6 / 25
マンドラゴラ 〝クソッタレの小悪魔〟②
しおりを挟むそれからもマンドラゴラ達は私にまとわりついてきた。
恐怖で震える私などお構い無しに……私の何が気に入ったのかはわからないが、ここまで一緒にいると嫌でもわかる。
彼らが善良で、おとぎ話の中の様に怖い存在ではないと。今では何体ものマンドラゴラが私の住居に住み着いているのだ。
朝、日が登る頃、彼らは私を起こしに枕元にやって来ては〝ヌボォォォォ~〟と奇妙な声をあげて起こしてくれる。
この叫びこそがマンドラゴラが恐れられる理由となる〝滅びの叫び〟なのだが、なんとも間抜けな叫び声である。
最初の頃こそ毎度飛び起きたが、今では気持ちの良い目覚めを運んでくれている。
寝床から抜け出し近くの井戸へ顔を洗いに行くと、彼らも当然ついて来て、そして水をかけてくれと毎度強請んでくる。
不思議なのは自分たちだけで水浴びはせず、桶に水が入っていても必ず私にかけてくれと強請んでくる。
仕方なく桶から掬って水をかけてやると、喜んで小躍りをするのだが、その姿がまた愛らしいのだ。
普段午前中は、集めた魔物の資料をまとめているのだが、その時の彼らはおとなしい。
何体もいた彼らも、いつの間にか数体だけを残して姿を消すのだ。
一度、不思議に思った私は、彼らを探してみると、住居の屋根に膝を抱えて座っているのを見つけた。
皆で固まり、日の光を浴びて緩んだ表情で座っていたのだ。
人の姿(小人だが)と言えど、やはりマンドラゴラは植物系の魔物なのだと再認識したのだった。
そうこうしているうちに昼を迎え、昼食を終え今日の探索の準備を始める頃、彼らは住居へ戻って来るのだが、ソワソワと落ち着きなく纏わり付いてくる。
探索に誰を連れていくかを決めろと催促しているのだ。
今でこそ数個のグループに分け、順番に連れて行っているのだが、それでも居残り組はなかなか離れてはくれない。
最初の頃は本当に酷かった。
全員でついてこようとするのだが、全員が私の肩や頭に乗ろうとしたのだ。流石に鬱陶しすぎて遠慮してもらう様にお願いしたが、今度は誰がついていくかで争いだしたのだ。
危うく居住スペースが丸ごと吹き飛ぶところだった……。
仕方なく〝くじ引き〟にしたこともあったが、何が気に入らなかったのか喧嘩を始める始末だった。
結局、グループ分けでの当番制となり、担当のマンドラゴラ達が私の肩、頭、背嚢の上に座り、やっと出発ができるようになるのだった。
探索時に進む方向は基本私が決めているが、細かいルートは彼らが指示してくれる。
ありがたいことに私の言うことを理解しているらしく、観察したい魔物の所や、行きたい場所へ的確に辿り着き、迷ったことがない。
だからと言って危険が無いわけではない。
かなりの確率で魔獣の襲撃に遭うのだ……。
その瞬間、彼らは最強の用心棒へと変貌する。この小さく可愛らしい姿からは想像できないくらいに。
どれくらいか?
私が魔物の襲撃を認識する前に終わっているのだ。
〝ヌボォォ!!〟
突然耳元で響く声に驚き、叫んだマンドラゴラがいる方向を見ると、円形に貫かれた様に空間が生まれているのだ。
初めは何が起こったのか分からなかったが……ある時、魔物の足が残っているのを見て全てを理解できた。
〝襲撃されていたのだと〟
最初の頃は叫ばれるたびにひっくり返っていたが、今は「あ、襲撃だった?」と普通に先へ歩みを進めている。これが慣れだと思うと恐ろしく思う。
ただ一つ、耳元で叫ばれているのに自分には何も影響が無いことは、調べるべきことだとは思っている。
この大陸に来てまだ日が経っておらず、大陸の全容を分かっていない私は、基本的に住居スペースを中心に活動している。
日没の前に居住スペースへ戻っているのだが、戻ると居残り組が小踊りで迎えてくれる
最初の頃の一人で生活していた頃に比べると、賑やかすぎるが寂しさは無く無事に戻れた喜びを噛み締めている。
25
あなたにおすすめの小説
【流血】とある冒険者ギルドの会議がカオスだった件【沙汰】
一樹
ファンタジー
とある冒険者ギルド。
その建物内にある一室、【会議室】にてとある話し合いが行われた。
それは、とある人物を役立たずだからと追放したい者達と、当該人物達との話し合いの場だった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
失礼ながら殿下……私の目の前に姿を現すな!!
星野日菜
ファンタジー
転生したら……え? 前世で読んだ少女漫画のなか?
しかもヒロイン?
……あの王子変態すぎて嫌いだったんだけど……?
転生令嬢と国の第二王子のクエスチョンラブコメです。
本編完結済み
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる