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『高宮君と野木君①』

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「お前、俺という者がありながら…」

「………」

 突然の出来事に、高宮さとしは固まった。



 学校へ登校した高宮は何故かクラスメイトの女子達に囲まれ、次々と訳の分からない質問をぶつけられた。

「あの…、高宮くんは好きな子とか、いる?」

「え…?」

「ほ、ほら、あの子可愛いな~とか、この子優しいな~とか、そんな風に思う子いるのかなって…」

「う~ん…、よく分かんないけど、皆可愛いし、優しいなって思うよ」

『キャー!!』

 自分の答えに悲鳴が上がり、集まっていた女子の中の数人が口元を隠してしゃがみ込んでしまった事に驚きつつも、高宮は女子達に囲まれている事に少しだけ浮かれていた。

(皆、一体どうしたんだろ?滅多にこんな事無いのに…)

「あ、あの…、その中にお付き合いしたいな~と思う子は…いるの?」

「それは…えっと…」

「ちょっと、高宮君を困らせないでよ!」

「何よ、あんただって知りたいんでしょ!」

「私が知りたいのは、そう言う事じゃなくて…」

「じゃあ何が知りたいのよ!」

「それはっ~…」

「言えないなら黙っててよ!!」

「?」

 言い合いを始めた女子達を不思議そうに見つめる高宮。
しかし、相変わらず質問内容の意図が掴めず、女子達の言い合いをただ黙って傍観しているだけだった。

 その時、突然背中に衝撃を受け振り返った高宮。
目に飛び込んで来たのは自分の背中に引っ付いている幼なじみの野木つよしの姿で、どうしたのかと声を掛け様とした高宮より先に上目遣いで放った野木の言葉に高宮だけで無く、その周りで揉めていた女子達も固まってしまった。

「俺とは、遊びだったのかよ………て、あれ、高宮?どうし…うわあ?!女子も固まってる…」

「………」

「お、お~い高宮?何固まってんだよ…」

「…野木、今の…」

「お、復活したか!!お前が女子に囲まれてヘラヘラしてたから、からかったんだよ!」

「…そう…」

 楽しそうに告げた野木に、高宮はそれ以上返す事は無かった。

(野木、僕をからかってたみたいだけど…、あの発言の後から女子達が頬を赤らめてる事に気付いてんのかな?)

 翌日から高宮と野木は付き合っていると言う噂が流れる事になるが、それを聞くまで野木は、自分の行為を後悔する事は無かったのだった。





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