16 / 42
その16
しおりを挟む
8 ノエルヴァナ
これは、いったいいつのできことなのか、果たして本当のことなのか。
誰の身に降りかかった災難なのか。それともただのフェイク・ニュースのお色直しのつもりなのか、真実にまさる誤読なしと言うから。
それは冗談として、
インディアン・ポイントまでは、まだ十八哩あった。あの標識ブイには見覚えがある。
それにしても、夢の続きがこんなにもいまいましいものとは。
あの島から流れてきた。
あの波に根こそぎにされ、流れ着いた島は、電気柵で厳重に封印された島なのに、人の出入りがやけに激しい。
人の顔を覚えた頃には、もうその人は島からいなくなっている。
季節感のない島だったから、誰とも名付けようにも深い海霧につつまれた蒸気船みたいで、海図も航跡図もなく、皆目覚束ないままだった。
「粗銅島の爵位と年千ポンドの年金を与えることにしましょう。それで彼は人生の混乱と遅れを十二分に解消できるはずですから」
トップハム級のハッとする声がした。
それから遠浅の海がどこまでも続いている。
間延びした春のような日和で、沖合はすこし霞んでいた。
なだらかな海岸線の途中に鯨が一頭打ち上げられていた。
夏の終わりの出来事だから、物語にするのはよしにしよう、そう心に決めて歩く。
何人か濡れそぼった海豹のような人が、名残り惜しそうに海を見ていた。
波乗りにはもう遅すぎる。
残照がやがてすべてを覆い尽くし、洗い流す。
夏の記憶と残像をばらばらな誤植にして……
これは、いったいいつのできことなのか、果たして本当のことなのか。
誰の身に降りかかった災難なのか。それともただのフェイク・ニュースのお色直しのつもりなのか、真実にまさる誤読なしと言うから。
それは冗談として、
インディアン・ポイントまでは、まだ十八哩あった。あの標識ブイには見覚えがある。
それにしても、夢の続きがこんなにもいまいましいものとは。
あの島から流れてきた。
あの波に根こそぎにされ、流れ着いた島は、電気柵で厳重に封印された島なのに、人の出入りがやけに激しい。
人の顔を覚えた頃には、もうその人は島からいなくなっている。
季節感のない島だったから、誰とも名付けようにも深い海霧につつまれた蒸気船みたいで、海図も航跡図もなく、皆目覚束ないままだった。
「粗銅島の爵位と年千ポンドの年金を与えることにしましょう。それで彼は人生の混乱と遅れを十二分に解消できるはずですから」
トップハム級のハッとする声がした。
それから遠浅の海がどこまでも続いている。
間延びした春のような日和で、沖合はすこし霞んでいた。
なだらかな海岸線の途中に鯨が一頭打ち上げられていた。
夏の終わりの出来事だから、物語にするのはよしにしよう、そう心に決めて歩く。
何人か濡れそぼった海豹のような人が、名残り惜しそうに海を見ていた。
波乗りにはもう遅すぎる。
残照がやがてすべてを覆い尽くし、洗い流す。
夏の記憶と残像をばらばらな誤植にして……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる