50 / 70
46
しおりを挟む
大臣の自宅は綺麗に片付けられていて 皆が驚いたそうだ
夫人はもうここへは戻らないと決めていたのだろう
葬儀の日は雨が降っていた
近親者もおらず 士官学校の教官から大臣までされた方なのに
まったく親戚付き合いをされていなかったようで 静かな葬儀となった
ロクは二人にずっと寄り添い
最後に
「おじい おばあちゃん ありがとう」と言って
静かに見送った
葬儀から ロクは表面上は変わりなく過ごしているように見えた
腕の傷もひどくはならず 回復した
しかし 毎日の手伝いも断って 部屋にいる事が多くなった
なんとなく人と会うのを避けているように思えた
「どうだ 明日の休み久しぶりに街にでも行かないか?」
「うーん でもこの本読んでしまいたいから 俺はいいよ テオが行きたいなら行ってきて」
全てこんな感じで 部屋に閉じこもっている
「ロクはどんな感じ?」クリスに聞かれた
アーンエル大臣の後継者を選ぶため ここのところ王城へ出向いている
「引きこもってる」
「どこに?」フィルが聞く
「部屋からあまり出てこない 食事もしてるし 会話もある 元気はないが 寝込むほど悪くもない でも」
「「でも?」」
「気持ちが追いついてないのかもしれんな」ため息が出る
「人を亡くすってこと理解できてなかったのかもね」
クリスが寂しそうに言った
人を殺すための道具として育てられたロクに 人の死はどう映っていていたのだろう
人は 身近な人を亡くすから 死を身近に感じることになる
そして乗り越えていく
ロクは 死をなんと理解していたのだろう
ヒューと冷たい風がふく
乗り越えるしかないんだけどな とため息がまた出る
ポケットに手を入れたら カサリと音が鳴った
司令部に届いた手紙だ
あて先は 俺
差出人は アーンエル夫人
突然のお手紙で申し訳ありません から始まる
達筆で丁寧な手紙 夫人の人柄を感じる
教官一家の事が書いてあった
ひとり息子が結婚をし 子供を授かりました
生まれてきた子が双子でした 男の子でした
しかし 双子をよしとしない地域の出身の嫁で 自分の実家へ双子と言えなかったようです
すぐにご両親が会いに来られると言うことで 困った嫁は 私たちに相談もせず
ひとりの子を捨ててしまいました
手をつくし人を使い探したが見つかりませんでした
その子は いざなぎへ売られたことまではわかりましたが
その後はわかりませんでした
息子家族は戦争で亡くなりました
ずいぶん経って街で 亡くなった息子に似た子を見かけるようになりました
主人も驚いていましたが 声をかける勇気は私たちにはありませんでした
その子が幸せなら と思っていました
ある日 主人が あの子がたまに城に来ること 仲良くなり話をするようになったと
家に招待したんだ 一度会ってみないかと言ってきました
かわいくて ふとしたしぐさが息子に似ていました
息子に似ているからではなく
彼のやさしくて強い心を持っているところにも惹かれました
何度も家に遊びに来てくれました
三人でお茶を飲んだり 主人と一緒に庭の手入れをしたり
私の事を おばあちゃんと呼んでくれて
一緒に買い物へ行ってくれたり
不自由な体で一生懸命生きている彼を見ていたら
いとおしい気持ちと申し訳ない気持ちといろいろな思いが重なり
一度だけ 彼の前で泣いてしまったことがありました
彼は おばあちゃんごめんね 俺はまだ人になりきってないんだ
だから こんな時どうすればいいかわかんないんだ ごめんね
と私を抱きしめてくれました
あとで どうして抱きしめてくれたのと聞いたら
テオがしてくれるんだ 悲しいとかつらいとか苦しいって気持ちの時
俺上手く言えないんだけど そんな時はテオがぎゅってしてくれるから
おばあちゃんもそうなのかなって思った イヤだった
と言ってくれました
愛しくて かわいくて
短い間でしたが 孫と過ごせた時間は とても幸せでした
最後に人生で一番の幸せをくれた ロク
勝手なお願いと思いますが
どうか どうか ロクを幸せにしてあげてください
あなたにお願いするのが一番だと思っております
勇気のない愚かな老人の願いです
かわいい孫の ロクの幸せを願っております
ロク おじいちゃんとおばあちゃんは
あなたに会えて幸せだった
ありがとうね
空の上からずっとあなたを見ている
幸せになってね
「二人には相談すべきだよな」と今来た道をもどった
雨が降ってる
ベットの中から出られない 起き上がれない
「ゆっくり寝てればいいよ なるべく早く帰ってくるからな」
とテオがおでこにキスをしてくれた
「いってらっしゃい」とテオの頬のキスをした
雨音がする
” 雨は人の感覚を鈍らす おいロク 雨の日の戦い方知ってるか? ”
おじいだ
「わかんない」
゛雨の日は戦わないことだ ”
おじいが笑ってる
「ねぇおじい おばあちゃんどうして死んだの」
「おばあちゃんひとりになっちゃうから?」
「戦争がなくて 息子さんもお孫さんも生きてたら おばあちゃんは死ななかったのかな?」
「おじいとおばあちゃんの息子さん きっと俺が殺したんだ
お孫さんも奥さんも きっと俺が殺した
他のおじいやおばあちゃんの息子さん きっと俺が殺したんだ」
「ねぇ おじい おばあちゃん死んじゃった きっと俺が殺したんだ」
ロクの調子がよくない すまんが少し早めに帰る
と事務官に伝えると
「コレとコレとコレ 明日までに目を通してください 今日の仕事は以上です」
と事務官が言った
「早くロク君のところへ帰ってあげてください
ロク君には 少しつらい別れになってしまいましたから・・・
早く元気になってもらいたいので」
「すまんな」と家へととんぼ返りした
「テオ様もうお帰りですか?」
「ああ 今日の仕事は持ち帰りだ」と部屋へ行き
「ロク 調子はどうだ」と部屋をのぞく
窓が開き 雨が吹き込んでいた ロクの姿がなかった
「ロクッ」
庭に立ち尽くしている ロクがいた
「ロク 体がひえてしまう 中に入ろう」と手を引く
手が冷たい 抱きしめてやる
「テオ」
「体が冷える 中に入ろう」とそのままだきあげて 部屋へ連れて行った
夫人はもうここへは戻らないと決めていたのだろう
葬儀の日は雨が降っていた
近親者もおらず 士官学校の教官から大臣までされた方なのに
まったく親戚付き合いをされていなかったようで 静かな葬儀となった
ロクは二人にずっと寄り添い
最後に
「おじい おばあちゃん ありがとう」と言って
静かに見送った
葬儀から ロクは表面上は変わりなく過ごしているように見えた
腕の傷もひどくはならず 回復した
しかし 毎日の手伝いも断って 部屋にいる事が多くなった
なんとなく人と会うのを避けているように思えた
「どうだ 明日の休み久しぶりに街にでも行かないか?」
「うーん でもこの本読んでしまいたいから 俺はいいよ テオが行きたいなら行ってきて」
全てこんな感じで 部屋に閉じこもっている
「ロクはどんな感じ?」クリスに聞かれた
アーンエル大臣の後継者を選ぶため ここのところ王城へ出向いている
「引きこもってる」
「どこに?」フィルが聞く
「部屋からあまり出てこない 食事もしてるし 会話もある 元気はないが 寝込むほど悪くもない でも」
「「でも?」」
「気持ちが追いついてないのかもしれんな」ため息が出る
「人を亡くすってこと理解できてなかったのかもね」
クリスが寂しそうに言った
人を殺すための道具として育てられたロクに 人の死はどう映っていていたのだろう
人は 身近な人を亡くすから 死を身近に感じることになる
そして乗り越えていく
ロクは 死をなんと理解していたのだろう
ヒューと冷たい風がふく
乗り越えるしかないんだけどな とため息がまた出る
ポケットに手を入れたら カサリと音が鳴った
司令部に届いた手紙だ
あて先は 俺
差出人は アーンエル夫人
突然のお手紙で申し訳ありません から始まる
達筆で丁寧な手紙 夫人の人柄を感じる
教官一家の事が書いてあった
ひとり息子が結婚をし 子供を授かりました
生まれてきた子が双子でした 男の子でした
しかし 双子をよしとしない地域の出身の嫁で 自分の実家へ双子と言えなかったようです
すぐにご両親が会いに来られると言うことで 困った嫁は 私たちに相談もせず
ひとりの子を捨ててしまいました
手をつくし人を使い探したが見つかりませんでした
その子は いざなぎへ売られたことまではわかりましたが
その後はわかりませんでした
息子家族は戦争で亡くなりました
ずいぶん経って街で 亡くなった息子に似た子を見かけるようになりました
主人も驚いていましたが 声をかける勇気は私たちにはありませんでした
その子が幸せなら と思っていました
ある日 主人が あの子がたまに城に来ること 仲良くなり話をするようになったと
家に招待したんだ 一度会ってみないかと言ってきました
かわいくて ふとしたしぐさが息子に似ていました
息子に似ているからではなく
彼のやさしくて強い心を持っているところにも惹かれました
何度も家に遊びに来てくれました
三人でお茶を飲んだり 主人と一緒に庭の手入れをしたり
私の事を おばあちゃんと呼んでくれて
一緒に買い物へ行ってくれたり
不自由な体で一生懸命生きている彼を見ていたら
いとおしい気持ちと申し訳ない気持ちといろいろな思いが重なり
一度だけ 彼の前で泣いてしまったことがありました
彼は おばあちゃんごめんね 俺はまだ人になりきってないんだ
だから こんな時どうすればいいかわかんないんだ ごめんね
と私を抱きしめてくれました
あとで どうして抱きしめてくれたのと聞いたら
テオがしてくれるんだ 悲しいとかつらいとか苦しいって気持ちの時
俺上手く言えないんだけど そんな時はテオがぎゅってしてくれるから
おばあちゃんもそうなのかなって思った イヤだった
と言ってくれました
愛しくて かわいくて
短い間でしたが 孫と過ごせた時間は とても幸せでした
最後に人生で一番の幸せをくれた ロク
勝手なお願いと思いますが
どうか どうか ロクを幸せにしてあげてください
あなたにお願いするのが一番だと思っております
勇気のない愚かな老人の願いです
かわいい孫の ロクの幸せを願っております
ロク おじいちゃんとおばあちゃんは
あなたに会えて幸せだった
ありがとうね
空の上からずっとあなたを見ている
幸せになってね
「二人には相談すべきだよな」と今来た道をもどった
雨が降ってる
ベットの中から出られない 起き上がれない
「ゆっくり寝てればいいよ なるべく早く帰ってくるからな」
とテオがおでこにキスをしてくれた
「いってらっしゃい」とテオの頬のキスをした
雨音がする
” 雨は人の感覚を鈍らす おいロク 雨の日の戦い方知ってるか? ”
おじいだ
「わかんない」
゛雨の日は戦わないことだ ”
おじいが笑ってる
「ねぇおじい おばあちゃんどうして死んだの」
「おばあちゃんひとりになっちゃうから?」
「戦争がなくて 息子さんもお孫さんも生きてたら おばあちゃんは死ななかったのかな?」
「おじいとおばあちゃんの息子さん きっと俺が殺したんだ
お孫さんも奥さんも きっと俺が殺した
他のおじいやおばあちゃんの息子さん きっと俺が殺したんだ」
「ねぇ おじい おばあちゃん死んじゃった きっと俺が殺したんだ」
ロクの調子がよくない すまんが少し早めに帰る
と事務官に伝えると
「コレとコレとコレ 明日までに目を通してください 今日の仕事は以上です」
と事務官が言った
「早くロク君のところへ帰ってあげてください
ロク君には 少しつらい別れになってしまいましたから・・・
早く元気になってもらいたいので」
「すまんな」と家へととんぼ返りした
「テオ様もうお帰りですか?」
「ああ 今日の仕事は持ち帰りだ」と部屋へ行き
「ロク 調子はどうだ」と部屋をのぞく
窓が開き 雨が吹き込んでいた ロクの姿がなかった
「ロクッ」
庭に立ち尽くしている ロクがいた
「ロク 体がひえてしまう 中に入ろう」と手を引く
手が冷たい 抱きしめてやる
「テオ」
「体が冷える 中に入ろう」とそのままだきあげて 部屋へ連れて行った
11
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる