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『高宮君と野木君~おふざけ~』

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(くっそ~…。いつまで続くんだよ…)

 この日も、野木つよしはいつもと変わらぬ光景に頭を抱えていた。



 数日前、幼なじみの高宮さとしが女子に囲まれている現場を見て、モテている事を面白く無いと感じ、まるで自分達は付き合っているとでも言わんばかりの発言をかましたつよし。
その発言を聞けば、女子達はさとしを男が好きなのだと思い、さとしのモテブームは終わると考えての行動だった。

 しかし宛は外れ、つよしはさとしと付き合っていると誤解されてしまったのだ。

(そうだよな…。あんな事言ったら、俺達が付き合ってるって思われても仕方無いんだよな…)

「あの、野木君…」

(ふざけといてなんだけど、何でさとしは嫌がらないんだ?普通もっと嫌がるだろ…)

「野木君!!」

「うわっ!!え?あ、な、何だ、こんなに大勢で…」

「ねえ野木君、高宮君とは…」

「だから、さとしとは付き合って無いって言ってるだろ!」

「本当に?」

「当たり前だ!!あいつとはただの幼なじみだよ!」

「だったら、あの言葉は…」

「ふざけて言ったんだよ!」

「本当?」

「だ~も~…、何回言わせんだよ…」

 つよしは項垂れた。
女子達が大勢で自分の席の周りに集まって来たかと思ったら、またさとしとの関係について訊ねられたから…。

 あの一件以降、何度も何度も女子だけでなく男子にまで同じ事を聞かれ、聞き飽きた言葉だった。

(くっそ~…。せっかく女子に囲まれているってのに、全然嬉しくね~…)

「…何でそんなに、俺達の関係気にするんだよ?」

「え!?そ、それは~…」

「ねえ…」

「女子は、高宮の家が金持ちだから狙ってるんじゃねえか?」

『!』

「よお、まさし。何だよそれ?」

「母さんが、『さとし君って、モテるでしょ!顔も良くて、将来はお家継いでお金持ちだもんね』って言ってたし」

「そうなのか?」

「多分な」

「林道君、勝手な事言わないでよ!!」

「そーよ!!」

「あ、気に障ったならわりぃ…」

 つよしの疑問に答えた林道まさしは女子達に睨まれ、少し肩を竦めた。

 一方のつよしは、まさしの言葉の意味が分からないながらも納得し、前回自分がふざけた時にさとしが女子達から囲まれていた事を思い出していた。

(顔が良くて金持ちだとモテるのか…。小学校の頃は気付かなかったけどな。そっか、さとしはモテるのか…。そう言えば、俺が囲まれているのもさとしとの事を聞きに来てるだけだし、はあ~…)

 女子に囲まれ、睨まれて、つよしとまさしがそれぞれに肩を落とした時、突然つよしの肩に手が置かれた。

 驚いて振り返ったつよしは、目に映った人物の表情に顔をひきつらせ、慌てて立ち上がろうとした。
けれど、がっしりと肩を抑えられ、手をどかそうと藻掻いても全くどけず、そんなさとしにつよしは嫌な予感しかしなかった。

「おい、さとし…?」

「つよし…、僕がいるのに女子達と何してるの?もしかして、浮気…?」

「さとし、テメー…」

「あ~あ、またか…」

「やっぱり!」

「野木君と高宮君って…」

「ちげーよっ!!さとし、ふざけるなって!」

「え~、別にふざけてないよ?」

「このやろっ………はぁ…」

 からかう様に笑いながら否定しないさとしに、始めは苛ついたつよしだったが、自分も同じ事をしたことを思い出して言葉を飲み込んだ。

 そんなつよしにさとしは首を傾げながらもおふざけを続け、つよしは軽く流すに留まるのだった。

「浮気なんて許さないからな、つよし!」

「へいへい…」

「野木君が否定しない!」

「高宮君は野木君が…」

「お金持ちって分からないわ~…」

「おい高宮、あんまり見せつけんなよ!」

「そーだそーだ!」

(どうせ、周りのこの様子じゃ何言っても無駄だろうな…)

「つよし、ちゃんと聞いてる?」

ブチッ

「あんまりしつこいと、絶交するぞ…」

「絶交…。じゃあ、もう止める」

「そうしてくれ…。はあ…」





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