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マンドラゴラ 〝クソッタレの小悪魔〟③
しおりを挟むそして就寝時間。
住居内の灯りは暖炉の火のみ。
残念ながら光源となる油の入手方法を知らない私は、夜間に何かをする気はなくすぐに寝ることにしている。
そうすると住居内のマンドラゴラも就寝の準備を始める。彼らの寝具は調査隊が置いて行ったコップや深皿である。
最初に一体のマンドラゴラが私のもとへ深皿を持ってきて土を詰めさせた。その姿を見た他のマンドラゴラ達も容器を探しては持ってきて土を詰めさせた。
しかし、今住んでいる数には容器の数は足りず、つたないなりに私自ら作成したのだった
今のところ文句は出ていないので満足してくれているのだろう。
彼らはそれぞれの容器の土の中へ器用に潜り込む。
頭の葉っぱ部分だけを残して潜り込むのだが、最初は呼吸ができているのか?大丈夫か?と思ったが、どうやら口で呼吸をしているのではないみたいだ。
まだまだ魔物達には未知なことが多いようだ。
このようにして、私と奇妙な同居人の一日は終わっていく。賑やかで飽きない日々。
この大陸に来てこんな生活ができるとは思っていなかった。
今はできるだけ、〝クソッタレ〟と呼ばれ恐れられているこの悪魔……いや愛くるしい小悪魔達との生活が続くことを願っている。
《補遺一》マンドラゴラの叫びについて
マンドラゴラの叫びは、一般には〝滅びの叫び〟と呼ばれ、全てを吹き飛ばす。
そこに分別などないと言い伝えられている。
だが、私の観察結果は、その俗説と大きく異なる。
私が共に生活している彼らの叫びは、少なくとも無差別ではない。
叫びが放たれる瞬間、度々私は至近距離にいながら、鼓膜の損傷も精神への影響も一切受けていない。
むしろ、今となっては目覚ましとして機能しているほどなのだ。
一方で、襲撃してきた魔獣に対しては、その叫びは即座に致死的な効果を発揮する。
空間が円形に穿たれる現象から推測するに、単なる音波、音系魔法ではなく、指向性を持った魔力干渉、あるいは空間そのものへの作用する空間魔法なのではないかと考えられる。
仮説ではあるが、マンドラゴラは「仲間」と「敵」を明確に区別しているのではないだろうか。
もしこれが事実であれば、彼らは極めて高度な判断能力を有する魔物であり、〝無差別殺戮の悪魔〟という評価は、再考されるべきだと私は考える。
《補遺二》私がマンドラゴラに選ばれた理由についての一考察
私の国では、マンドラゴラが人間に友好的であるという記録はない。
明確な敵だと言い伝えられていた。
そんな中、住居を共有し、行動を共にするなど前代未聞になるだろう。
私自身、なぜ彼らに気に入られたのかは未だに理解できていない。
ただし、いくつかの可能性については考察することにした。
第一に、敵意を向けなかったこと。
彼らと初めて遭遇した際、私は彼らがマンドラゴラと知らず、武器を取らず、追い払おうともせずに友好的に接した。
結果として、彼らは逃げることも、叫ぶこともせず、こちらの反応を観察していたように見えた。
第二に、彼らを「魔物」として扱わなかったこと。
その後、マンドラゴラと知っても、私は彼らを子供や小動物に接するのと同じ距離感で受け入れていた。
恐怖心はあったが、結果的にそれが彼らにとって無害な存在として認識された可能性がある。
第三に、大陸そのものとの関係性。
私はトレントの姫より、この大陸での滞在を許可されている。
もしかすると、マンドラゴラは大陸に根を張る植物系魔物として、「この地に拒まれていない人族」だと、本能的に感じ取ったのかもしれない。
最後に、最も考えたくないが否定できない仮説として、彼らが私を「保護対象」として選んだ可能性である。
探索時、彼らは私が危険を認識するよりも先に敵を排除する。それは護衛というより、幼体を守る行動にも近い。
力を持たない私は赤子で、彼らは親心で寄り添っているのかもしれない。
もしこのどれかの仮説が正しいとしても、私が彼らに気に入られたのではなく、彼らに〝選ばれた〟のだと考えるべきなのだろう。
いずれにせよ、この関係性がいつまで続くかは不明である。
私は今日も彼らを観察し、記録し、不用意に裏切らぬよう振る舞うしかない。
魔物データNo. FA-004(改訂)
種族名:マンドラゴラ
種族:植物系人型魔物
寿命:不明
身長:10~20cm
体重:300~500g
通称:〝クソッタレ〟あるいは〝クソッタレに悪魔〟、〝クソッタレの小悪魔〟
特記:子供のような容姿。気がつくといつの間にか側にいる。愛嬌があり嬉しいと小踊りする。恐れられているのが嘘のようだが、攻撃力は凄まじい。〝ヌボォォォォ!!〟っと叫んだだけで大抵の物は吹き消せる怖い存在である。
ちなみに、〝クソッタレ〟〝クソッタレの悪魔〟と通称をつけたのは、すでになくなった国の兵士達と言われている。
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