転生したらダンジョン雲になった訳

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1章魔獣になりましょう

66話鬼団隊長銃羊

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 驚き、振り向くシエラ。
 けれども、今は一刻の猶予もないのだ。
 すぐに、視線は羊女スパイへ集まる。
 恐怖の存在である恐熊はもう存在しないと告げたにも関わらず、羊女スパイの異常なまで恐怖の表情は変わらない。
 しかも、より一層ガタガタと震えるばかりである。
 不幸を告げられ、絶望の表情に変わっていた。

「恐熊が死んだらまずいの。まずいの。まずいのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「なせだ?」

「恐熊が死んだら、私達のきよかわ村に棲む羊族の支配権は鬼団が握ることになるわ……そんなこと絶対にあってはならないのよぉぉぉぉぉぉ! もし、そうなったら交渉せずに全員殺されるのぉぉぉぉ!! 今までも奴隷を何人か差し出して何とか一族が存続してきたのよ!! 話なんて通じる相手じゃないのよぉぉぉぉぉぉ!!」

 狂乱に満ち、思わず羊女スパイは手を放し、カエラを放ってしまう。カエラはいち早く走り出す。
 しかし、直ぐに羊女スパイは転がり落ちた銃を取り上げ、カエラ目が掛けて、銃を構える。
 その瞬間、羊女スパイの異常な笑みが脳裏に焼き付き、引き金を引いて放った。

「パンッッッッ!!!!」

 アタマカラは助けようとしたが、動けなかった。 
 先程の恐熊の戦闘で、ほとんどの体力は残っていなかった。
 一方、シエラはカエラをいち早く抱き寄せようと迎えるも、後ろで向けられ、放たれた銃弾が顔をひきつらせる。
 やめてと叫ぼうとする少女。
 しかし、その願いは儚く散って、母親は哀しみの笑顔で、重く、前へ倒れた。
 やがて、血が滲み出し、どろどろとした液へ変わっていく。
 あっと言う間に血溜まりが出来る。
 少女は唖然とし、首を傾げ、その場で崩れ落ちる。

「……あ…………」

 一瞬の静寂の後、羊女スパイの狂乱した笑い声がこの場を震撼させる。
 アタマカラは絶句し、この状況を理解出来ずに硬直する。
 しかし、時は止まることを許さない。
 その時、再度、耳の痛くなる発砲音が鳴った。
 悪夢を再現するかのように、羊女スパイの右胸に銃弾が貫かれ、奇怪に笑いながら前へ倒れた。
 その笑い声に合わせて、別の声の主の笑い声が後ろから聞こえる。
 その声の主がその羊女スパイを撃ったのだろう。
  後ろを振り返ると、そこには羊の男がいた。
 頬に汚いそばかすがあり、耳は前へ垂れ、縮り毛の男。
 見覚えのある顔だった。
 目覚めた時に、カエラやミエの居場所を教えた羊族の男。
 しかし、弱々しかったはずの表情はすっかり消え、強い隈が際立ち、悪徳な表情に変わる。
 その者は右手に銃をカチッとセットし、アタマカラの額に向けた。
 その瞬間、アタマカラは必死で叫ぶ。

「シエラァァァァァァァア!!」

 シエラは呆然とした様子で血を流す母親を抱き寄せる。
 母親の弱々しい表情、まだ息はある。
 母はまだ助かる。
 まだその一縷の希みあると思い、がっと涙が流れ出し、首を左右に振り、すぐさま母親を肩に乗せ、この場から立ち去る。
 その様子をじっと黙認する羊男。気持ち悪い余裕な笑み。

「どうする気だ?」

「あの子達には用はない。あるのは君ですよ。アタマカラさんとおっしゃいましたか?」

「お前は一体誰で、何が目的なんだ!」

「申し遅れました……鬼団九番隊隊長銃羊《スリーパー》でこざいます」
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