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『高宮君と野木君②』

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「くそ~…。完全にとばっちりだ…」

「いいや、自業自得だよ」

 落ち込む俺に、さとしは冷たく言い放った。

 朝学校に行くと、さとしがクラスの女子達に囲まれていて、それが悔しくなって思わず吐いた嘘。

『俺と言うものがありながら…。俺とは、遊びだったのかよ…』

 よくドラマとかで聞くありきたりな台詞をさとしの背中に抱き着きながら呟いた。
周りにも聞こえる様に。

 こうすれば、女子達はさとしを男が好きだと勘違いして、さとしのモテブームはすぐに終わると考えての事だった。
だけど現実は違った。
さとしが男が好きだと勘違いするんじゃなくて、俺とさとしが付き合っていると勘違いされてしまったのだ。

 必死に否定したけど信じて貰えず、もう一人の友達のまさしにまで笑われる始末。

 しかも、一緒に疑われてるさとし自身は全く気にする素振りを見せないから、まるで俺が照れてるだけの様にしか見えないと言う、俺だけが損をする展開なのだ。

「…お前は嫌じゃ無いのかよ?」

「う~ん…、特には。と言うか、逆に付き合って無い方がおかしいだろ」

「………は?」

「友達なのに」

「…お前、付き合ってるの意味分かってるよな…?」

「うん」

「俺達は恋人だと言われてる様なもんなんだぞ?」

「あはは、恋人では無いよね!!」

「いや、笑い事じゃねえよ…」

「恋人として付き合ってる訳では無いけど、友達としては付き合ってるんだから間違いでは無いよ」

「…そこまで考えてるヤツは多分、お前だけだぞ…。はあ~…」

 「付き合っている」と言う言葉に反応しないと思っていたら、まさか他の奴等と違う意味で考えているとは思わなかった。

(昔から抜けてるヤツだとは思っていたが、ここまでとは…)

「何か…、気にしてる俺がバカみたいだな…」

「…別に分かって無い訳じゃないからね」

「はあ…?」

「皆が言ってる意味は分かっているよ。つよしが気にしてる理由もね」

「お前、何言って…」

「良いんじゃないか?男同士で付き合ってたって」

 言いながら笑顔で俺の手を握って来たさとしに、俺は身の危険を感じた。
そして同時に、やっぱりふざけなければ良かったと、あの時の自分に殴り掛かりたい気持ちになったのだった。

「どうしたの、つよし?」

「俺はその気は無い!!」

「その気って?」

「男を好きになる事だよ!」

「僕も無いよ?」

「今言ってたじゃねえか、男同士で付き合ってたって良いって!」

「別に同性愛を否定する気は無いと言っただけだよ?」

「だったら何で、俺の手を握ってるんだよ?」

「友達が手を繋いだらおかしいの?」

「ある程度大きくなったら、友達でも手はつながねえよ!!」

「そうなの?」

「お前はまだ子供か!!」

「どっちかと言うと、つよしの方が子供っぽいかも」

「うるせーよ…」





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