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分かり易い戦い
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旅を続ける事一か月。僕らは遂に、亜人の王都、『ヴァネロプ』へ到着した。
僕らは門番に身分証を見せ、闘技場へ案内してもらう。僕らは闘技場行きの馬車の中で、最後の話し合いをする。
「彼女の速さは異次元だ。初動を見逃すと、絶対に勝てない」
「私がバフを盛りまくって、大聖は雷系統の魔術で援護する。場合によっては、回避できない範囲攻撃をやる」
「私達前衛組は、彼女をなんとかして捉えて、攻撃を当てる。動きを止める」
「勝つ。勝って、元の世界へ帰る為の手掛かりを探す」
結局の所、僕らはここまでの一か月で、何も有効な事ができなかった。というか、やりようが無かった。何一つとして情報が無い相手が故に、対策を立てられる訳が無い。僕らはそんな状態で、この町へ来たのだ。
闘技場までは、そんなに遠くなかったようで、十分もしない内に、僕らは馬車から出るように言われた。降りると、巨大な建造物が目に飛び込んで来る。ここが闘技場。僕らの戦いの舞台。
僕らは案内されるまま中に入った。やはり、彼女が待っていた。
「来たか」
「呼んだのは貴女でしょう?来ますよ」
彼女は、一先ず今だけは、戦う気は無いようだ。それだけ、彼女にとっての『決闘』に、大きな意味があると考えて良いだろう。
「アタシから逃げられたのは、アンタが初めてだったよ。運か実力か……」
「僕らの国には、『運も実力の内』という言葉があるんですよ」
僕がそう言うと、彼女は「よく口の回る奴だ」と言って、どこかへ歩いて行った。本当に何をしに来たんだ。
僕らが案内された先は、待合室のような場所だった。伝言だが、『ここで一日待機して、長旅の疲れを癒せ』との事だった。『正々堂々』という言葉への真剣さか、単なる余裕の表れか。まあ、助かる事に変わりは無い。一日休んで、明日に備えよう。
「あの人、怖えな」
「強い。それが分かるような、なんだろう……『圧』があった」
「一回殴られただけだったけど、あの時、力の差をこれでもかと言う程感じたよ」
「でも、やるしか無いわ。ここまで来たら、最後まで私達を貫きましょう」
僕らは、その日は早く寝て、これまでの疲れを取る事にした。そこそこ柔らかいベッドだったからか、よく眠れた。
翌日。僕らを待っていたのは、とんでもない数の観衆と、激しい歓声だった。
「こ……これって……」
「見世物か。古代ローマ人かよ」
「気圧されないように気を付けるわよ」
「ああ。絶対に勝つ」
そんな事を言っている内に、相手が向かいの扉から出て来た。僕らの対戦相手、この旅の、一つのチェックポイント。彼女が完全に姿を現すと、司会らしき人の声が聞こえて来た。
『生かすも殺すも自由!魔術、武器、人数、その他の制限一切無し!ルール無用のデスマッチ!レディ~』
僕らと彼女は同時に構え、僕らは自分達にバフを掛ける。
『ファイト!』
そう宣言され、同時に銅鑼のような音が会場に響き渡ると同時に、彼女は僕らと距離を詰めて来た。僕はそれを間一髪で受け止め、そのまま動きを止めようとする。
しかし、とんでもないスピードが乗せられたその拳は、僕の体をいとも簡単に弾き飛ばした。僕は壁に衝突し、そのまま動けなくなる……これがもし、一か月前の僕らなら。
僕はその場に踏み止まり、一瞬、彼女の体をその場に留める。その隙を見て、諒子と大聖は、同時に攻撃を仕掛ける。彼女はそれを躱し、一旦距離を取る。
「へえ。成長してるんだ」
「今はあの時と違って、仲間が居る。前とは違いますよ」
その会話を終えるのと、彼女が再び移動するのは、ほぼ同時だった。次に彼女が現れたのは、後衛、それも忍さんの真後ろだった。
忍さんは、僕らの中で最もバフ、他者の治癒に長けている。それを即座に察したのだろう。即潰しに掛かるとは、中々エグい。
だが、それも防げる。諒子は可能な限りの速さで、彼女の首に刃を振る。それも彼女には届かない。
「アンタも中々速いね!やられるかと思ったよ!」
「この面子で、一番早いのが私よ。貴女の速度なら、バフ込みなら反応できる」
会話を遮るように、大聖が魔術を放った。紫電が彼女に向かって、一直線に飛んで行く。彼女もそれに反応し、半身になって避ける。
「会話の途中だ。そんな感じじゃ、女にモテないよ?」
「生憎と、一途な彼女を持ってるんでね」
大聖は攻撃魔術、取り分け、炎、雷系統の魔術が得意だ。炎は攻撃力が高く、雷は攻撃速度が速い。大聖は相手、場合に合わせて、この二つを使い分ける。
本来、雷系統の魔術は、不意打ちを避けられるような物じゃない。その速度は、ボウガンから放たれる矢よりも、数段早い。弾丸とか、そういうレベルの速さ。それを避けられる辺り、彼女の身体能力、動体視力の高さが窺がえる。
彼女は再び踏み込み、僕に向かって大きく飛ぶ。彼女の拳に合わせて、僕は右腕のガントレットを差し出す。僕らの拳は正面からぶつかり、とんでもない衝撃が腕に伝わる。僕はそのまま拳を振り抜き、彼女の体を弾く。
「怪力かよ!」
「一応力自慢。バフ込みだけどね!」
僕らは畳み掛けるように、攻撃を重ねる。こんなチャンスは二度と無いかも知れない。
ここで決める。行ける。四人なら。倒せる。勝てる。
僕らはそれぞれの方法で、彼女に刃を向ける。彼女の首に刃が当たる。首の薄皮を切り裂き、赤い血が僅かに滲む。
僕らが吹き飛ばされたのは、その一瞬の事だった。
刹那。僕らが見た物は、彼女の首の傷から、静かな魔力が溢れた光だった。僕らは次の瞬間、体を吹き飛ばす程の、まるで、手榴弾が直撃したような、そんな衝撃が体に伝わる。僕らはその衝撃で、気を失った。
一番最初に目を覚ましたのは、どうやら僕のようだった。僕の目の前には、彼女が立っている。その姿は先程とは違い、全身に水、或いは静かな風のような魔力を纏った、神秘的、幻想的な姿だった。
「決着……で良いよな?」
バフは解けている。僕以外の三人は気を失っているままらしい。僕一人で勝てるか?いや、バフありきでアレだったのだ。勝てるとは思えない。
詰んだ。
「アタシの仕事は、アンタらを亜人王様の所まで送り届ける事だ。このまま拘束させてもらう」
いや。まだだ。まだ負けてない。僕は右腕のガントレットを構え、彼女の腹に狙いを定める。彼女は反応していたが、縄を取り出そうとしている体勢からは、この攻撃を避けられない。僕はガントレットに魔力を流し、衝撃波を使う。彼女の体は少し吹き飛び、僕はその一瞬で距離を取る。
しかし、彼女はそれだけでどうこうなってくれるような人じゃなかった。着地と同時に地面を蹴った彼女の姿は、既に僕の目の前まで来ていた。彼女は僕の右腕を掴み、そのまま握り潰す。激痛が走り、僕は地面に倒れ込む。
「ソレ、魔道具だったんだ。面倒だったし、潰させてもらったよ」
「その……力……」
本来、魔族以外の亜人は魔力を扱わない。彼女の特徴を見た感じ、長耳族だろう。なのに、アレは間違い無く魔力だ。つまり、考えられる可能性は一つ。
「魔法……かな?」
「ご名答。ま、分かった所でどうこうできる訳でもないだろうけど」
どうする?魔法に対抗できる手段は?近接戦?いや、彼女の方が強い。近接で戦った所で、簡単に潰されるのがオチだろう。魔術?いや、僕は魔術に長けている訳じゃない。そもそも、魔術は基本的に、魔法の劣化でしかない。対抗手段にすらならない。
どうする?対抗手段は?考えろ。止めるな。諦めるな。
「諦めなよ、人殺し」
その言葉を聞いた瞬間、僕は全身から血の気が抜けるのを感じた。
「なんで……それを……」
そう聞くと、彼女は懐から、一つの瓶を取り出した。
「コレ、人殺しにだけ効く薬。迷宮産で、仕組みはよく分かってない。前に薬を使った時、アンタら四人の中でアンタだけが倒れた。そこで分かったんだよ。まさか全員、人を殺した経験も無しに、ここまで来てたとは思わなかったよ」
その言葉でさえ、僕の耳には入っていなかった。焦りで喉がひりつく。頭が痛い。考えたくない。逃げてしまいたかった。忘れられなくても良いから、あそこではないどこかへ。
僕は気が付くと、彼女の腕を振り払って、逃げ出そうとしていた。きっと『火事場の馬鹿力』という奴だろう。僕はこの時、自分でも信じられないような力を出していたと思う。
「おいおい逃げないでくれよ。勝敗は決した。これ以上長引かせても、観客が冷めるだけだ」
僕はハッとして、観客席を見る。皆、何か嫌な、汚い、醜い物を見ているような目だった。あの目には覚えがある。何度も見た。何度もこの視線を浴びた。
『君は悪くない』
「やめてくれ!」
『お前が殺した』
「待ってくれ!」
僕は割れるような痛みを持った頭を抱えた。
『人殺し!』
「助けてくれ!」
『アンタが悪い!』
「嫌だ!」
考えるのも嫌な事が、次々と頭に浮かんで来る。
『アンタが!アンタさえ!』
「まだ!皆に!」
『死んでしまえ!』
「謝ってない!」
罪悪感と後悔と、よく分からない醜い物が、湧き上がって来る。
錯乱する僕に、まるで気付けだとでも言わんばかりに、彼女が拳を食らわせる。痛みが体中を走り、意外にも意識がハッキリする。自分でも恐ろしくなる程、思考が明瞭になる。
そうだ。僕は、彼女を倒さなければ。今の僕にできる事を総動員しろ。魔術。魔法への対抗。武器。
僕は殆ど動かない腕に魔力を流し、衝撃波を放つ。今度は彼女へではなく、地面に。衝撃波は地面に直撃し、砂が舞い上がる。
「目潰しか!」
僕は、一瞬目を覆った彼女の胸に目掛けて、剣を突き立てる。瞬間、彼女もそれに反応し、拳を繰り出す。
どちらが早いかなんて、分かり切っている事だ。だから僕は、一つの策を講じた。彼女の拳が僕に直撃する事はなく、僕の剣が、彼女の胸を貫く。赤い血が噴き出て、彼女が途切れ途切れに言葉を発する。
「なんで……どうやって……」
「盾を使ったんですよ。特注のね」
僕はそう言って、一枚の皿を彼女に見せた。ただの皿ではない。僕が女神から与えられた、『絶対に傷付かない皿』だ。僕はこれで彼女の拳を受け止め、彼女の体を串刺しにした。
ただ、直撃を避けたというだけの事で、魔術でなんとか動かせる程度に直した僕の右腕は、また砕けた。僕の魔術じゃ治せないなコレは、後で忍さんに頼もう。
これで勝ちだ。僕らの勝ちだ。彼女は死んでしまうだろうか。僕の魔術では気休めにしかならない。延命すらままならないだろう。僕は一先ず忍さんを起こす為に、後ろを振り向いた。
その瞬間、僕の体は吹き飛んだ。
何が起こった。増援?いや、彼女以外の敵意は見当たらなかった。ならばテロ?それも無い。ここは警備システムが厳しいらしい。そんなのは無理だろう。
ならば、考えられるのは一つだけ。僕は彼女が立っていた筈の方向を振り向いた。僕の右腕が千切られたのは、それとほぼ同時だった。骨折とは比べ物にならない痛みが、僕の体を貫く。
「立場が逆転したな」
「どうやって……傷を塞いだんですか……」
彼女の胸元を見ると、先程付けた筈の傷が消えていた。驚きを隠そうともしない僕に、彼女が話す。
「魔法は、言うなれば人間が辿り着いた、『神の権能』。串刺しじゃ死なないさ」
「じゃあ……どうしろって……言うんですか……」
そう聞く僕の無い右腕を、彼女が思い切り蹴り飛ばす。痛い。辛い。死んでしまう。いや、元々そういう『見世物』だ。嫌だ。せめて一言。もう一言。
「久々に怒ったよ。決めた。アンタだけは今、ここで殺す」
そう言って彼女は、鋭い刃物のような形にした魔力を、僕の心臓に突き立てる。
刹那。僕の頭に、これまでの人生の全てが思い浮かぶ。昔見た夕暮れ、小学校のクラスメイト、母親と見た教育番組、祖母の葬式。走馬灯という奴だろう。迫りくる死を回避する為の、『答え』を探す為の行動だ。
生き残る方法。生き延びるのではなく生き残る。勝って、皆と、元の世界に帰る方法を考えろ。考えろ。答え。僕の人生を総動員しろ。何の為の一生だ。生きる。生き残る。勝つ。どうする。どうやって……
全てがスローモーションに感じる。それでも、物は動き続ける。魔力の刃が僕の鎧を砕き、僕の体に直接突き立てられる。さっき僕がやった事が、そのまま僕の体に再現される。僕は生き残る術を考えながら、死が近付くのを感じている。
刃が全ての障壁を破壊して、僕の体に直接当たる。その場に居た全ての人間が、僕の死を確信した。
あの三人を除いては。
スローモーションの光景の中で、彼女の首に、見慣れた刃が近付くのが見えた。諒子の刀だ。諒子の最高速度が乗った一撃は、彼女の体をよろけさせた。
「今よ!」
「爆発!」
諒子の合図をほぼ同時に、彼女の首から上が、爆風で包まれる。大聖の魔術だ。諒子ががら空きの胴体を蹴り、僕と彼女を引き離す。その間に僕の体は、見る見る内に回復して行った。これは、忍さんの魔術だ。
「皆!」
「ゴメンね。『人殺し』って呼ばれてたから、それについての話を聞こうと、気絶した振りしてた。不意打ちには成功したけど、アレじゃ効かないよね」
「彼女が使ってるのは『魔法』だ!並の魔術じゃ牽制にもならない!」
僕がそう言うと、忍さんは彼女の方を睨み、それから直ぐに僕の方を向いた。
「今は動かないで!右腕は無理だけど、左腕だけでも治すから!」
「やらせるとでも!?」
彼女の刃が、再び僕に向けられる。だが、今の僕には頼れる仲間が居る。彼女の体は再び、僕から引き離された。
「「こっちの台詞だ!」」
「青二才があ……!」
その間に、僕の体はすっかり元通りになった。僕は忍さんにバフを掛けてもらって、再び彼女に向かって行く。
「俺の魔術なら魔法にも対抗できる!先に俺らを縛らなかった事、後悔させてやる!」
「ほざけ!このどさくさで、アタシをどうこうする術が無い癖によく言う!」
僕は左腕を構え、彼女の方に走って行く。
「私達にはね!」
「ああん!?」
諒子の言葉の意味に気付いた彼女は、僕の方を見た。だが、時既に遅し。僕は構えていた拳を繰り出し、彼女の顔面を思い切り殴る。彼女の頬が弾け飛び、赤色の肉片が辺りに飛び散る。
「僕の力なら、貴女にも攻撃が通る!」
僕は畳み掛けるように、彼女に拳を、蹴りを浴びせ続ける。諒子はそれを補助するように、或いは相手の命を削るように、彼女の四肢を切り落とし続ける。大聖は彼女に、絶え間なく魔術を当て続ける。忍さんは僕らに継続回復を与え、僕らが全力を出す土台を作る。全て、僕らの力だ。最初から一人じゃ敵わないと分かっていた。だからこそ、この機会を待った。
「「「「勝つ!」」」」
「負けて堪るかあ!」
彼女も声を張り上げるが、それでも僕らの攻撃に耐えるのが限界だ。忍さんが光の十字で彼女の行動を制限したタイミングで、僕らは留めを打つための行動を取る。僕は再び拳を構え、全力の一撃を繰り出す。諒子は一度刀を鞘に納め、居合を体勢を取る。大聖は魔法陣を描き、魔術を放つ。
「十字鎖!」「鉄拳……」「居合……」「槍……」
「くそがあああああああ!」
「制裁!」「抜刀!」「連弾!」
僕らの攻撃は、それぞれが技を打った場所の体を消し飛ばした。彼女も気を失い、手足が再生しながらも、その場に倒れ込んだ。それを見届けた司会者は、試合の勝者を叫ぶ。
『勝者!勇者一行!我らが四天王を破り、望みをかなえる権利を勝ち取りました!』
瞬間、観衆の間から、どっと声が上がる。喜ぶ声、勝者を称える声、項垂れる声、今後を案ずる声。様々な声が、思いが、どっと沸き上がる。
僕らは自身の勝利を噛み締め、大きくハイタッチをした。その瞬間だった。観衆の声が止んだのは。
「己……貴様等……」
なんと、彼女から声がしたのである。気絶していた筈の彼女は起き上がり、消えていた筈の体は再生していた。だが全快とは言えない状態で、彼女は僕らを睨んでいた。僕らは再び構え、彼女の行動を見張る。
「こうなったら……いっその事……」
そう言った彼女の心臓に、魔力が集まって行くのを感じた。大聖が咄嗟に手を伸ばす。
「まずい!止めろ!」
「アタシごと自爆してやる!」
そう言った彼女の魔力が、心臓から解き放たれる事は無かった。僕の隣では、忍さんが杖を構えて、何かの魔法陣を描いていた。
「魔力操作。私がこっちで作った魔術。さっきからずっと、貴女の魔力を散らしながら、デバフを掛け続けていました。貴女には今、何もできる事はありません」
忍さんの恐ろしい所は、こういう所だ。自分以外の誰も気付かない所で、着々と下準備を進める。僕の打撃が効いたのも、諒子の斬撃が効いたのも、大聖の魔術が効いたのも、全て忍さんの下準備あっての事だ。こういう所に何度も助けられた。
全ての魔力が消えた彼女は、白目を剥いて倒れた。観衆も僕らも、この戦いの勝者を確信し、大きく声を上げた。僕らは喜びを全身で感じながら、次の事を考えていた。
次は、僕の話をしよう。
僕らは門番に身分証を見せ、闘技場へ案内してもらう。僕らは闘技場行きの馬車の中で、最後の話し合いをする。
「彼女の速さは異次元だ。初動を見逃すと、絶対に勝てない」
「私がバフを盛りまくって、大聖は雷系統の魔術で援護する。場合によっては、回避できない範囲攻撃をやる」
「私達前衛組は、彼女をなんとかして捉えて、攻撃を当てる。動きを止める」
「勝つ。勝って、元の世界へ帰る為の手掛かりを探す」
結局の所、僕らはここまでの一か月で、何も有効な事ができなかった。というか、やりようが無かった。何一つとして情報が無い相手が故に、対策を立てられる訳が無い。僕らはそんな状態で、この町へ来たのだ。
闘技場までは、そんなに遠くなかったようで、十分もしない内に、僕らは馬車から出るように言われた。降りると、巨大な建造物が目に飛び込んで来る。ここが闘技場。僕らの戦いの舞台。
僕らは案内されるまま中に入った。やはり、彼女が待っていた。
「来たか」
「呼んだのは貴女でしょう?来ますよ」
彼女は、一先ず今だけは、戦う気は無いようだ。それだけ、彼女にとっての『決闘』に、大きな意味があると考えて良いだろう。
「アタシから逃げられたのは、アンタが初めてだったよ。運か実力か……」
「僕らの国には、『運も実力の内』という言葉があるんですよ」
僕がそう言うと、彼女は「よく口の回る奴だ」と言って、どこかへ歩いて行った。本当に何をしに来たんだ。
僕らが案内された先は、待合室のような場所だった。伝言だが、『ここで一日待機して、長旅の疲れを癒せ』との事だった。『正々堂々』という言葉への真剣さか、単なる余裕の表れか。まあ、助かる事に変わりは無い。一日休んで、明日に備えよう。
「あの人、怖えな」
「強い。それが分かるような、なんだろう……『圧』があった」
「一回殴られただけだったけど、あの時、力の差をこれでもかと言う程感じたよ」
「でも、やるしか無いわ。ここまで来たら、最後まで私達を貫きましょう」
僕らは、その日は早く寝て、これまでの疲れを取る事にした。そこそこ柔らかいベッドだったからか、よく眠れた。
翌日。僕らを待っていたのは、とんでもない数の観衆と、激しい歓声だった。
「こ……これって……」
「見世物か。古代ローマ人かよ」
「気圧されないように気を付けるわよ」
「ああ。絶対に勝つ」
そんな事を言っている内に、相手が向かいの扉から出て来た。僕らの対戦相手、この旅の、一つのチェックポイント。彼女が完全に姿を現すと、司会らしき人の声が聞こえて来た。
『生かすも殺すも自由!魔術、武器、人数、その他の制限一切無し!ルール無用のデスマッチ!レディ~』
僕らと彼女は同時に構え、僕らは自分達にバフを掛ける。
『ファイト!』
そう宣言され、同時に銅鑼のような音が会場に響き渡ると同時に、彼女は僕らと距離を詰めて来た。僕はそれを間一髪で受け止め、そのまま動きを止めようとする。
しかし、とんでもないスピードが乗せられたその拳は、僕の体をいとも簡単に弾き飛ばした。僕は壁に衝突し、そのまま動けなくなる……これがもし、一か月前の僕らなら。
僕はその場に踏み止まり、一瞬、彼女の体をその場に留める。その隙を見て、諒子と大聖は、同時に攻撃を仕掛ける。彼女はそれを躱し、一旦距離を取る。
「へえ。成長してるんだ」
「今はあの時と違って、仲間が居る。前とは違いますよ」
その会話を終えるのと、彼女が再び移動するのは、ほぼ同時だった。次に彼女が現れたのは、後衛、それも忍さんの真後ろだった。
忍さんは、僕らの中で最もバフ、他者の治癒に長けている。それを即座に察したのだろう。即潰しに掛かるとは、中々エグい。
だが、それも防げる。諒子は可能な限りの速さで、彼女の首に刃を振る。それも彼女には届かない。
「アンタも中々速いね!やられるかと思ったよ!」
「この面子で、一番早いのが私よ。貴女の速度なら、バフ込みなら反応できる」
会話を遮るように、大聖が魔術を放った。紫電が彼女に向かって、一直線に飛んで行く。彼女もそれに反応し、半身になって避ける。
「会話の途中だ。そんな感じじゃ、女にモテないよ?」
「生憎と、一途な彼女を持ってるんでね」
大聖は攻撃魔術、取り分け、炎、雷系統の魔術が得意だ。炎は攻撃力が高く、雷は攻撃速度が速い。大聖は相手、場合に合わせて、この二つを使い分ける。
本来、雷系統の魔術は、不意打ちを避けられるような物じゃない。その速度は、ボウガンから放たれる矢よりも、数段早い。弾丸とか、そういうレベルの速さ。それを避けられる辺り、彼女の身体能力、動体視力の高さが窺がえる。
彼女は再び踏み込み、僕に向かって大きく飛ぶ。彼女の拳に合わせて、僕は右腕のガントレットを差し出す。僕らの拳は正面からぶつかり、とんでもない衝撃が腕に伝わる。僕はそのまま拳を振り抜き、彼女の体を弾く。
「怪力かよ!」
「一応力自慢。バフ込みだけどね!」
僕らは畳み掛けるように、攻撃を重ねる。こんなチャンスは二度と無いかも知れない。
ここで決める。行ける。四人なら。倒せる。勝てる。
僕らはそれぞれの方法で、彼女に刃を向ける。彼女の首に刃が当たる。首の薄皮を切り裂き、赤い血が僅かに滲む。
僕らが吹き飛ばされたのは、その一瞬の事だった。
刹那。僕らが見た物は、彼女の首の傷から、静かな魔力が溢れた光だった。僕らは次の瞬間、体を吹き飛ばす程の、まるで、手榴弾が直撃したような、そんな衝撃が体に伝わる。僕らはその衝撃で、気を失った。
一番最初に目を覚ましたのは、どうやら僕のようだった。僕の目の前には、彼女が立っている。その姿は先程とは違い、全身に水、或いは静かな風のような魔力を纏った、神秘的、幻想的な姿だった。
「決着……で良いよな?」
バフは解けている。僕以外の三人は気を失っているままらしい。僕一人で勝てるか?いや、バフありきでアレだったのだ。勝てるとは思えない。
詰んだ。
「アタシの仕事は、アンタらを亜人王様の所まで送り届ける事だ。このまま拘束させてもらう」
いや。まだだ。まだ負けてない。僕は右腕のガントレットを構え、彼女の腹に狙いを定める。彼女は反応していたが、縄を取り出そうとしている体勢からは、この攻撃を避けられない。僕はガントレットに魔力を流し、衝撃波を使う。彼女の体は少し吹き飛び、僕はその一瞬で距離を取る。
しかし、彼女はそれだけでどうこうなってくれるような人じゃなかった。着地と同時に地面を蹴った彼女の姿は、既に僕の目の前まで来ていた。彼女は僕の右腕を掴み、そのまま握り潰す。激痛が走り、僕は地面に倒れ込む。
「ソレ、魔道具だったんだ。面倒だったし、潰させてもらったよ」
「その……力……」
本来、魔族以外の亜人は魔力を扱わない。彼女の特徴を見た感じ、長耳族だろう。なのに、アレは間違い無く魔力だ。つまり、考えられる可能性は一つ。
「魔法……かな?」
「ご名答。ま、分かった所でどうこうできる訳でもないだろうけど」
どうする?魔法に対抗できる手段は?近接戦?いや、彼女の方が強い。近接で戦った所で、簡単に潰されるのがオチだろう。魔術?いや、僕は魔術に長けている訳じゃない。そもそも、魔術は基本的に、魔法の劣化でしかない。対抗手段にすらならない。
どうする?対抗手段は?考えろ。止めるな。諦めるな。
「諦めなよ、人殺し」
その言葉を聞いた瞬間、僕は全身から血の気が抜けるのを感じた。
「なんで……それを……」
そう聞くと、彼女は懐から、一つの瓶を取り出した。
「コレ、人殺しにだけ効く薬。迷宮産で、仕組みはよく分かってない。前に薬を使った時、アンタら四人の中でアンタだけが倒れた。そこで分かったんだよ。まさか全員、人を殺した経験も無しに、ここまで来てたとは思わなかったよ」
その言葉でさえ、僕の耳には入っていなかった。焦りで喉がひりつく。頭が痛い。考えたくない。逃げてしまいたかった。忘れられなくても良いから、あそこではないどこかへ。
僕は気が付くと、彼女の腕を振り払って、逃げ出そうとしていた。きっと『火事場の馬鹿力』という奴だろう。僕はこの時、自分でも信じられないような力を出していたと思う。
「おいおい逃げないでくれよ。勝敗は決した。これ以上長引かせても、観客が冷めるだけだ」
僕はハッとして、観客席を見る。皆、何か嫌な、汚い、醜い物を見ているような目だった。あの目には覚えがある。何度も見た。何度もこの視線を浴びた。
『君は悪くない』
「やめてくれ!」
『お前が殺した』
「待ってくれ!」
僕は割れるような痛みを持った頭を抱えた。
『人殺し!』
「助けてくれ!」
『アンタが悪い!』
「嫌だ!」
考えるのも嫌な事が、次々と頭に浮かんで来る。
『アンタが!アンタさえ!』
「まだ!皆に!」
『死んでしまえ!』
「謝ってない!」
罪悪感と後悔と、よく分からない醜い物が、湧き上がって来る。
錯乱する僕に、まるで気付けだとでも言わんばかりに、彼女が拳を食らわせる。痛みが体中を走り、意外にも意識がハッキリする。自分でも恐ろしくなる程、思考が明瞭になる。
そうだ。僕は、彼女を倒さなければ。今の僕にできる事を総動員しろ。魔術。魔法への対抗。武器。
僕は殆ど動かない腕に魔力を流し、衝撃波を放つ。今度は彼女へではなく、地面に。衝撃波は地面に直撃し、砂が舞い上がる。
「目潰しか!」
僕は、一瞬目を覆った彼女の胸に目掛けて、剣を突き立てる。瞬間、彼女もそれに反応し、拳を繰り出す。
どちらが早いかなんて、分かり切っている事だ。だから僕は、一つの策を講じた。彼女の拳が僕に直撃する事はなく、僕の剣が、彼女の胸を貫く。赤い血が噴き出て、彼女が途切れ途切れに言葉を発する。
「なんで……どうやって……」
「盾を使ったんですよ。特注のね」
僕はそう言って、一枚の皿を彼女に見せた。ただの皿ではない。僕が女神から与えられた、『絶対に傷付かない皿』だ。僕はこれで彼女の拳を受け止め、彼女の体を串刺しにした。
ただ、直撃を避けたというだけの事で、魔術でなんとか動かせる程度に直した僕の右腕は、また砕けた。僕の魔術じゃ治せないなコレは、後で忍さんに頼もう。
これで勝ちだ。僕らの勝ちだ。彼女は死んでしまうだろうか。僕の魔術では気休めにしかならない。延命すらままならないだろう。僕は一先ず忍さんを起こす為に、後ろを振り向いた。
その瞬間、僕の体は吹き飛んだ。
何が起こった。増援?いや、彼女以外の敵意は見当たらなかった。ならばテロ?それも無い。ここは警備システムが厳しいらしい。そんなのは無理だろう。
ならば、考えられるのは一つだけ。僕は彼女が立っていた筈の方向を振り向いた。僕の右腕が千切られたのは、それとほぼ同時だった。骨折とは比べ物にならない痛みが、僕の体を貫く。
「立場が逆転したな」
「どうやって……傷を塞いだんですか……」
彼女の胸元を見ると、先程付けた筈の傷が消えていた。驚きを隠そうともしない僕に、彼女が話す。
「魔法は、言うなれば人間が辿り着いた、『神の権能』。串刺しじゃ死なないさ」
「じゃあ……どうしろって……言うんですか……」
そう聞く僕の無い右腕を、彼女が思い切り蹴り飛ばす。痛い。辛い。死んでしまう。いや、元々そういう『見世物』だ。嫌だ。せめて一言。もう一言。
「久々に怒ったよ。決めた。アンタだけは今、ここで殺す」
そう言って彼女は、鋭い刃物のような形にした魔力を、僕の心臓に突き立てる。
刹那。僕の頭に、これまでの人生の全てが思い浮かぶ。昔見た夕暮れ、小学校のクラスメイト、母親と見た教育番組、祖母の葬式。走馬灯という奴だろう。迫りくる死を回避する為の、『答え』を探す為の行動だ。
生き残る方法。生き延びるのではなく生き残る。勝って、皆と、元の世界に帰る方法を考えろ。考えろ。答え。僕の人生を総動員しろ。何の為の一生だ。生きる。生き残る。勝つ。どうする。どうやって……
全てがスローモーションに感じる。それでも、物は動き続ける。魔力の刃が僕の鎧を砕き、僕の体に直接突き立てられる。さっき僕がやった事が、そのまま僕の体に再現される。僕は生き残る術を考えながら、死が近付くのを感じている。
刃が全ての障壁を破壊して、僕の体に直接当たる。その場に居た全ての人間が、僕の死を確信した。
あの三人を除いては。
スローモーションの光景の中で、彼女の首に、見慣れた刃が近付くのが見えた。諒子の刀だ。諒子の最高速度が乗った一撃は、彼女の体をよろけさせた。
「今よ!」
「爆発!」
諒子の合図をほぼ同時に、彼女の首から上が、爆風で包まれる。大聖の魔術だ。諒子ががら空きの胴体を蹴り、僕と彼女を引き離す。その間に僕の体は、見る見る内に回復して行った。これは、忍さんの魔術だ。
「皆!」
「ゴメンね。『人殺し』って呼ばれてたから、それについての話を聞こうと、気絶した振りしてた。不意打ちには成功したけど、アレじゃ効かないよね」
「彼女が使ってるのは『魔法』だ!並の魔術じゃ牽制にもならない!」
僕がそう言うと、忍さんは彼女の方を睨み、それから直ぐに僕の方を向いた。
「今は動かないで!右腕は無理だけど、左腕だけでも治すから!」
「やらせるとでも!?」
彼女の刃が、再び僕に向けられる。だが、今の僕には頼れる仲間が居る。彼女の体は再び、僕から引き離された。
「「こっちの台詞だ!」」
「青二才があ……!」
その間に、僕の体はすっかり元通りになった。僕は忍さんにバフを掛けてもらって、再び彼女に向かって行く。
「俺の魔術なら魔法にも対抗できる!先に俺らを縛らなかった事、後悔させてやる!」
「ほざけ!このどさくさで、アタシをどうこうする術が無い癖によく言う!」
僕は左腕を構え、彼女の方に走って行く。
「私達にはね!」
「ああん!?」
諒子の言葉の意味に気付いた彼女は、僕の方を見た。だが、時既に遅し。僕は構えていた拳を繰り出し、彼女の顔面を思い切り殴る。彼女の頬が弾け飛び、赤色の肉片が辺りに飛び散る。
「僕の力なら、貴女にも攻撃が通る!」
僕は畳み掛けるように、彼女に拳を、蹴りを浴びせ続ける。諒子はそれを補助するように、或いは相手の命を削るように、彼女の四肢を切り落とし続ける。大聖は彼女に、絶え間なく魔術を当て続ける。忍さんは僕らに継続回復を与え、僕らが全力を出す土台を作る。全て、僕らの力だ。最初から一人じゃ敵わないと分かっていた。だからこそ、この機会を待った。
「「「「勝つ!」」」」
「負けて堪るかあ!」
彼女も声を張り上げるが、それでも僕らの攻撃に耐えるのが限界だ。忍さんが光の十字で彼女の行動を制限したタイミングで、僕らは留めを打つための行動を取る。僕は再び拳を構え、全力の一撃を繰り出す。諒子は一度刀を鞘に納め、居合を体勢を取る。大聖は魔法陣を描き、魔術を放つ。
「十字鎖!」「鉄拳……」「居合……」「槍……」
「くそがあああああああ!」
「制裁!」「抜刀!」「連弾!」
僕らの攻撃は、それぞれが技を打った場所の体を消し飛ばした。彼女も気を失い、手足が再生しながらも、その場に倒れ込んだ。それを見届けた司会者は、試合の勝者を叫ぶ。
『勝者!勇者一行!我らが四天王を破り、望みをかなえる権利を勝ち取りました!』
瞬間、観衆の間から、どっと声が上がる。喜ぶ声、勝者を称える声、項垂れる声、今後を案ずる声。様々な声が、思いが、どっと沸き上がる。
僕らは自身の勝利を噛み締め、大きくハイタッチをした。その瞬間だった。観衆の声が止んだのは。
「己……貴様等……」
なんと、彼女から声がしたのである。気絶していた筈の彼女は起き上がり、消えていた筈の体は再生していた。だが全快とは言えない状態で、彼女は僕らを睨んでいた。僕らは再び構え、彼女の行動を見張る。
「こうなったら……いっその事……」
そう言った彼女の心臓に、魔力が集まって行くのを感じた。大聖が咄嗟に手を伸ばす。
「まずい!止めろ!」
「アタシごと自爆してやる!」
そう言った彼女の魔力が、心臓から解き放たれる事は無かった。僕の隣では、忍さんが杖を構えて、何かの魔法陣を描いていた。
「魔力操作。私がこっちで作った魔術。さっきからずっと、貴女の魔力を散らしながら、デバフを掛け続けていました。貴女には今、何もできる事はありません」
忍さんの恐ろしい所は、こういう所だ。自分以外の誰も気付かない所で、着々と下準備を進める。僕の打撃が効いたのも、諒子の斬撃が効いたのも、大聖の魔術が効いたのも、全て忍さんの下準備あっての事だ。こういう所に何度も助けられた。
全ての魔力が消えた彼女は、白目を剥いて倒れた。観衆も僕らも、この戦いの勝者を確信し、大きく声を上げた。僕らは喜びを全身で感じながら、次の事を考えていた。
次は、僕の話をしよう。
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