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第一部「開戦の狼煙」
Act1「静かなる開戦」
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台湾時間 3月30日 夜
台湾空軍のレーダーに、突如として未確認機が映し出された。
機影は台湾の北西、東シナ海上空に出現。高度2万メートルを超え、通常のステルス機よりも遥かに探知が困難だった。
「高高度で高速接近……捕捉は可能か?」
「いいえ、敵は極めて強力なステルス性能を有しています!」
防空指揮所に緊張が走る。
スクランブル発進した台湾空軍の戦闘機が急行するが、未確認機は領空侵入ギリギリで反転。
「試してきているな……」
数時間後、日本の尖閣諸島沖でも同様の現象が発生した。
国防省は警戒レベルを引き上げ、米軍もこの動きを注視。
米海軍横須賀基地
「この新型機、情報提供すべきだろう」
米海軍第7艦隊司令官、アレックス・バーンズ提督は、機密情報を前に思案する。
米軍は以前からこの新型機の存在を察知していた。
高高度・高機動・極端なステルス性。既存の迎撃手段では対応が難しい……これは厄介な代物だ。
中国の軍事的挑発は以前からあった。だが、2041年に入り、その頻度と質は格段に向上している。
台湾、日本、米軍は協議を重ね、新型機の脅威を共有する方向で動き始めた。
4月1日 未明 台湾国防部 参謀本部
李凌雲少将は、未明にもかかわらず参謀本部で慌ただしく指揮を執っていた。
総統府からの命令が下り、軍は準戦時体制に移行、となった。
「中国軍、特に艦隊の動きが不穏だ。各部隊、即時対応を準備せよ!」
上官の号令が響く。
台湾の指揮所は緊迫した空気に包まれる。
そんな中だった。突如として、台湾全土の通信回線に異常が発生した。
「……何だ?」
「総統府との連絡が途絶えました!」
「軍内部の通信網にも障害が発生! 一部の部隊と交信不能!」
…敵は、先に電脳戦を仕掛けてきた。
台湾軍のサイバー防衛部隊が即座に迎撃態勢を取る。
台湾は世界屈指のサイバー防御能力を誇る。通常なら即座に反撃し、侵入を阻止できるはずだった。
だが、今回は違った。
攻撃は異常に速く、広範囲で、的確だった。
「ファイアウォール第3層を突破された! バックアップ回線に切り替えます!」
「ダメだ! すでに不正アクセスの痕跡あり!」
「防空指揮システムに干渉の兆候! 敵はレーダーネットワークを攪乱しようとしている!」
敵の狙いは、防空網の無力化で間違いない。
台湾側も黙ってはいない。
即座にカウンターハックを仕掛け、敵の攻撃元を特定しようとする。
しかし、中国側もそれを読んでいた。
偽の侵入経路をばら撒き、台湾のリソースを消耗させる「陽動戦術」。
本命の攻撃はすでに別ルートから進行し、軍事施設の一部システムに異常を発生させ始めていた。
「敵のサイバー部隊……この日のために準備していたな」
李少将は冷や汗を拭う。サイバー部隊の指揮を臨時でとれるのが彼しかいなかったのだ。
戦争はすでに始まっていた。
台湾空軍のレーダーに、突如として未確認機が映し出された。
機影は台湾の北西、東シナ海上空に出現。高度2万メートルを超え、通常のステルス機よりも遥かに探知が困難だった。
「高高度で高速接近……捕捉は可能か?」
「いいえ、敵は極めて強力なステルス性能を有しています!」
防空指揮所に緊張が走る。
スクランブル発進した台湾空軍の戦闘機が急行するが、未確認機は領空侵入ギリギリで反転。
「試してきているな……」
数時間後、日本の尖閣諸島沖でも同様の現象が発生した。
国防省は警戒レベルを引き上げ、米軍もこの動きを注視。
米海軍横須賀基地
「この新型機、情報提供すべきだろう」
米海軍第7艦隊司令官、アレックス・バーンズ提督は、機密情報を前に思案する。
米軍は以前からこの新型機の存在を察知していた。
高高度・高機動・極端なステルス性。既存の迎撃手段では対応が難しい……これは厄介な代物だ。
中国の軍事的挑発は以前からあった。だが、2041年に入り、その頻度と質は格段に向上している。
台湾、日本、米軍は協議を重ね、新型機の脅威を共有する方向で動き始めた。
4月1日 未明 台湾国防部 参謀本部
李凌雲少将は、未明にもかかわらず参謀本部で慌ただしく指揮を執っていた。
総統府からの命令が下り、軍は準戦時体制に移行、となった。
「中国軍、特に艦隊の動きが不穏だ。各部隊、即時対応を準備せよ!」
上官の号令が響く。
台湾の指揮所は緊迫した空気に包まれる。
そんな中だった。突如として、台湾全土の通信回線に異常が発生した。
「……何だ?」
「総統府との連絡が途絶えました!」
「軍内部の通信網にも障害が発生! 一部の部隊と交信不能!」
…敵は、先に電脳戦を仕掛けてきた。
台湾軍のサイバー防衛部隊が即座に迎撃態勢を取る。
台湾は世界屈指のサイバー防御能力を誇る。通常なら即座に反撃し、侵入を阻止できるはずだった。
だが、今回は違った。
攻撃は異常に速く、広範囲で、的確だった。
「ファイアウォール第3層を突破された! バックアップ回線に切り替えます!」
「ダメだ! すでに不正アクセスの痕跡あり!」
「防空指揮システムに干渉の兆候! 敵はレーダーネットワークを攪乱しようとしている!」
敵の狙いは、防空網の無力化で間違いない。
台湾側も黙ってはいない。
即座にカウンターハックを仕掛け、敵の攻撃元を特定しようとする。
しかし、中国側もそれを読んでいた。
偽の侵入経路をばら撒き、台湾のリソースを消耗させる「陽動戦術」。
本命の攻撃はすでに別ルートから進行し、軍事施設の一部システムに異常を発生させ始めていた。
「敵のサイバー部隊……この日のために準備していたな」
李少将は冷や汗を拭う。サイバー部隊の指揮を臨時でとれるのが彼しかいなかったのだ。
戦争はすでに始まっていた。
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