ガーランド大陸魔物記  人類が手放した大陸の調査記録

#Daki-Makura

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マンドラゴラ 〝クソッタレの小悪魔〟②

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 それからもマンドラゴラ達は私にまとわりついてきた。

 恐怖で震える私などお構い無しに……私の何が気に入ったのかはわからないが、ここまで一緒にいると嫌でもわかる。
 彼らが善良で、おとぎ話の中の様に怖い存在ではないと。今では何体ものマンドラゴラが私の住居に住み着いているのだ。

 朝、日が登る頃、彼らは私を起こしに枕元にやって来ては〝ヌボォォォォ~〟と奇妙な声をあげて起こしてくれる。
 この叫びこそがマンドラゴラが恐れられる理由となる〝滅びの叫び〟なのだが、なんとも間抜けな叫び声である。
 最初の頃こそ毎度飛び起きたが、今では気持ちの良い目覚めを運んでくれている。
 
 寝床から抜け出し近くの井戸へ顔を洗いに行くと、彼らも当然ついて来て、そして水をかけてくれと毎度強請んでくる。
 不思議なのは自分たちだけで水浴びはせず、桶に水が入っていても必ず私にかけてくれと強請んでくる。
 仕方なく桶から掬って水をかけてやると、喜んで小躍りをするのだが、その姿がまた愛らしいのだ。

 普段午前中は、集めた魔物の資料をまとめているのだが、その時の彼らはおとなしい。
 何体もいた彼らも、いつの間にか数体だけを残して姿を消すのだ。
 
 一度、不思議に思った私は、彼らを探してみると、住居の屋根に膝を抱えて座っているのを見つけた。
 皆で固まり、日の光を浴びて緩んだ表情で座っていたのだ。
 人の姿(小人だが)と言えど、やはりマンドラゴラは植物系の魔物なのだと再認識したのだった。

 そうこうしているうちに昼を迎え、昼食を終え今日の探索の準備を始める頃、彼らは住居へ戻って来るのだが、ソワソワと落ち着きなく纏わり付いてくる。

 探索に誰を連れていくかを決めろと催促しているのだ。

 今でこそ数個のグループに分け、順番に連れて行っているのだが、それでも居残り組はなかなか離れてはくれない。
 
 最初の頃は本当に酷かった。
 全員でついてこようとするのだが、全員が私の肩や頭に乗ろうとしたのだ。流石に鬱陶しすぎて遠慮してもらう様にお願いしたが、今度は誰がついていくかで争いだしたのだ。

 危うく居住スペースが丸ごと吹き飛ぶところだった……。

 仕方なく〝くじ引き〟にしたこともあったが、何が気に入らなかったのか喧嘩を始める始末だった。
 結局、グループ分けでの当番制となり、担当のマンドラゴラ達が私の肩、頭、背嚢の上に座り、やっと出発ができるようになるのだった。

 探索時に進む方向は基本私が決めているが、細かいルートは彼らが指示してくれる。
 ありがたいことに私の言うことを理解しているらしく、観察したい魔物の所や、行きたい場所へ的確に辿り着き、迷ったことがない。

 だからと言って危険が無いわけではない。
 
 かなりの確率で魔獣の襲撃に遭うのだ……。
 その瞬間、彼らは最強の用心棒へと変貌する。この小さく可愛らしい姿からは想像できないくらいに。
 
 どれくらいか?

 私が魔物の襲撃を認識する前に終わっているのだ。

 〝ヌボォォ!!〟

 突然耳元で響く声に驚き、叫んだマンドラゴラがいる方向を見ると、円形に貫かれた様に空間が生まれているのだ。
 初めは何が起こったのか分からなかったが……ある時、魔物の足が残っているのを見て全てを理解できた。
 
 〝襲撃されていたのだと〟
 
 最初の頃は叫ばれるたびにひっくり返っていたが、今は「あ、襲撃だった?」と普通に先へ歩みを進めている。これが慣れだと思うと恐ろしく思う。
 ただ一つ、耳元で叫ばれているのに自分には何も影響が無いことは、調べるべきことだとは思っている。

 この大陸に来てまだ日が経っておらず、大陸の全容を分かっていない私は、基本的に住居スペースを中心に活動している。
 日没の前に居住スペースへ戻っているのだが、戻ると居残り組が小踊りで迎えてくれる
 最初の頃の一人で生活していた頃に比べると、賑やかすぎるが寂しさは無く無事に戻れた喜びを噛み締めている。

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