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ウエスタンな異世界
約束
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屋敷の中をウロウロと動物園の檻の中のライオンのように歩き回る太った貴族は待っていた。
「まだか……まだか……?」
チラッと時計を見てはまたウロウロと歩き始めた。
「だ、旦那様、お世継ぎ様が見ていらっしゃいます……」
「うぅむ……」
貴族は唸って椅子に座ると脚をユサリ始めた。
「まだか……どれだけたった?」
「出ていらっしゃってから、半日になります」
「むぅ……」
「腕は確かなようですし、ご心配の必要は無いかと」
「分かっておる、分かっておる、しかしだな……」
すると、屋敷の入り口をノックする音が聞こえた。
「……」
屋敷の主人は無言でメイドに目配せをすると、メイドにドアを開けさせ自分は銃を構えた。
「はい?」
「私達だ、合言葉は『ビーフステーキ』だ」
メイドは無言で扉を開くと、主人は銃を下ろすと明日の隣に立てかけた。
「例の物です」
女騎士はいつのまにか脱いでいた鎧の中にある肢体を晒しながら、大きな袋を転がした。
「開けろ」
主人はそう言って命令すると、女騎士は袋の口を開けて中からツノを生やした龍人の少女が出てきた。
「おお!流石だな!」
主人は大喜びで小さな息子を呼ぶと、眠っている少女の前に立たせた。
「あぁ、お前達とはそうだな……報酬はメイドから受け取ってくれ」
そう言うと、後ろに控えていたメイドが女騎士に大きな袋を持って渡すと、
「ああ、鎧が壊れているがどうかしたのか?」
と、主人は女騎士に聞いた。
「いや何、少し抵抗にあって胴体部分の鎧を吹っ飛ばされたんですよ」
「おぉ、そうか……それは気の毒に……うむ、少し足しになるといいが、時間がオーバーになった分として少し多めに持っていくといい」
と言って、主人は追加で女に金を渡そうとして女騎士はそれを受け取った。
「ありがとうございます、ではこれからも私達のギルドをご贔屓に……」
そう言って女騎士達は屋敷の外に出て行った。
するとユウラビは男の子からの視線に気がついたのか、ニコッと笑って手を振った。
男の子もそれを見てにっこり笑って手を振った。
バタンと入り口のドアが閉まるのを見届けると主人は息子に語りかけた。
「これからお前と一緒に人生を歩む子だ、大事にしてやりなさい」
と、優しい笑顔でそう言うと子供に首輪を渡した。
すると、首輪を渡された子供は恐る恐る龍人の少女の首につけようと、近づいた。
すると、その瞬間入り口のドアが音もなく開きそこにボロボロのローブを羽織った顔がよく見えない背の高い『何か』がそこに立っていた。
そして、それは子供を見ると少し身じろぎすると鎌をサラサラとした灰を自分から出して作ると、ゆっくりと子供に近づいた。
「おい!その子を狙うな!」
主人は子供の前に飛び出すと、腕を広げて大きな体を晒した。
『何か』は鎌を持った手を行き場のないようにフルフルと震わせると、鎌を下ろして主人の横を通り過ぎて竜人の少女を担いだ。
「まて!その子をどうするつもりだ!」
「……カエス」
と、『何か』は片言に告げると、意識を失った少女を担いで玄関から堂々と出て行こうとしたが、
「逃げられると思っているか?」
と、大剣を地面に刺して仁王立ちする女騎士は凛とした目つきで『何か』を睨んだ。
「おお!」
主人は歓喜の声をあげた。
「ご主人、しばしお待ちを……」
そして、女騎士は大剣を構えると、カチッと何かを押した。
すると、大剣から爆発音が響き何かの鎌に直撃した。
が、『何か』はそれを鎌でしっかりと返すと女騎士に鎌を振り下ろしたが、それはどこからか飛んできた銃弾で弾かれた。
「……好き勝手させるわけないでしょ!」
女スナイパーはそう銃を覗き込みながら怒鳴った。
「…………」
すると、『何か』はふわふわと浮かび上がると少女を担いだままどこかに飛んで行こうとしたが、
「セイッ!」
と、頭にかかと落としを食らって地面に叩き落とされた。
「………ごめんね」
と、小さく身軽な女は呟くと、『何か』を掴もうとしたが『何か』はスルリとその腕をすり抜けると再び少女を担いでさらに浮かび上がった。
「まて!せめて聞かせてくれ!お前はどこにその子を返すんだ!」
主人は屋敷から飛び出して空を見上げて『何か』にそう叫んだ。
「……『ジユウ』ニカエス………」
そう言うと『何か』はクルクルと回って少女を連れて消えてしまった。
「……」
「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
「あ、ああ、大丈夫だ」
主人はそう言って女騎士に会釈すると、
「……はぁ、仕方ないそれ程多くはなかったから学習のための出費とするか……」
そして、主人は女騎士に向かって、
「一つ賞金首を出す」
「……わかりました」
女騎士は全て分かったように頷くと、通信機を手にとって何かを報告して、
「ではあの怪物を手配いたします、私達は戻らねばなりませんので、ではこれで……」
そう言って女騎士達はお辞儀をして背を向けて屋敷から出ようとして、後ろから声をかけられた。
「もし………」
「はい」
「もし、彼女にもう一度会ったなら彼女が幸せか見てやってくれ、もし幸せそうならそのままにしておいてやってくれないか?そして、もしそうじゃないなら……」
「……わかりました」
そう言って女騎士は頷くと再び屋敷から出て行った。
「上手く言ったみたいだな」
「アハハハハ!にーちゃん!「『ジユウ』二カエス」だって!プークスクス!」
「よし殴る」
「やったら蹴り返すで?」
「「……イェー!エビ!カニ!タコ!ファー!」」
「お前らテンションたけぇなぁ」
ロキは呆れて首を振っていると走る列車の横に蒸気車が並んだ。
現在列車は夜の線路を順調に走っていた。
「入れてやれヨイチ」
「わかりましたっすよ」
与一はそう言うと、列車の屋根の上に立って蒸気車に手を向けた。
すると、蒸気車はサラサラと砂のようになってバラバラになりながら徐々に解体されていった。
「ちょっ!」
「もうちょっと考えてくれ!」
「ヨイチィ!」
「悪かったって!ごめんやん!」
砂のようになったパーツの上にフォール達を乗せて与一は彼女達を列車に乗せた。
「あのパーツは?」
「あれはあれで多分使い道あるやろから、倉庫車に乗せとくわ」
そう言って与一はフォール達が列車に乗ったのを確認すると、破片達を倉庫車の方に向かわせた。
そして、服を元に戻すとニギニギと手を開けたり閉じたりした。
「っし!作戦完了!」
「はぁ、貴様が子供を前にしてに同様した時は流石に焦ったぞ」
「ごめんやん……」
「まぁまぁ、子供に武器を向けるなんてやることないからね、慣れないとかチョットってなるのは仕方ないよ」
「ありがとう……俺そう思っててん」
「ホントかしら?案外ノリノリだったような気がするけど?」
「ほんまほんま、ほんまやって!」
「怪しいわ……」
「「おい!お前ら早く入ってこい!じゃねぇと昼飯抜きだぞ!」と、ロキさんがそこそこにお怒りでーす」
と、俊明が列車の連結部分から顔をのぞかせてそう言ったのを与一は溜息を吐いて頷くと、
「すぐ行くわー」
と言って、フォール達の方を見た。
「……やってさ」
そして、四人は連結部に飛び降りると食堂車に入った。
「おお!お嬢達無事ワイナ?」
「無事なら良かった良かった」
「ゲゲグゲゲグ」
男三人はフライパンなどを片手にフォール達を迎えると、食器に料理を乗せて机に並べ始めた。
「……ロキ、ボイスチェンザーやったっけ?返すわ」
「ボイスチェンジャーな……ん」
ロキは与一から機会を受け取るとボロボロの貫頭衣の隙間に突っ込んだ。
「じゃあ飯にするか」
「ウィ」
与一はそう返事をすると、席に着いた。
「今回はワイ等が作らせてもらったワイナ!」
「まぁ、男飯だがそこそこさ行けるはずだ」
「グゴゲゴギギグゲガガギグゲゴギゲガガギゲグ」
「おう、じゃあ食うか」
と、ロキが言うと全員それぞれ食事前の動作をすると、それぞれ食べ物に手をつけ始めた。
「………」
「………ん?」
与一はフォールの方を見た。
「……こっちを見るな」
フォールはそう言ってナイフとフォークを動かしながら与一を見ることなくそう言った。
「……すいませんでした……」
与一はそう言ってしょげると、再び箸を動かしてご飯にがっついた。
「…………」
「うまかったぁ……ごちそーさーん」
「そりゃ良かったワイナ!」
「グゲゴ」
「へへっ、伊達にお嬢達を喜ばせる料理を作ってねぇからな」
と、男三人は誇らしそうに胸を張ると、食事の片付けを始めた。
「あっ、手伝うよ」
「ガガガグギギガガガゴギグゲグゲ」
「……わかったよ……」
そう言ってユウラビは少しションボリしたように食堂車から出て行こうとした。
「あっ、お風呂入らせてもらっていい?」
「お好きにどうぞ」
ロキはそう言ってコーラを開けると部屋にあるテレビをつけた。
「何見るん?」
「……はぁ、一番後ろの車両に少しとってきてほしい物があるんだけどな……」
「はいはい、わかったっすよ、なんすか?」
「行けばわかる」
ロキは与一に少し呆れたようにそう言うと、テレビのリモコンを持って、ヒーロー物の映画を見始めた。
「なんやろ……」
与一は連結部分を伝って一番後ろの今はただの乗客席の列車に入った。
「……来たか」
すると、席から影が立ち上がった。
「………!」
与一はポケットに手を突っ込んでチケットを切ろうとしたが、
「おいよせ、やめないか、私だ……全く……」
影は呆れたように窓から入る月明かりに顔を出した。
「……なんや、フォールか……」
「お前……あの合図が分からないのにここに来たのか?」
「ん?ロキに取りに行ってこいって言われたからなぁ」
「………」
フォールは呆れたように首を振ると、溜息を吐いた。
「いや、まぁ仕方ない……では、改めて……話がある」
と、与一にそう言った。
「何ぃ?」
「……お前はあの竜の少女、ノヴァと名付けたあの子を幸せにすると約束できるか?」
「はぁ?」
「答えろ………」
「……何言うとんねん……でもまぁ、やれる事はやってあげたいし、あの子の……いや、ちゃうなぁ、ノヴァの意思は尊重してあげたいとは思っとるよ」
与一は腕を組んで仁王立ちして、フォールの目をチラリと見ながらそう言った。
「こっちを見ろ……私の目をしっかり見て言え」
フォールはそんな与一にそう言うと、眼光鋭く睨みつけるのだった。
「……やる……できる事はする、それに嘘はつきたく無いし、やけどな、責任取りきれへんことまではするつもりは今んところは無い!」
と、与一は少し声を荒げてそう言った。
自分にそう嘘を付くように。
「……その言葉信じても良いんだな?」
「……信じるか信じへんかは任せる……ってかなんでこんなこと聞くん?」
「……分かった今はその言葉を信じよう、ただもし私がそれを不可能だと思えば彼女をお前から解放する……具体的に言えばお前を殺す」
「……マジかぁ……」
「マジだ」
与一は宣告を受け、頭をバリバリと掻くと溜息を吐いて、
「頑張るわ……」
と、呟いた。
「頑張れ」
「…………」
すると、与一はフォールのその言葉に驚いたように反応した。
「どうした?」
「……いや、何にも無いで……」
与一はそう言って笑うと、席に着いた。
「話はそれと?」
「いや、それだけだ」
「そっか……」
そう言って与一は空に昇っている月を眺めた。
「それでは私はこれで失礼する」
そう言うと、フォールはツカツカと歩いて乗客車から出て行った。
「………この世界は空が綺麗やなぁ……」
与一はそう言って微笑むと、こっそり持ってきていたコーラを開けて少し飲んだ。
「まだか……まだか……?」
チラッと時計を見てはまたウロウロと歩き始めた。
「だ、旦那様、お世継ぎ様が見ていらっしゃいます……」
「うぅむ……」
貴族は唸って椅子に座ると脚をユサリ始めた。
「まだか……どれだけたった?」
「出ていらっしゃってから、半日になります」
「むぅ……」
「腕は確かなようですし、ご心配の必要は無いかと」
「分かっておる、分かっておる、しかしだな……」
すると、屋敷の入り口をノックする音が聞こえた。
「……」
屋敷の主人は無言でメイドに目配せをすると、メイドにドアを開けさせ自分は銃を構えた。
「はい?」
「私達だ、合言葉は『ビーフステーキ』だ」
メイドは無言で扉を開くと、主人は銃を下ろすと明日の隣に立てかけた。
「例の物です」
女騎士はいつのまにか脱いでいた鎧の中にある肢体を晒しながら、大きな袋を転がした。
「開けろ」
主人はそう言って命令すると、女騎士は袋の口を開けて中からツノを生やした龍人の少女が出てきた。
「おお!流石だな!」
主人は大喜びで小さな息子を呼ぶと、眠っている少女の前に立たせた。
「あぁ、お前達とはそうだな……報酬はメイドから受け取ってくれ」
そう言うと、後ろに控えていたメイドが女騎士に大きな袋を持って渡すと、
「ああ、鎧が壊れているがどうかしたのか?」
と、主人は女騎士に聞いた。
「いや何、少し抵抗にあって胴体部分の鎧を吹っ飛ばされたんですよ」
「おぉ、そうか……それは気の毒に……うむ、少し足しになるといいが、時間がオーバーになった分として少し多めに持っていくといい」
と言って、主人は追加で女に金を渡そうとして女騎士はそれを受け取った。
「ありがとうございます、ではこれからも私達のギルドをご贔屓に……」
そう言って女騎士達は屋敷の外に出て行った。
するとユウラビは男の子からの視線に気がついたのか、ニコッと笑って手を振った。
男の子もそれを見てにっこり笑って手を振った。
バタンと入り口のドアが閉まるのを見届けると主人は息子に語りかけた。
「これからお前と一緒に人生を歩む子だ、大事にしてやりなさい」
と、優しい笑顔でそう言うと子供に首輪を渡した。
すると、首輪を渡された子供は恐る恐る龍人の少女の首につけようと、近づいた。
すると、その瞬間入り口のドアが音もなく開きそこにボロボロのローブを羽織った顔がよく見えない背の高い『何か』がそこに立っていた。
そして、それは子供を見ると少し身じろぎすると鎌をサラサラとした灰を自分から出して作ると、ゆっくりと子供に近づいた。
「おい!その子を狙うな!」
主人は子供の前に飛び出すと、腕を広げて大きな体を晒した。
『何か』は鎌を持った手を行き場のないようにフルフルと震わせると、鎌を下ろして主人の横を通り過ぎて竜人の少女を担いだ。
「まて!その子をどうするつもりだ!」
「……カエス」
と、『何か』は片言に告げると、意識を失った少女を担いで玄関から堂々と出て行こうとしたが、
「逃げられると思っているか?」
と、大剣を地面に刺して仁王立ちする女騎士は凛とした目つきで『何か』を睨んだ。
「おお!」
主人は歓喜の声をあげた。
「ご主人、しばしお待ちを……」
そして、女騎士は大剣を構えると、カチッと何かを押した。
すると、大剣から爆発音が響き何かの鎌に直撃した。
が、『何か』はそれを鎌でしっかりと返すと女騎士に鎌を振り下ろしたが、それはどこからか飛んできた銃弾で弾かれた。
「……好き勝手させるわけないでしょ!」
女スナイパーはそう銃を覗き込みながら怒鳴った。
「…………」
すると、『何か』はふわふわと浮かび上がると少女を担いだままどこかに飛んで行こうとしたが、
「セイッ!」
と、頭にかかと落としを食らって地面に叩き落とされた。
「………ごめんね」
と、小さく身軽な女は呟くと、『何か』を掴もうとしたが『何か』はスルリとその腕をすり抜けると再び少女を担いでさらに浮かび上がった。
「まて!せめて聞かせてくれ!お前はどこにその子を返すんだ!」
主人は屋敷から飛び出して空を見上げて『何か』にそう叫んだ。
「……『ジユウ』ニカエス………」
そう言うと『何か』はクルクルと回って少女を連れて消えてしまった。
「……」
「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
「あ、ああ、大丈夫だ」
主人はそう言って女騎士に会釈すると、
「……はぁ、仕方ないそれ程多くはなかったから学習のための出費とするか……」
そして、主人は女騎士に向かって、
「一つ賞金首を出す」
「……わかりました」
女騎士は全て分かったように頷くと、通信機を手にとって何かを報告して、
「ではあの怪物を手配いたします、私達は戻らねばなりませんので、ではこれで……」
そう言って女騎士達はお辞儀をして背を向けて屋敷から出ようとして、後ろから声をかけられた。
「もし………」
「はい」
「もし、彼女にもう一度会ったなら彼女が幸せか見てやってくれ、もし幸せそうならそのままにしておいてやってくれないか?そして、もしそうじゃないなら……」
「……わかりました」
そう言って女騎士は頷くと再び屋敷から出て行った。
「上手く言ったみたいだな」
「アハハハハ!にーちゃん!「『ジユウ』二カエス」だって!プークスクス!」
「よし殴る」
「やったら蹴り返すで?」
「「……イェー!エビ!カニ!タコ!ファー!」」
「お前らテンションたけぇなぁ」
ロキは呆れて首を振っていると走る列車の横に蒸気車が並んだ。
現在列車は夜の線路を順調に走っていた。
「入れてやれヨイチ」
「わかりましたっすよ」
与一はそう言うと、列車の屋根の上に立って蒸気車に手を向けた。
すると、蒸気車はサラサラと砂のようになってバラバラになりながら徐々に解体されていった。
「ちょっ!」
「もうちょっと考えてくれ!」
「ヨイチィ!」
「悪かったって!ごめんやん!」
砂のようになったパーツの上にフォール達を乗せて与一は彼女達を列車に乗せた。
「あのパーツは?」
「あれはあれで多分使い道あるやろから、倉庫車に乗せとくわ」
そう言って与一はフォール達が列車に乗ったのを確認すると、破片達を倉庫車の方に向かわせた。
そして、服を元に戻すとニギニギと手を開けたり閉じたりした。
「っし!作戦完了!」
「はぁ、貴様が子供を前にしてに同様した時は流石に焦ったぞ」
「ごめんやん……」
「まぁまぁ、子供に武器を向けるなんてやることないからね、慣れないとかチョットってなるのは仕方ないよ」
「ありがとう……俺そう思っててん」
「ホントかしら?案外ノリノリだったような気がするけど?」
「ほんまほんま、ほんまやって!」
「怪しいわ……」
「「おい!お前ら早く入ってこい!じゃねぇと昼飯抜きだぞ!」と、ロキさんがそこそこにお怒りでーす」
と、俊明が列車の連結部分から顔をのぞかせてそう言ったのを与一は溜息を吐いて頷くと、
「すぐ行くわー」
と言って、フォール達の方を見た。
「……やってさ」
そして、四人は連結部に飛び降りると食堂車に入った。
「おお!お嬢達無事ワイナ?」
「無事なら良かった良かった」
「ゲゲグゲゲグ」
男三人はフライパンなどを片手にフォール達を迎えると、食器に料理を乗せて机に並べ始めた。
「……ロキ、ボイスチェンザーやったっけ?返すわ」
「ボイスチェンジャーな……ん」
ロキは与一から機会を受け取るとボロボロの貫頭衣の隙間に突っ込んだ。
「じゃあ飯にするか」
「ウィ」
与一はそう返事をすると、席に着いた。
「今回はワイ等が作らせてもらったワイナ!」
「まぁ、男飯だがそこそこさ行けるはずだ」
「グゴゲゴギギグゲガガギグゲゴギゲガガギゲグ」
「おう、じゃあ食うか」
と、ロキが言うと全員それぞれ食事前の動作をすると、それぞれ食べ物に手をつけ始めた。
「………」
「………ん?」
与一はフォールの方を見た。
「……こっちを見るな」
フォールはそう言ってナイフとフォークを動かしながら与一を見ることなくそう言った。
「……すいませんでした……」
与一はそう言ってしょげると、再び箸を動かしてご飯にがっついた。
「…………」
「うまかったぁ……ごちそーさーん」
「そりゃ良かったワイナ!」
「グゲゴ」
「へへっ、伊達にお嬢達を喜ばせる料理を作ってねぇからな」
と、男三人は誇らしそうに胸を張ると、食事の片付けを始めた。
「あっ、手伝うよ」
「ガガガグギギガガガゴギグゲグゲ」
「……わかったよ……」
そう言ってユウラビは少しションボリしたように食堂車から出て行こうとした。
「あっ、お風呂入らせてもらっていい?」
「お好きにどうぞ」
ロキはそう言ってコーラを開けると部屋にあるテレビをつけた。
「何見るん?」
「……はぁ、一番後ろの車両に少しとってきてほしい物があるんだけどな……」
「はいはい、わかったっすよ、なんすか?」
「行けばわかる」
ロキは与一に少し呆れたようにそう言うと、テレビのリモコンを持って、ヒーロー物の映画を見始めた。
「なんやろ……」
与一は連結部分を伝って一番後ろの今はただの乗客席の列車に入った。
「……来たか」
すると、席から影が立ち上がった。
「………!」
与一はポケットに手を突っ込んでチケットを切ろうとしたが、
「おいよせ、やめないか、私だ……全く……」
影は呆れたように窓から入る月明かりに顔を出した。
「……なんや、フォールか……」
「お前……あの合図が分からないのにここに来たのか?」
「ん?ロキに取りに行ってこいって言われたからなぁ」
「………」
フォールは呆れたように首を振ると、溜息を吐いた。
「いや、まぁ仕方ない……では、改めて……話がある」
と、与一にそう言った。
「何ぃ?」
「……お前はあの竜の少女、ノヴァと名付けたあの子を幸せにすると約束できるか?」
「はぁ?」
「答えろ………」
「……何言うとんねん……でもまぁ、やれる事はやってあげたいし、あの子の……いや、ちゃうなぁ、ノヴァの意思は尊重してあげたいとは思っとるよ」
与一は腕を組んで仁王立ちして、フォールの目をチラリと見ながらそう言った。
「こっちを見ろ……私の目をしっかり見て言え」
フォールはそんな与一にそう言うと、眼光鋭く睨みつけるのだった。
「……やる……できる事はする、それに嘘はつきたく無いし、やけどな、責任取りきれへんことまではするつもりは今んところは無い!」
と、与一は少し声を荒げてそう言った。
自分にそう嘘を付くように。
「……その言葉信じても良いんだな?」
「……信じるか信じへんかは任せる……ってかなんでこんなこと聞くん?」
「……分かった今はその言葉を信じよう、ただもし私がそれを不可能だと思えば彼女をお前から解放する……具体的に言えばお前を殺す」
「……マジかぁ……」
「マジだ」
与一は宣告を受け、頭をバリバリと掻くと溜息を吐いて、
「頑張るわ……」
と、呟いた。
「頑張れ」
「…………」
すると、与一はフォールのその言葉に驚いたように反応した。
「どうした?」
「……いや、何にも無いで……」
与一はそう言って笑うと、席に着いた。
「話はそれと?」
「いや、それだけだ」
「そっか……」
そう言って与一は空に昇っている月を眺めた。
「それでは私はこれで失礼する」
そう言うと、フォールはツカツカと歩いて乗客車から出て行った。
「………この世界は空が綺麗やなぁ……」
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