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第一章:焔に刻まれた予言
第十九話:黒き追跡者、月下に立つ
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街道は月明かりに照らされ、白く光っていた。夜風は冷たいが、どこか湿り気を帯びている。影の匂い――鉄と腐葉土を混ぜたような、棺界の呼吸の匂いだ。
「……つけられてる」
ルカの声は低く短い。足音は聞こえない。それでも、背筋を撫でるような冷たい感覚が二人の間に共通して走っていた。
「何体だ?」
「一体……いや、二体。影鎧じゃない。もっと軽い足だ」
リセルは刃に手をかけたまま、歩調を崩さず進む。振り返れば、追跡者は影に紛れて消えるだろう。ならば、引きずり出すしかない。
「町外れの林まで行く。月明かりの差す場所だ」
やがて二人は林へ入り、開けた場所に出た。月光が地面を斑に染め、木々の影がまるで無数の腕のように揺れている。
「出ろ」
リセルの声が響いた瞬間、木陰から二つの影が飛び出した。人の形をしているが、肌は灰色で、目は真っ黒に染まっている。かつては人間だったもの――〈影喰い〉。影の主の眷属であり、生きたまま影に魂を食われた存在だ。
「喰い残しが、動いてやがる」
ルカが短剣を構えると、影喰いは低く唸り、四足の獣のような姿勢で間合いを詰めてきた。動きは速く、軌道は不規則。
リセルは左に身を翻し、影喰いの爪をかわす。同時に刃で首筋を狙うが、相手は骨ごと硬化しており、浅い傷しか与えられない。
「骨が固い……再生も早いぞ!」
「なら、中から焼く!」
ルカは印の熱を短剣に流し込み、腹部を斜めに切り裂いた。影喰いが短く悲鳴を上げ、膝を折る。だがもう一体が背後から飛びかかってきた。
「リセル!」
振り返った瞬間、リセルは地面に身を投げ出し、背後の影喰いを空振りさせた。その勢いで転がりながら刃を突き上げ、顎下から頭蓋へ貫通させる。影喰いの体が痙攣し、黒い煙となって崩れた。
「一体!」
「もう一体も――!」
ルカが叫び、短剣を深く突き刺す。印の光が内側で爆ぜ、影喰いの体が内側から焼け落ちた。二体の残骸は灰となり、夜風に散っていく。
だが、静寂は訪れなかった。林の奥で、低く長い唸り声が響く。木々の間から、巨大な影が姿を現した。四足の獣のようだが、背は人間の背丈を優に越え、頭部には人の顔が三つ、逆さまに並んでいる。
「……あれは」
「追跡者じゃない。呼び鈴だ」
ルカの言葉に、リセルは表情を引き締めた。影の主が牙を研ぎ、次の狩り場を選ぶための尖兵――それが目の前にいる。
「潰すぞ。こいつを逃がせば、次は街ごと喰われる」
「わかってる」
二人は呼吸を合わせ、月下で刃を構えた。影の匂いが濃くなり、印の鼓動が速まる。闇と光が交錯する林の中、戦いの幕が再び上がろうとしていた。
「……つけられてる」
ルカの声は低く短い。足音は聞こえない。それでも、背筋を撫でるような冷たい感覚が二人の間に共通して走っていた。
「何体だ?」
「一体……いや、二体。影鎧じゃない。もっと軽い足だ」
リセルは刃に手をかけたまま、歩調を崩さず進む。振り返れば、追跡者は影に紛れて消えるだろう。ならば、引きずり出すしかない。
「町外れの林まで行く。月明かりの差す場所だ」
やがて二人は林へ入り、開けた場所に出た。月光が地面を斑に染め、木々の影がまるで無数の腕のように揺れている。
「出ろ」
リセルの声が響いた瞬間、木陰から二つの影が飛び出した。人の形をしているが、肌は灰色で、目は真っ黒に染まっている。かつては人間だったもの――〈影喰い〉。影の主の眷属であり、生きたまま影に魂を食われた存在だ。
「喰い残しが、動いてやがる」
ルカが短剣を構えると、影喰いは低く唸り、四足の獣のような姿勢で間合いを詰めてきた。動きは速く、軌道は不規則。
リセルは左に身を翻し、影喰いの爪をかわす。同時に刃で首筋を狙うが、相手は骨ごと硬化しており、浅い傷しか与えられない。
「骨が固い……再生も早いぞ!」
「なら、中から焼く!」
ルカは印の熱を短剣に流し込み、腹部を斜めに切り裂いた。影喰いが短く悲鳴を上げ、膝を折る。だがもう一体が背後から飛びかかってきた。
「リセル!」
振り返った瞬間、リセルは地面に身を投げ出し、背後の影喰いを空振りさせた。その勢いで転がりながら刃を突き上げ、顎下から頭蓋へ貫通させる。影喰いの体が痙攣し、黒い煙となって崩れた。
「一体!」
「もう一体も――!」
ルカが叫び、短剣を深く突き刺す。印の光が内側で爆ぜ、影喰いの体が内側から焼け落ちた。二体の残骸は灰となり、夜風に散っていく。
だが、静寂は訪れなかった。林の奥で、低く長い唸り声が響く。木々の間から、巨大な影が姿を現した。四足の獣のようだが、背は人間の背丈を優に越え、頭部には人の顔が三つ、逆さまに並んでいる。
「……あれは」
「追跡者じゃない。呼び鈴だ」
ルカの言葉に、リセルは表情を引き締めた。影の主が牙を研ぎ、次の狩り場を選ぶための尖兵――それが目の前にいる。
「潰すぞ。こいつを逃がせば、次は街ごと喰われる」
「わかってる」
二人は呼吸を合わせ、月下で刃を構えた。影の匂いが濃くなり、印の鼓動が速まる。闇と光が交錯する林の中、戦いの幕が再び上がろうとしていた。
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