だが心配ないようだ。
 恐らく灰色の魔戦らも先程の激突で相当な痛手を負っているはず。
 幾ら鉄壁の盾といえども、衝撃には耐えられまい。
 髑髏マークの盾は焼け焦げたような穴がある。
 大丈夫だ。
 しかし、次の瞬間。

「っ!!!!!」

 灰色の二機の魔戦は盾を横で振り大剣を弾き、槍を高く掲げ槍を跳躍し、下へ突き出し、物凄いスピードで落下する。
 兵士らニヤリとする。

「終わりだ」

 ロペスは震える手でレバー何度も引くも、重戦車が動かない。
 犬顔は青白い色へと変わり、恐怖に満ちた顔。
 大きな目を剥き出しにし、背筋からうっすらと冷たい汗が落ちる。

 瞬間、二つの槍が重戦車の機体を貫き、青い光芒の槍。
 垂直の青光が射した。

 ロペスの野獣のような叫び声が響いた。

「アァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
 

 観客席はあまり痛々しさに静寂に包まれた。
 
 ボロボロの迷彩柄の機体は地面に突っ伏し、頭部、胸には槍がそれぞれ刺されている。
 槍からドバッドバッ流れ出る真っ赤な血、死人のような魔戦。
 一切動く気配が無い。

 俺は目を剥き出しにして声を荒げる。

「ロペスさん!!!!!!!」

 すぐさま機体を動かし、助けに行こうとする。
 しかし、シャルマンに制止された。
 聖魔白騎士の大剣がシルバディウスの目の前に立ちはだかる。
 俺はムッとし、睨む。
 シャルマンは無表情のまま、俺を見る。

「お前……シャルマン!!!!」

「ロペスに任せよう」

「これは協力戦だろ?」

「そうだね。しかし、僕がリーダーだ。君は僕に従ってもらう」

「シャルマンっっ!!!!」

「ここで負けるようならうちのギルドにはいらないよ……ロペス」

「お前本気で言ってんのかぁ!? ロペスさん死んじ……」

「黙れ……」

 俺がその言葉を口にした瞬間。
 シャルマンは怒気の籠もった金眼で俺を睨んだ。
 死ぬはずはないと言っているかのように。
 

 そして灰色の二機の魔戦は重戦車の胴体を踏み潰す。
 すると海賊英銃士はスタスタとこちらへやってくる。
  
 
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