『隷属の付与術師~白濁と悦楽に沈む乙女達~』

ナイトメア・ルア

文字の大きさ
3 / 32
第一章:獲物と番犬~二つの純粋を穢す調律~

第二話:狂信を植え付ける毒の指輪

しおりを挟む
カウンター越しに差し出された治癒師のローブは、既に一階の作業台に置かれている。弱まった『軽量化の魔術』など、付与術師を名乗るまでもない簡単な修繕だ。だが、そんな退屈な作業など、今の俺の興味の対象ではない。

俺は二階の私室、兼ねている作業場へと戻り、火酒をグラスに注いだ。暖炉の火が、眼鏡の奥で冷たく光る俺の瞳を照らしている。

「獲物」は来た。リーゼとイザベラ。一方は可憐で純粋な獲物。もう一方は、その獲物を守ることを至上とする、頑強な番犬。どちらも、俺の支配欲を久しぶりに熱くさせた。

特に、治癒師の少女、リーゼ。あの曇り一つない大きな瞳。誰の悪意も知らぬ無垢な笑顔。そして、隣の騎士然とした番犬に守られながらも、**「心を病む」**という俺の囁きに動揺した、脆弱な心。

そこだ。俺が狙うのは、彼女の魂の隙間だ。彼女は自己肯定感が低い。だからこそ、誰かに絶対的に愛されることを渇望している。その渇望に、俺の支配の毒を混ぜてやればいい。

魔術は、所詮、心の増幅器だ。人は誰しも、内に秘めた欲や憧れを持っている。俺の付与術は、それを増幅し、特定の対象へと無理矢理ねじ曲げる。彼女が求めている**「愛」**という概念を、俺の存在へと一点集中させるのだ。

俺は棚から、いくつかの魔導具を取り出した。ネックレス、ブレスレット、そして指輪。どれも、小さな魔力結晶を埋め込むことで、付与術の媒介とするための細工が施されている。

「指輪、か」

俺は呟いた。ネックレスやブレスレットは、周囲の人間にも目につきやすい。だが、指輪は違う。それは、契約であり、永遠を誓う象徴。そして何よりも、**『婚約』や『貞操』**といった、純粋な少女の幻想が最も深く結びついているアイテムだ。

リーゼのような純粋な少女に、愛と隷属の指輪を与える。その背徳的な愉悦を想像するだけで、身体の内側から熱が湧き上がってくる。彼女の清らかな指に、俺の魔力が込められた指輪が嵌められる瞬間。それは、彼女の純潔と自由を奪い、俺の所有物とする、魂の婚姻を意味するのだ。

俺は精巧な細工が施された銀の指輪を選んだ。小さな魔力結晶を中央に埋め込み、その周囲に付与術の刻印を施していく。

作業場のランプの油がパチリと音を立てる中、俺は静かに魔力を練り上げた。俺の付与術の真髄である、『狂愛(マッド・ラブ)の付与術』。

これは、通常の魅了魔術とは格が違う。ただの好意ではなく、「対象なしでは生きられない」「対象の命令こそが絶対」と信じ込ませる、一種の精神汚染だ。

俺の指先から、黒曜石のような濃い紫色の魔力が、ゆっくりと指輪の結晶へと流れ込んでいく。

「…さあ、リーゼ。お前が心から求めていた絶対的な愛を、俺が与えてやろう」

俺は魔力を注ぎ込みながら、リーゼの姿を鮮明に思い浮かべる。彼女の純粋な笑顔、戸惑う表情、そして隣で俺を睨みつける番犬イザベラの強い眼差し。その全てを、支配の快楽に変えるのだ。

魔力は結晶を飽和させ、指輪は一瞬、眩い光を放った後、静かに落ち着いた。表面には、細かく繊細な付与術の紋様が、血のように赤い魔力線となって浮かび上がっている。見た目は、何の変哲もない、ただの美しい銀の指輪だ。

「完璧だ」

俺は満足げに笑った。この指輪を身に着けたリーゼは、三日後には俺に身を捧げるだろう。そして、その過程で、彼女の隣にいる番犬は必ず邪魔をしてくる。その抵抗こそが、俺の退屈を打ち破る、最高のスパイスだ。

俺は、奴隷時代に虐げられた故郷の村の子供たちを、力の付与術で惨殺した過去を持つ。俺にとって、力とは支配の手段であり、世界への復讐を果たすための道具だ。リーゼの純粋さを奪い、イザベラの正義をねじ伏せることは、俺の野心にとって、小さな、しかし重要な通過儀礼となる。

作業を終えた俺は、一階へと降りる。ミランダが、静かに作業台を片付けていた。彼女は、俺が何を企んでいるのか、何も聞かない。聞く必要もない。ただ、俺の**「次の獲物」が、彼女の「神」**に捧げられることを、絶対的な歓びとして受け入れるだろう。

ミランダは俺に気づき、静かに跪いた。

「ヴァリス様、お飲み物はいかがですか。それとも…今夜は、新しい愛の儀式を、私に教えてくださいますか」

彼女の甘く蕩けた眼差しが、俺の股間を熱くさせる。彼女は、俺の欲望を察知するのに長けている。

「そうだな、ミランダ」

俺は、銀の指輪を手のひらで転がしながら言った。

「その新しい儀式は、三日後だ。それまでお前には、俺の渇きを、しっかりと癒してもらう」

俺はミランダの細い手を取り、彼女の頬を撫でる。指輪の冷たい金属の感触が、俺の指先に伝わる。

「その儀式は、お前にもきっと悦びをもたらすだろう。お前の愛情を、分け与える機会だ。お前の献身が、さらに絶対的なものだと、証明できるのだからな」

ミランダの瞳は、歓喜で濡れ、わずかに開かれた口から、蜜のような吐息が漏れた。

「はい…ヴァリス様のお望みとあれば、ミランダは全てを捧げます…」

彼女は、俺の指輪を持つ手に、自らの唇を押し当てた。それは、新しい支配の道具に対する、奴隷の誓いだった。

この指輪が、リーゼの純粋な魂を、白濁した狂愛へと染め上げる。そして、その過程は、俺とミランダの歪んだ日常を、さらに深い背徳へと沈めるだろう。

俺の計画は、静かに、そして確実に進行し始めた。三日後の再会が待ち遠しい。

(続く)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...