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第一章:焔に刻まれた予言
第四話:仮面の男、焔の中に立つ
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崩落の衝撃で吹き飛ばされたセリナは、土煙の中で必死にレオンの名を呼び続けた。
血の臭い。砕けた石の感触。胸の奥に残る焼けつくような痛み。視界はぼやけ、耳鳴りが鳴り止まない。だが、それでも――
「……レオン。しっかりして……お願い、目を開けて……!」
彼の身体は、まだ温かかった。
荒く、弱々しい呼吸が確かにあった。けれど、あの一撃は致命傷だ。セリナは震える手で彼の顔に触れる。
ここは、もう地上ではなかった。
封印の扉は崩れ、空間は断絶され、周囲は歪んだ魔力に満ちている。かろうじて残った祭壇の柱が、まるで墓標のように彼女たちを囲んでいた。
「――悲劇の幕開けには、常に美しき犠牲がつきものだな」
不意に、誰かの声が空間を割った。
セリナが顔を上げると、黒衣の男が瓦礫の中から現れていた。
片側の顔を白い仮面で覆い、もう半分の口元に不気味な笑みを湛えるその男は、滑るように歩を進め、彼女たちに近づいてくる。
「……誰? あんたは……騎士団じゃ、ない……」
「ふむ。確かに私は、騎士でも兵でもない。だがこの世界の“語り部”を自称していてね。人は私を、“仮面の語り手”と呼ぶ」
「語り手……?」
意味のわからぬ単語に、セリナは眉をひそめた。男は瓦礫の中から黒曜石の欠片――契約の碑の破片を拾い上げ、空中に掲げた。
「“契約は焔より生まれ、血より継がれ、終焉の地で果たされる”」
碑文が赤く発光し、まるで世界そのものが共鳴しているかのようだった。セリナは反射的に後ずさる。
「その言葉……どこかで……」
「君の記憶にあるか、あるいは魂が反応しているのかもしれない。千年前、王と神と悪魔が交わした契り。――その再演が、今始まったのだよ、姫君」
男の目が、仮面越しにも分かるほどに輝いた。
その瞬間、セリナの胸元が熱を持った。
刻まれた“契りの紋章”が脈動し、契約の碑の魔力が彼女に流れ込む。眩い閃光と共に、意識が遠のく。
見たこともない景色が脳裏をよぎる。
赤く燃える城。倒れ伏す兵士たち。祈るように契りを結ぶ少女と、仮面の男。
「……これは、過去? それとも、未来……?」
セリナが目を開けると、男はもう目の前にいなかった。
ただ、空間の歪みに溶けるように彼の声だけが残っていた。
「また会おう。物語の続きを語るその時まで、君がどんな“運命”を選ぶか……楽しみにしているよ」
遺跡の残骸が崩れ、天井の裂け目から夜空が覗いた。
赤く染まった雲の間に、月が浮かんでいた。
血の臭い。砕けた石の感触。胸の奥に残る焼けつくような痛み。視界はぼやけ、耳鳴りが鳴り止まない。だが、それでも――
「……レオン。しっかりして……お願い、目を開けて……!」
彼の身体は、まだ温かかった。
荒く、弱々しい呼吸が確かにあった。けれど、あの一撃は致命傷だ。セリナは震える手で彼の顔に触れる。
ここは、もう地上ではなかった。
封印の扉は崩れ、空間は断絶され、周囲は歪んだ魔力に満ちている。かろうじて残った祭壇の柱が、まるで墓標のように彼女たちを囲んでいた。
「――悲劇の幕開けには、常に美しき犠牲がつきものだな」
不意に、誰かの声が空間を割った。
セリナが顔を上げると、黒衣の男が瓦礫の中から現れていた。
片側の顔を白い仮面で覆い、もう半分の口元に不気味な笑みを湛えるその男は、滑るように歩を進め、彼女たちに近づいてくる。
「……誰? あんたは……騎士団じゃ、ない……」
「ふむ。確かに私は、騎士でも兵でもない。だがこの世界の“語り部”を自称していてね。人は私を、“仮面の語り手”と呼ぶ」
「語り手……?」
意味のわからぬ単語に、セリナは眉をひそめた。男は瓦礫の中から黒曜石の欠片――契約の碑の破片を拾い上げ、空中に掲げた。
「“契約は焔より生まれ、血より継がれ、終焉の地で果たされる”」
碑文が赤く発光し、まるで世界そのものが共鳴しているかのようだった。セリナは反射的に後ずさる。
「その言葉……どこかで……」
「君の記憶にあるか、あるいは魂が反応しているのかもしれない。千年前、王と神と悪魔が交わした契り。――その再演が、今始まったのだよ、姫君」
男の目が、仮面越しにも分かるほどに輝いた。
その瞬間、セリナの胸元が熱を持った。
刻まれた“契りの紋章”が脈動し、契約の碑の魔力が彼女に流れ込む。眩い閃光と共に、意識が遠のく。
見たこともない景色が脳裏をよぎる。
赤く燃える城。倒れ伏す兵士たち。祈るように契りを結ぶ少女と、仮面の男。
「……これは、過去? それとも、未来……?」
セリナが目を開けると、男はもう目の前にいなかった。
ただ、空間の歪みに溶けるように彼の声だけが残っていた。
「また会おう。物語の続きを語るその時まで、君がどんな“運命”を選ぶか……楽しみにしているよ」
遺跡の残骸が崩れ、天井の裂け目から夜空が覗いた。
赤く染まった雲の間に、月が浮かんでいた。
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