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10隣人の向居さんと最後の晩餐を…
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伝えたい事を伝えられた安堵からややスッキリした感覚で、志野もまた風呂から上がった。
向居が言っていた服は、たまに泊まったりするからか必然的に置いてあるにすぎない。
部屋着の白地のトレーナーに袖を通し濡れた髪を拭くのに棚からタオルを取り出してリビングに繋がる廊下にでた。
リビングのテーブルと棚の間で、何やらゴソゴソと羽織っているブカブカのカーディガンの袖口を、手首にもたつかせながらドライヤーで髪を乾かしているようで、まだ志野がリビングの方に近付いて来ているとは、思ってないのか…
「ってかさぁ…お風呂場で言う事なの?」と、ブツブツ言っていた。
「大事な事じゃん…」
「ったく。もう!」
普段の向居は、年上なのもあるからか、割としっかりとしている。
たまに見せる子供っぽい仕草を引いても、仕事熱心で気配りが出来るスマートな人だ。
自分にとって向居とは、どう言う人間か…
今はそれを、考えなければならないのかも知れない。
ブォ~~~ッ。カチッ
髪を乾かし終えた向居が、廊下で濡れた髪をタオルで拭き取る志野に駆け寄った。
「ね。なんで直ぐに相談してくれなかったの?」
それは…
「僕がまだ…志野くんの恋人じゃないから?」
曖昧な関係だからこそ言えなかったのは、間違いないのだろう。
「その…」
思い詰めた志野は、がっくりと肩を落とす。
向居は、志野の頭からずれ落ちるタオルを掴みワシャワシャと髪を拭いた。
「もしかして…離れ離れになるの嫌だったりする?」
試す為に言ったわけではなかったが、志野は伏目がちに顔を赤くさせながら向居を、抱き締めてしまっていた。
「志野くん…大丈夫だよ」と、意表を突かれた向居は、驚きながらも落ち着いた声を掛けた。
「あの…面と向かって、話す機会を伺っていたら…今かなって…スミマセンでした…」
「うん。言ってくれてありがとう」
向居は、志野の背中を擦った。
会社で仲間内で肩を叩かれたりする事はあっても、子供の時のように背中を擦られる事はない。
久し振りな感触に少しホッとしていると向居の方から「で? どこなの?」と、真剣な目で見上げてきた。
「会社の本社がある国です…」
「だから! 僕が聞いてるのは、国名!」
はっきりとした圧をまとった向居が、志野の懐に擦り付くように見上げる。
「あの…シュトラです…」
すると向居は、スンとした顔で取り乱して乱れた髪を、手ぐしで直しギロリと志野を見詰める。
「…その辞令? 出向って言うのは、必ず行かないとならないんでしょ? 断ると解雇されるとか…」
向居の顔は、不安で一杯だと言う表情で、顔色が悪い。
「いえ……断ったから即解雇とは、なりません。まぁ…そう言う場合もあるらしいですけど…」
「本当に?」
「はい。上司からはそう説明されてます…」
「でも、海外に渡って仕事がしたかったんだよね?」
「はい…」
本社の人員補強。
「今週にでも、はいと返事をすれば、その日のうちに出向辞令書が出ると思います」
「期間は…決まってないんだっけ?」
コクリと志野は、頷く。
「ただ、承知した場合は、向こうに住むにあたっての下見を兼ねと、本社に顔を出さないとならない期間もあるので…忙しくなるかも知れません…」
向居が言っていた服は、たまに泊まったりするからか必然的に置いてあるにすぎない。
部屋着の白地のトレーナーに袖を通し濡れた髪を拭くのに棚からタオルを取り出してリビングに繋がる廊下にでた。
リビングのテーブルと棚の間で、何やらゴソゴソと羽織っているブカブカのカーディガンの袖口を、手首にもたつかせながらドライヤーで髪を乾かしているようで、まだ志野がリビングの方に近付いて来ているとは、思ってないのか…
「ってかさぁ…お風呂場で言う事なの?」と、ブツブツ言っていた。
「大事な事じゃん…」
「ったく。もう!」
普段の向居は、年上なのもあるからか、割としっかりとしている。
たまに見せる子供っぽい仕草を引いても、仕事熱心で気配りが出来るスマートな人だ。
自分にとって向居とは、どう言う人間か…
今はそれを、考えなければならないのかも知れない。
ブォ~~~ッ。カチッ
髪を乾かし終えた向居が、廊下で濡れた髪をタオルで拭き取る志野に駆け寄った。
「ね。なんで直ぐに相談してくれなかったの?」
それは…
「僕がまだ…志野くんの恋人じゃないから?」
曖昧な関係だからこそ言えなかったのは、間違いないのだろう。
「その…」
思い詰めた志野は、がっくりと肩を落とす。
向居は、志野の頭からずれ落ちるタオルを掴みワシャワシャと髪を拭いた。
「もしかして…離れ離れになるの嫌だったりする?」
試す為に言ったわけではなかったが、志野は伏目がちに顔を赤くさせながら向居を、抱き締めてしまっていた。
「志野くん…大丈夫だよ」と、意表を突かれた向居は、驚きながらも落ち着いた声を掛けた。
「あの…面と向かって、話す機会を伺っていたら…今かなって…スミマセンでした…」
「うん。言ってくれてありがとう」
向居は、志野の背中を擦った。
会社で仲間内で肩を叩かれたりする事はあっても、子供の時のように背中を擦られる事はない。
久し振りな感触に少しホッとしていると向居の方から「で? どこなの?」と、真剣な目で見上げてきた。
「会社の本社がある国です…」
「だから! 僕が聞いてるのは、国名!」
はっきりとした圧をまとった向居が、志野の懐に擦り付くように見上げる。
「あの…シュトラです…」
すると向居は、スンとした顔で取り乱して乱れた髪を、手ぐしで直しギロリと志野を見詰める。
「…その辞令? 出向って言うのは、必ず行かないとならないんでしょ? 断ると解雇されるとか…」
向居の顔は、不安で一杯だと言う表情で、顔色が悪い。
「いえ……断ったから即解雇とは、なりません。まぁ…そう言う場合もあるらしいですけど…」
「本当に?」
「はい。上司からはそう説明されてます…」
「でも、海外に渡って仕事がしたかったんだよね?」
「はい…」
本社の人員補強。
「今週にでも、はいと返事をすれば、その日のうちに出向辞令書が出ると思います」
「期間は…決まってないんだっけ?」
コクリと志野は、頷く。
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