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第七話 里を守れ!メルの決意 ~チャプター6~

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「ッそいやァ!」

自分の身の丈ほどある巨大な斧を振り回し次々と敵をなぎ倒していく、ギルド長ガゼル。
何年も現場を離れていたとは到底思えない戦いぶりだ。

「さて、ワタクシたちも参りますよぉ!」

そう言うとミヤムラさんは目にも留まらぬ速さで敵の群れに向かっていき―――

「ウッ!」「ぐふッ!」「かはッ…!」

手にした短刀で次々と敵を刺突していく。

「ご安心ください。急所は外しました……つもりですが、私も長いこと現場を離れていたものでもしかしたら多少手元が狂って急所に入ってしまったかもしれません。」

刺されたハンターたちはそのまま白目をむきながら倒れていった。


「…もう俺たち要らないんじゃないか?」
「んなわけないでしょ!ほら、私たちも行くわよ!」

こうしてユウヤたちも戦場へ身を投じる。

「えいッ!やぁ!」

メルはさっそくミスリルメイスを用いハンター相手に応戦する。感触はなかなかよさそうだ。

(メルの奴、もうあれを使いこなしているのか。)

グリフォン酔いがまだ醒めきってないユウヤだが、そんな重たい体を引きずりながらハンターと相対する。

「チッ、ガキが調子のるなよ!」
「ひぃッ…!」

相手の凄みに思わずびくついてしまうが―――

「エアショック!」
「ぶほッ!」

「今だよ!」
「お、おう!」

リーナが魔術で敵をのけぞらせてくれたその隙に―――

「シュッと刺してひねる!」
「んぐゥ!」

敵を一人、仕留めることができた。

「す、スマン…」
「病み上がりなんだから、あまり無理しないでね。」

ユウヤはリーナのサポートを受けながらハンターたちを相手取っていく。

                   ***

一方。

広場の方ではノーラ王女率いる王国軍と闇ハンターの一団との合戦が続いていた。
人数で劣っていた王国軍だったが、ノーラ王女は魔術を駆使し一人で多くのハンターを相手することによって戦況は拮抗していた。

しかし―――

「ストームブラスト!」
「ぐわぁぁ!」

(まだ沸いてくる…さすがに魔力がもう持たない、けど!―――)

ノーラ王女といえど、大勢相手に大型魔術を撃ち続けるのにも限界があった。それでもなお前線で魔術を撃ちつづける。

「殿下!一度お下がりください!」「いくら殿下といえどこう何度も大魔術を撃っていては…」
「なに言ってんのよ!そんなことしたらまた圧されちゃうわよ!」
「しかし…!」「殿下おひとりに無理をさせるわけには―――」

強がってはいるものの、ノーラ自身は限界が近づいていることは自覚していた。

(くっ…、あともう少しなのにッ―――)

そう思ったノーラは、何を思ったのかふと空を見上げる。

するとその上空に魔法陣のようなものが浮かび上がっているのが見えた。
そしてその上に立つ、見知った人影。

(…まったく、遅刻よ。)

その魔法陣に立っていた、今の彼女の何よりの友である、シアリーゼ姫。

「遅ればせながら、わたくしも助力いたします。」

シアリーゼは手を振り上げると、その上に無数の黒い矢が発生する。
そして彼女の視界にカーソルがいくつも浮かび上がり、目標を次々と捉えていく。

「―――ターゲット、捕捉完了。」

「ブラックアローレイン!」

上げた手を振り下ろすと、黒い矢が捉えた目標であるハンターやそれが操るモンスターを射抜いていった。

「ぎゃあ!」「ぐわぁッ!」
「な、何なんだいきなり!」

敵が次々と降り注ぐ黒い矢に撃ち抜かれていく光景に、王国軍側も戸惑い隠せないでいる。

そして黒い矢を撃ち尽くしたシアリーゼは自分の乗っている魔法陣をゆっくり下ろし地上に降り立った。

「ずいぶんと重役出勤じゃない、シア。」
「すみません。まだこの辺りの地理に疎いもので、道に迷ってしまいまして…。」

「でも、これで相手の戦力はあらかた削れたはずよ!さぁ、あともう一息よ!」
「おおぉぉぉぉ!」
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