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第五話 トラウマ克服!?ゴブリン退治 ~チャプター1~
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「ファイアバレット!」
メルが構えてそう唱えると、火の弾丸が3発勢いよく発射され標的を打ち抜いていく。
「うん!いい感じだね。」
「よーし、まだまだいくわよ!」
また朝早い時間のギルドの訓練場。
メルが魔術の練習がしたいと言い出したので、空いてる時間に訓練場を貸してもらっていた。指南役はリーナだ。
(メルの奴、張り切っているなぁ。でもいくら適性があるとはいえなんで急に魔術を?)
欠伸をしながらメルの訓練の様子をじっと見ていると、あることに気が付いた。
「あいつ、ネイルしてやがる。」
メルの指先を注視してみると、キラッと光るものがみえた。多分、この間姫様たちとサロンに行ったときに教えてもらったのだろう。
メルはもともと戦闘時にはその爪を鋭く伸ばして攻撃をしていたが、せっかくデコった爪でそういう戦い方はしたくないだろうから、魔術で戦うようにしたいという事か。
「ねぇねぇ、ユウヤもせっかくだから魔術の練習しようよ。防御魔術の適性あるんでしょ?」
「お、おう…。」
「ほら、ファストシールド。やってみよ?」
ファストシールド。魔力で盾を形成させる術だ。出せるのはちょっとの間だけだがある程度の物理や魔術による攻撃を防ぐことが出来る。その特性ゆえ攻撃のタイミングを見計らって出す必要がある上、俺はまだ手を構えた場所にしか出すことが出来ない。だが、鍛錬を積めば構えずとも任意の場所に出したり、複数出して味方を同時に守ることも出来るようになるという。
「それじゃあ、いっくよ~!」
リーナはすこし離れた場所に移動した。その傍らには布を丸めて作ったボールが何個か用意されている。そしてリーナはそのボールを俺に向かって投げつける。
「はッ!とぉッ!せやッ!」
投げられたボールをファストシールドで防いでいく。最初の方はしっかりと防げていたが段々と疲労が蓄積しうまく盾を出せなくなってくる。リーナの方も投げるペースを速めたり時々フェイントを入れたりとタイミングをずらしてきた。
「ちょまっ!痛ッ!」
防御出来なくなった俺は立て続けにボールを食らう。いくら布で出来てるからって当たれば痛い。
「ぜぇ…ぜぇ…。」
「うーん。やっぱもうちょっと体力つけなきゃね。そうすれば魔力量も増えるし。」
「もう、ほんとヘタレね…。もっと早起きして走ったりすれば?」
そんな強豪校の部活みたいなこと、異世界に来てまでしたくないんだけど…
***
「訓練お疲れ様です。これ、よろしければどうぞ。」
訓練を終えてギルドのロビーに戻るとエミリーさんがポーションを差し入れてくれた。しかもキンキンに冷えてる!
「ゴクッ…はぁー生き返るぅ。」
「オヤジくさッ!」
メルの辛辣な言葉が突き刺さる。
「で、今日はどのクエストにする?」
「また薬草採取?」
「…いや。」
今日の俺は、覚悟を決めていた。
このファンタジー世界にきてだいぶたったが、そろそろちゃんと冒険者として本格的に動き出してみようと。
「ゴブリン退治、やってみよう。」
「ホント!?」
「ユウヤ、大丈夫なの!?」
「もうそろそろ大丈夫かな…って。それにあんなんじゃいつまでたってもメルを里に帰すことなんて出来ないだろ?」
「ユウヤ…。」
そうしてゴブリン退治に挑むべくクエスト掲示板を覗く。
「お、あったぞ。えーっと……」
早速見つけたクエストの内容を確認する。
依頼票によると、近頃ルクスと隣町を結ぶ林道においてゴブリンの集団による女性の拉致事件が多発しているという。そのゴブリンの集団を撃退し、攫われた女性たちを救出するまでがそのクエストのミッションだ。
「うわ…なんだか大変そうだ。」
「そうだね。だってこれランクBのクエストだよ?今の私たちじゃ難しいと思う。」
ギルドでは、『冒険者は皆平等である』という信念の元、冒険者そのものにランク付けはされていない。その代わりクエストの内容により難易度ランクが充てられ、ギルドの受付員がクエストを受ける冒険者の受注・達成歴を参照し、そのクエストを受注可能か判断するシステムとなっている。ランクは基本、上からA~Dとあるが、稀にランクAを超えるランクSのクエストが発生することもあり、難易度が上がる度にSの数が増えていく方式となっている。
「この事件の内容から、そのゴブリンの集団はかなりの規模だと思われます。なので今のユウヤさん達だけでは達成するのはとても難しいと思いますね…。」
「そうですか……。」
せっかく覚悟を決めていたのだが、なんだか出鼻を挫かれた感じだ…。
と、落胆しているといきなりドン!と勢いよく入り口の扉が開かれ、
「だったら、アタシ達も一緒に行くわ!」
という台詞と共に二人の女性が入ってくる。
一人は長いブロンドの髪をポニーテールに束ね、腰には派手な剣を差している。もう一人はキャスケットのような帽子をかぶった黒髪の女性。
二人ともいかにも冒険者風な装いだが、俺はこの二人組には見覚えがあった。
「え!?えーっと、ノーラ姫にシアリーゼ姫?」
「ノーラ?誰の事?アタシはS級冒険者のノルンよ。」
「同じくS級冒険者のシエルと申します。」
繰り返すが、冒険者そのものにランク付けはされていない。多分、この二人はランクSのクエストを達成可能だと主張したいのだろう。ノーラ姫の強さはこのあいだ見せつけられたし、シアリーゼ姫も恐らく相当の実力があるだろう。
それはさておき、二人とも冒険者風に変装しているようだがどう見てもバレバレである。しかし、周りの反応を見るにそんなに驚きはしていないし、どうやらこれは公然の秘密となっているらしい。
「ともかく、アタシ達が一緒に行けば問題ないでしょ?ね、受付さん?」
「え、ええ。ノーr…ノルンさんはかなりのクエスト達成率ですし、シ…エル?さんも登録して間もないですが高い魔力適性がございますので、これならば受注可能ですね。」
「決まりね。あんな変態ゴブリンなんて根絶やしにしてやるわ。」
「一緒に冒険できてうれしいですわ、リーナさん、メルさん、それにユウヤさんも。」
「うん!わたしも嬉しい!」「二人ともよろしくね!」
「こちらこそよろしくね。あんたも…せいぜい頑張りなさいよ。」
「は、はぁ……。」
確かにこの二人が一緒なのは頼りになるけど、それはそれで気が重いぞ……。
メルが構えてそう唱えると、火の弾丸が3発勢いよく発射され標的を打ち抜いていく。
「うん!いい感じだね。」
「よーし、まだまだいくわよ!」
また朝早い時間のギルドの訓練場。
メルが魔術の練習がしたいと言い出したので、空いてる時間に訓練場を貸してもらっていた。指南役はリーナだ。
(メルの奴、張り切っているなぁ。でもいくら適性があるとはいえなんで急に魔術を?)
欠伸をしながらメルの訓練の様子をじっと見ていると、あることに気が付いた。
「あいつ、ネイルしてやがる。」
メルの指先を注視してみると、キラッと光るものがみえた。多分、この間姫様たちとサロンに行ったときに教えてもらったのだろう。
メルはもともと戦闘時にはその爪を鋭く伸ばして攻撃をしていたが、せっかくデコった爪でそういう戦い方はしたくないだろうから、魔術で戦うようにしたいという事か。
「ねぇねぇ、ユウヤもせっかくだから魔術の練習しようよ。防御魔術の適性あるんでしょ?」
「お、おう…。」
「ほら、ファストシールド。やってみよ?」
ファストシールド。魔力で盾を形成させる術だ。出せるのはちょっとの間だけだがある程度の物理や魔術による攻撃を防ぐことが出来る。その特性ゆえ攻撃のタイミングを見計らって出す必要がある上、俺はまだ手を構えた場所にしか出すことが出来ない。だが、鍛錬を積めば構えずとも任意の場所に出したり、複数出して味方を同時に守ることも出来るようになるという。
「それじゃあ、いっくよ~!」
リーナはすこし離れた場所に移動した。その傍らには布を丸めて作ったボールが何個か用意されている。そしてリーナはそのボールを俺に向かって投げつける。
「はッ!とぉッ!せやッ!」
投げられたボールをファストシールドで防いでいく。最初の方はしっかりと防げていたが段々と疲労が蓄積しうまく盾を出せなくなってくる。リーナの方も投げるペースを速めたり時々フェイントを入れたりとタイミングをずらしてきた。
「ちょまっ!痛ッ!」
防御出来なくなった俺は立て続けにボールを食らう。いくら布で出来てるからって当たれば痛い。
「ぜぇ…ぜぇ…。」
「うーん。やっぱもうちょっと体力つけなきゃね。そうすれば魔力量も増えるし。」
「もう、ほんとヘタレね…。もっと早起きして走ったりすれば?」
そんな強豪校の部活みたいなこと、異世界に来てまでしたくないんだけど…
***
「訓練お疲れ様です。これ、よろしければどうぞ。」
訓練を終えてギルドのロビーに戻るとエミリーさんがポーションを差し入れてくれた。しかもキンキンに冷えてる!
「ゴクッ…はぁー生き返るぅ。」
「オヤジくさッ!」
メルの辛辣な言葉が突き刺さる。
「で、今日はどのクエストにする?」
「また薬草採取?」
「…いや。」
今日の俺は、覚悟を決めていた。
このファンタジー世界にきてだいぶたったが、そろそろちゃんと冒険者として本格的に動き出してみようと。
「ゴブリン退治、やってみよう。」
「ホント!?」
「ユウヤ、大丈夫なの!?」
「もうそろそろ大丈夫かな…って。それにあんなんじゃいつまでたってもメルを里に帰すことなんて出来ないだろ?」
「ユウヤ…。」
そうしてゴブリン退治に挑むべくクエスト掲示板を覗く。
「お、あったぞ。えーっと……」
早速見つけたクエストの内容を確認する。
依頼票によると、近頃ルクスと隣町を結ぶ林道においてゴブリンの集団による女性の拉致事件が多発しているという。そのゴブリンの集団を撃退し、攫われた女性たちを救出するまでがそのクエストのミッションだ。
「うわ…なんだか大変そうだ。」
「そうだね。だってこれランクBのクエストだよ?今の私たちじゃ難しいと思う。」
ギルドでは、『冒険者は皆平等である』という信念の元、冒険者そのものにランク付けはされていない。その代わりクエストの内容により難易度ランクが充てられ、ギルドの受付員がクエストを受ける冒険者の受注・達成歴を参照し、そのクエストを受注可能か判断するシステムとなっている。ランクは基本、上からA~Dとあるが、稀にランクAを超えるランクSのクエストが発生することもあり、難易度が上がる度にSの数が増えていく方式となっている。
「この事件の内容から、そのゴブリンの集団はかなりの規模だと思われます。なので今のユウヤさん達だけでは達成するのはとても難しいと思いますね…。」
「そうですか……。」
せっかく覚悟を決めていたのだが、なんだか出鼻を挫かれた感じだ…。
と、落胆しているといきなりドン!と勢いよく入り口の扉が開かれ、
「だったら、アタシ達も一緒に行くわ!」
という台詞と共に二人の女性が入ってくる。
一人は長いブロンドの髪をポニーテールに束ね、腰には派手な剣を差している。もう一人はキャスケットのような帽子をかぶった黒髪の女性。
二人ともいかにも冒険者風な装いだが、俺はこの二人組には見覚えがあった。
「え!?えーっと、ノーラ姫にシアリーゼ姫?」
「ノーラ?誰の事?アタシはS級冒険者のノルンよ。」
「同じくS級冒険者のシエルと申します。」
繰り返すが、冒険者そのものにランク付けはされていない。多分、この二人はランクSのクエストを達成可能だと主張したいのだろう。ノーラ姫の強さはこのあいだ見せつけられたし、シアリーゼ姫も恐らく相当の実力があるだろう。
それはさておき、二人とも冒険者風に変装しているようだがどう見てもバレバレである。しかし、周りの反応を見るにそんなに驚きはしていないし、どうやらこれは公然の秘密となっているらしい。
「ともかく、アタシ達が一緒に行けば問題ないでしょ?ね、受付さん?」
「え、ええ。ノーr…ノルンさんはかなりのクエスト達成率ですし、シ…エル?さんも登録して間もないですが高い魔力適性がございますので、これならば受注可能ですね。」
「決まりね。あんな変態ゴブリンなんて根絶やしにしてやるわ。」
「一緒に冒険できてうれしいですわ、リーナさん、メルさん、それにユウヤさんも。」
「うん!わたしも嬉しい!」「二人ともよろしくね!」
「こちらこそよろしくね。あんたも…せいぜい頑張りなさいよ。」
「は、はぁ……。」
確かにこの二人が一緒なのは頼りになるけど、それはそれで気が重いぞ……。
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