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11 隣人の向居さんと最後の晩餐を…
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「分かった…」と、志野本人よりも、志野の人事に納得した風な雰囲気の向居は、なにやらスマホを取り出し志野とスマホを、見比べるようにジッと見上げていた。
「あの…向居さん?」
「…その下見の期間っていつ頃になるの? それと…田舎の家族には言ったの?」
唐突と言えば、唐突な質問だ。
「…家族には、一応伝えましたけど、好きにしろって…まぁ…俺は、三男だし兄達は、結婚してるし控えてるしで…両親とは、同じ県内住みだし…頼られるようなことは、少ないかと…」
「ふ~ん…で?…」
「で? とは…」
向居の圧に押され気味になりタジタジとなる志野は、困惑するばかりだ。
「下見に行くのは、いつ頃?」
「えっと…来週末か、その後の週でチッケットが、手に入り次第ですかね…」
「あっちに行く直航便は、ないから…別の国を経由しての時間や乗換えの時間を考えると、丸一日かかるね…」
「ですね…俺も、何度か出張で行ったことがありますけど……」
向居の妙に詳しい口振に志野は、向居の顔を覗き込む。
「何?」
「…詳しいなぁ…って…」
ニヤリと口元が、緩む向居の表情に志野はたじろいでしまった。
「あのね。僕の職業は、フードライターだよ。昔…別のフードライターさんの手伝いで外国の食べ歩きに同行した事があったり。自分でも行ったりしてるんだよ」
向居は、本棚から数冊本を取り出しテーブルに広げた。
「見ても?」
「どうぞ…」
ペラペラとページを捲ると、同行者として向居 レンの名を見つけた。
「僕が、元々食べ歩きのブロガーだった話はしたでしょ? そのブログを見てくれた本の著者さんが、声を掛けてくれて、何年かに一度のペースで、日本をまわったり。外国に足を伸ばしたりとかね…」
嬉々として語る向居は、更に志野を圧倒する。
「そう…なんですか?…」
「そっち方面に行くのにチッケット取ったこともあるし…」
またスマホを操作しながらチラッと志野を見詰めると、そっと手で画面を覆うようにスマホを、棚の上に置くと向居はキリッとした表情を保ちつつ。
「あのさ…別れないから」
ビシッと宣言するように志野に告げた向居は、楽しそうにキッチンに向かった。
「……………」
えっと…
今、別れないからって言ったよな?
俺は、意味が飲み込めずキッチンに駆け寄った。
「あの…どう言う意味で?」
「志野くんは、僕と別れたいの?」
「いや…あの…」もしかして…
俺試されてる?
キッとした真剣な目を見せる向居さんの目色は、深い森のような色味を帯びておる。
「向居さん…目の色…」
「ん?」
不思議そうに俺を見上げ時には、圧が消え掛かっていた。
「…あれ? 言わなかった? アンバーヘーゼルのこと…」
アンバーヘーゼルと言う聞き慣れない言葉に俺は、呆然となっている。
「あっ…目の色のことだよ。ただ僕のは、少し珍しいらしいんだ。濃いブラウンに濃い緑が…」
「ん?」俺は黙り込み首を傾げた。
「あれ? 志野くんには…言ったはず……のつもりしてただけかな? なんかゴメンね!」
何? この匂わせな口調は…
ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ
「スマホ鳴ってるよ…」
「へぇ…? あっ!」
我に返り慌ててスマホを見ると、それは会社からだった。
「出たら?」
ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ
「切れちゃうよ…」
ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ
「はい。志野目です…」
会社からの電話に出ると、その前で向居さんは、ソファに座りながら棚に置いたスマホを、また手に取り直しニコニコと操作している。
『志野目か? いま大丈夫か?』
電話口の相手は、あの時俺に辞令を言い渡してくれた上司の1人だった。
『どうだ?』
「どうとは…」
俺も、何…間の抜けた事を言ってんだ?
『どうって…本社への辞令の件だろ?』
「ですよね…」
『お前…大丈夫か?』
俺は、なんで上司に心配されているんだ?
『まぁ…明日は、出社予定になってるからその時聞けばいいとは思っているが、その前に返事が決まっているなら聞いとこうかってな…』
「はぁ…」
『その方が、話も早いだろ?』
本当になんつータイミングだ。
不意に残像っぽいものが、俺の視線の先で動いた為に見返すと、向居さんが引くぐらいの笑顏で大きく手で◯を作り小声でOKのGOサインを出ている。
いや…
何で、貴方がGOサインを出してんだ?
「あの…向居さん?」
「…その下見の期間っていつ頃になるの? それと…田舎の家族には言ったの?」
唐突と言えば、唐突な質問だ。
「…家族には、一応伝えましたけど、好きにしろって…まぁ…俺は、三男だし兄達は、結婚してるし控えてるしで…両親とは、同じ県内住みだし…頼られるようなことは、少ないかと…」
「ふ~ん…で?…」
「で? とは…」
向居の圧に押され気味になりタジタジとなる志野は、困惑するばかりだ。
「下見に行くのは、いつ頃?」
「えっと…来週末か、その後の週でチッケットが、手に入り次第ですかね…」
「あっちに行く直航便は、ないから…別の国を経由しての時間や乗換えの時間を考えると、丸一日かかるね…」
「ですね…俺も、何度か出張で行ったことがありますけど……」
向居の妙に詳しい口振に志野は、向居の顔を覗き込む。
「何?」
「…詳しいなぁ…って…」
ニヤリと口元が、緩む向居の表情に志野はたじろいでしまった。
「あのね。僕の職業は、フードライターだよ。昔…別のフードライターさんの手伝いで外国の食べ歩きに同行した事があったり。自分でも行ったりしてるんだよ」
向居は、本棚から数冊本を取り出しテーブルに広げた。
「見ても?」
「どうぞ…」
ペラペラとページを捲ると、同行者として向居 レンの名を見つけた。
「僕が、元々食べ歩きのブロガーだった話はしたでしょ? そのブログを見てくれた本の著者さんが、声を掛けてくれて、何年かに一度のペースで、日本をまわったり。外国に足を伸ばしたりとかね…」
嬉々として語る向居は、更に志野を圧倒する。
「そう…なんですか?…」
「そっち方面に行くのにチッケット取ったこともあるし…」
またスマホを操作しながらチラッと志野を見詰めると、そっと手で画面を覆うようにスマホを、棚の上に置くと向居はキリッとした表情を保ちつつ。
「あのさ…別れないから」
ビシッと宣言するように志野に告げた向居は、楽しそうにキッチンに向かった。
「……………」
えっと…
今、別れないからって言ったよな?
俺は、意味が飲み込めずキッチンに駆け寄った。
「あの…どう言う意味で?」
「志野くんは、僕と別れたいの?」
「いや…あの…」もしかして…
俺試されてる?
キッとした真剣な目を見せる向居さんの目色は、深い森のような色味を帯びておる。
「向居さん…目の色…」
「ん?」
不思議そうに俺を見上げ時には、圧が消え掛かっていた。
「…あれ? 言わなかった? アンバーヘーゼルのこと…」
アンバーヘーゼルと言う聞き慣れない言葉に俺は、呆然となっている。
「あっ…目の色のことだよ。ただ僕のは、少し珍しいらしいんだ。濃いブラウンに濃い緑が…」
「ん?」俺は黙り込み首を傾げた。
「あれ? 志野くんには…言ったはず……のつもりしてただけかな? なんかゴメンね!」
何? この匂わせな口調は…
ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ
「スマホ鳴ってるよ…」
「へぇ…? あっ!」
我に返り慌ててスマホを見ると、それは会社からだった。
「出たら?」
ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ
「切れちゃうよ…」
ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ
「はい。志野目です…」
会社からの電話に出ると、その前で向居さんは、ソファに座りながら棚に置いたスマホを、また手に取り直しニコニコと操作している。
『志野目か? いま大丈夫か?』
電話口の相手は、あの時俺に辞令を言い渡してくれた上司の1人だった。
『どうだ?』
「どうとは…」
俺も、何…間の抜けた事を言ってんだ?
『どうって…本社への辞令の件だろ?』
「ですよね…」
『お前…大丈夫か?』
俺は、なんで上司に心配されているんだ?
『まぁ…明日は、出社予定になってるからその時聞けばいいとは思っているが、その前に返事が決まっているなら聞いとこうかってな…』
「はぁ…」
『その方が、話も早いだろ?』
本当になんつータイミングだ。
不意に残像っぽいものが、俺の視線の先で動いた為に見返すと、向居さんが引くぐらいの笑顏で大きく手で◯を作り小声でOKのGOサインを出ている。
いや…
何で、貴方がGOサインを出してんだ?
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