時空魔術操縦士の冒険記

一色

文字の大きさ
169 / 175
2章ダンジョンへ向かおう

閑話

しおりを挟む
「よし。この家か」

「行くぞ!!」

 ミユミユが叫ぶ。

 勢い良く緑の扉を開けた。
 すると、銀髪の裸の女がベットの上で四つん這いになりながら、鏡で自分の裸体を観察していた。
 女豹ポーズや丸みを帯びた尻を鷲掴みにしたり、かなり恥ずかしい事までしてる変態女。
 何してんだよこいつ。
 全てが丸見えだ。銀髪の女と目が合う。

「え?」

「へ?」

 銀髪の少女は次第に顔が紅潮していく。 

「キャァァァァァァァァ!!!!」 

 悲鳴を上げた。
 俺は向き直り、即座にバタッと扉を閉めた。
 走り出す。

「あーー全然違うじゃねーか」

「アル!! 変態だ!!」

 カナブンバッタが見えた。
 今度はちゃんと見つけたのだろうな。
 いた!!!!
 怪しげな女が走り、逃げていく。
 逃がすかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
 怪しげな女はまた狭い路上に入り、その場にあった木材や道具や木箱を倒しながら、道を塞いでいく。
 本当にここら辺りは家々が密集してるな。

「くそぉ!!!! 痛ぁぁ!!!! 何すんだ!! 待てぇぇ!!!!」

 俺は何とか壁を伝い駆け抜け、そして路地裏を抜ける。
 しかし、そこには謎の女はいなかった。
 野菜屋の目の前だった。
 太ったおばさんが驚いた顔をしている。
 すると、後ろから先程裸で変態ポーズをした銀髪の女がタオルを全身に巻ながら後ろから追い掛けてきた。

「変態よ!! そいつ!! 助けてぇぇぇぇ!!!!」

 変態はお前だ。
 ざわざわと騒ぎ出す人々。
 太ったおばさんが厳つい顔で、首や拳をポキッポキッと鳴らしながら、こっちへ向かってくる。
 面倒くさい事になった。
 俺は必死で逃げる。
 すると。

「アル君っ~?」

 聞き覚えのある少女の甘い声がし、俺は右を振り返る。
 俺の頬に細い人差し指をつんと突かれ、金髪の少女が笑顔で首を傾げている。
 いつも露出した服装ではなく黒い装束だ。

「リオラ!!」

「どうしたのっ?」

「いや、猫を探してて。それよりどうしてリオラがここに?」

「暇だったからこの街を散歩しようと思って」

「そうか。あの……なんていうかごめんな。でも必ず俺が王戦で優勝して、リオラが王にならないようにするから」

 俺は必死で訴える。
 リオラは笑顔で首を振る。

「もういいの。みんなに迷惑を掛けてしまう」

「必ず俺が救う」

「いいの。この先も私はお父様のためにスカーレット家のために働かなくてはならないの。だからもう私には関わらないで」

「リオラ……」

「だから、私パーティーを抜けるわ。もうみんなと会う事はないから……みんなによろしくね」

 悲しそうな笑顔を向けたリオラ。
 俺は……。
 俺は……。
 俺は抱きしめようとした瞬間。
 後ろから拳が襲ってきた。
 俺は即座に左へ寄せて躱《か》わす。

「なんだ!!!!」

 誰かが左蹴り、右蹴り、左回し蹴り、右拳、左拳と襲ってくる。
 スピードが早い。
 っ!!!!!
 さっ!!!!!!
 俺はなんとか回避する。
 すると、リオラが「やめなさい!!!! ムラサキシキブ!!」
 ビクッと震え、攻撃を止めるムラサキシキブ。
 帽子を取り、紫色のショートカットの女。青白い顔。
 綺麗な顔立ち。目や口が強く凛々しい、無表情。
 線の細い体躯と平らな胸。細い声で、短く返答。

「はい」

 俺はふと安堵する。
 ムラサキシキブの足元には黒猫がいた。
 俺とミユミユは声を上げた。

「スケキヨいたぁぁぁぁ!!!!」

 そして、ムラサキシキブと黒猫について話し合い、何とか返して貰い、スケキヨを所有者である老人に返しに行き、そして、無事依頼を終えた。
 俺はムラサキシキブに問い掛ける。

「あんたなんで逃げたんだ?」

「……」

「ん? 何で逃げた?」

「……」

 美人の顔でずっと前方を見つめ、無言のムラサキシキブ。
 咄嗟にリオラが困った表情をする。

「ごめんね。ムラサキシキブは他人と会話をしないの」

「あっ。そうか」

「ムラサキシキブ? なぜ黒猫を抱えて逃げたの?」

 じろっと見るムラサキシキブ。人形の動作。

「追いかけられたから逃げました」

「そう。では黒猫を抱えていたのはなぜ?」

「目に入ったので」

「そう。そういうことだってアル君?」

「あ……ありがとう」

 全然理由になってないんだが。
 そんなことより。

「リ……リオラ。絶対に連れ戻す。だから俺らが王戦を勝ち抜くまで待ってくれ」

「アル君……うん」

 リオラは涙を拭いながら、頷いた。
 一方、ムラサキシキブは冷淡な顔で俺を睨みつける。
 無表情に感情が湧いた。紫髪が風で揺れる。
 ロボットのように断言する。

「貴殿ではリオラ様を守れない。リオラ様の後ろにはスカーレット家とワロタギルドがいる。だから善からぬ邪魔をするな」

「悪いが要求は受け入れられない」

「我々に敵対すれば貴殿の命はない」

「やるか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

異世界のんびり放浪記

立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。 冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。 よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。 小説家になろうにも投稿しています。

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

転生してもオタクはなおりません。

しゃもん
恋愛
 活字中毒者である山田花子は不幸なことに前世とは違いあまり裕福ではない母子家庭の子供に生まれた。お陰で前世とは違い本は彼女の家庭では贅沢品でありとてもホイホイと買えるようなものではなかった。とは言え、読みたいものは読みたいのだ。なんとか前世の知識を魔法に使って少ないお金を浮かしては本を買っていたがそれでも限界があった。溢れるほどの本に囲まれたい。そんな願望を抱いている時に、信じられないことに彼女の母が死んだと知らせが入り、いきなり自分の前に大金持ちの異母兄と実父が現れた。これ幸いに彼等に本が溢れていそうな学校に入れてもらうことになったのだがそこからが大変だった。モブな花子が自分の願望を叶えて、無事幸せを握り締めるまでの物語です。

異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?! はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?! 火・金・日、投稿予定 投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...