Two Runner

マシュウ

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向かうは世界の果て

で、今回は何吹き込んだん、にーちゃん

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 好きなように生きて理不尽に死ぬ

 それがあの人達の人生観だった。

「……ん」

「今度こそ起きたか、アスター」

「………ロキさん……ですね?」

「そうだ、全くお前とヴィクトリアはどれだけ迷惑をかけりゃああ気が済むんだ……」

「……ヴィクトリアは?」

「……何故か与一に看取られて逝ったよ」

「そう……ですか……」

「まぁ、変わり者同士引かれ合ったのかもしれねぇが、ま、私にはそんなこと知ったこっちゃないんでな」

「…………」

「で、これからどうするよ、お前ら」

「ら……?」

 アスターは周りを見渡して、自分の手を握る二つの手に気がついた。

「……大丈夫……カナ?」

「そう……カモ?」

 二人は不安そうにアスターの顔を覗き込んだ。

 アスターは二人の手を頬に持っていき、ゆっくりと触れさせた。

「……ごめんなさい……」

 そう言ってアスターは涙をパラパラと流し始めた。

 すると、二人はアスターをゆっくりと抱くと、

「それはこっちの言葉カナ?」

「私達の体が………心が弱かったのがいけなかったカナ……」

 それを聞いてアスターはとうとう我慢できなくなったのか、声を出して泣き始めた。

「私達も……都合良すぎるかもしれないけど……」

「ごめんなさい……ね?」

 そう言って三人は泣きながら抱き合った。

「……あー、百合百合してるとこ悪いんだが、私達は先を急いでるんだ、降りるなら降りろ」

 そうロキがバリバリと頭を掻きながら、ため息混混じりに言った。

「……おりません、私はこうして下さっ……」

「あー、恩とか感謝とかそんなのいらねぇよ、てかとっとと降りろ」

 そうロキは冷たく言い放つと、全くと言って部屋から出て行った。

「……聞いてたんだろ?」

「まぁ、な?」

 部屋の扉の横の壁にもたれかかるようにスマホを弄る与一に、ロキはため息混じりに声をかけた。

「……」

「……まぁ、この列車はロキ、お前のもんやし、俺らはあくまでもロキの手下……支配下……?まぁ何でもええわ、ロキが一番偉いねんやから、俺らがどうこう言わせてもらえる筋合いはないからな」

「お前はたまにむず痒くなるようなこと言うよな」

「そりゃどうも」

「バカ」

 ロキは軽く与一の肩を叩くと、その横を通り過ぎて与一を引っ張って寝台車の大広間に連れて行った。

「痛い痛い痛い!なぁにぃ!?」

「はいはい、まずは増えた乗組員に対して私達の目的、目的地の説明とか、やれ」

「はぁ!?」

 ロキはそう言って驚く与一の表情を嬉しそうに見つめると、

「唐突な押し付けは神の特権だろ?それにお前………」

 と、ロキは与一の耳元に口を近づけて、

「こう言う無茶苦茶な女……好きだろ?」

「…………ちゃいますよ・・・・・・

 ロキはニヤァっと笑いながらも与一に膝で軽くつつくと、カツカツと優雅に歩いて最後に与一を振り返って、

「じゃあ、よろ」

 と言って消えてしまった。

「………やる訳ないやん……」

 与一はバリバリと頭を掻いてため息をつくと、踵を返して娯楽車の方へと向かった。

 そして、その途中でコントローラー持ちのリーシャとノヴァ、そして新しく入って来た二人が一緒に向かうのを見て、与一は声をかけた。

「何してん」

「あら、与一じゃない………あっ、そーだ……」

 と、リーシャは悪い考え方でも思い付いたかのようにほくそ笑むと、突然ですがそれが幻覚だったかのようなとても良い笑顔でヨイチの肩を持った。

「ねぇねぇ……あのゲームで遊ばない?」

 と、リーシャが言うあのゲームは一度与一がリーシャをボコボコにしたゲームだった。

「………ええよ」

 そう与一の言葉を聞いたリーシャはとても良い笑顔で、

「じゃあ4対1ね?」

 と、有無を言わさず与一らを連れて行った。

「うぇぇ……」

 与一は無理やりテレビの前に座らされてコントローラーを持たされると、渋々ながらもゲームを開始した。

「ふっふっふっ……反則なんて言わせないわよ!」

「大人げないわね………」

「これ……どうやって操作するの?」

「さ、さぁ?」

 そう言って始まったゲームは実際は2対1の戦いだった。

 新しく来た二人は操作の仕方がわからず、早々に自殺をかまして、一番先に離脱した。

 そしてリーシャはと言うと、ノヴァをステージの外に出している間にタコ殴りにされて、残りライフが1となってしまった。

 ノヴァはそこそこ立ち回りをうまくして、遠距離から与一のキャラをチクチクと攻撃した。

「……くっそ!」

「何でよ!何で私ばっかり狙うのよ!」

「当たり前やんけ!ステージの上におったら邪魔やろ!」

「あ、貴方下手な人ばっかり狙うのってどうかと思うわよ!」

「だから、おったらカメラ移動して見えにくいなんて!」

「あっ!やめっ!」

「ジャーンケーンパー!」

「はい、貴方の負けね」

「ちょっ!」

「………勝ったわね」

「………負けちゃったか……」

「……あ、か、勝ちー……」

 そう言ってリーシャは弱々しく与一の方を向いて、ガッツポーズをした。

「お前チーム戦で4対1でボコって楽しかったか?」

「いやー………」

 リーシャは思うところがあったのか返答を
しないでいた。

 すると、与一の背後から手が伸びて、

「わっ!」

「おわぁっ!」

 と、与一が飛び上がるのを見ておかしそうに笑うロキに全員驚いた。

「あっはっはっはっはっ!いや~……ん、貸して見ろ」

 そう言ってロキはノヴァのコントローラーを借りると、

「与一、勝負しろ」

 と、挑発的にそう言った。

「………ウィ」

 与一は少しニヤケながらロキの対戦を受けた。

「さてさて………」

「んー………」

 2人は手元のコントローラーをガチャガチャと動かしながら、無言で画面を食い入るように見つめていた。

「ね、ねぇ、なんか喋りなさいよ」

「ジャンケンパー」

「お前の負け、なんで負けたか明日までに考えてろ、そしたら何か見えてくるはずだ、じゃあ勝ち頂きます」

「って思ってませんか?油断は禁物です、ほな勝ち頂きます」

「……武器なんて捨ててかかってこいよ」

「……ヤロォブッ○ロシテヤラァ!」

「お前は地上で殺すと言ったな、あれは嘘だ」

「ウワァァァァァァァァァ!!」

「あ、あんた達………」

 ノヴァとリーシャは2人のやり取りに若干引きつつ、2人のやりとりのそこそこ高度なやりとりに目を奪われていた。

「すごいわ……ゲームだけど……」

「ええ、すごい立ち回りで2人ともすごい読み合いよ……ゲームだけど」

「「お前らなぁ……」」

 与一とロキはそう言ってため息をつきながらそう言った。

 そして、

「はい、さようなら~」

「チャーオー……」

 与一がギリギリなところで負けた。

「……貴方達って実は兄弟じゃないの?」

「唐突に何!?」

「コイツと兄弟なんぞ………ハッ」

「ちょっ、鼻で笑うほど……?」

 軽くショックを受けた与一は少しがっかりしたように肩を落として、唐突に思い出したかのように、

「あ、そうそうロキ、アレやらなアカンの?」

「あ?アレって何だ?」

「アレやん、説明会のこと」

「あー、アレか、別に良いぞやらなくても」

「じゃあ何でそう言ったのか、聞いてもええか?」

「駄目」

「あっそ」

「……もしかして貴方たち付き合ってる?」

「ちゃいますー」

「ちげぇよ」

 と、同時にカミラに向かって返事をした2人に、カミラはますます訳がわからないと首を捻った。

「………さてと、与一ついてこい」

「もう、何やねん……」

 そう言いながらも与一は立ち上がって、ロキの後をついて行った。

「……もしくは、金魚のフンの如く……だな」

「タシト、汚いわよ」

「…………」

















「おい、入るぞ」

「ロキ、ノックぐらいしぃや……」

 与一はため息をしながらロキにそう言ってアスターに詫びた。

「……ごめんな、いきなり入ってな」

「いえいえ、お気になさらずに……ロキさん」

「何だ?」

「私達の誰かを残してください」

「ふっ……で?私がそれでお前らをこの列車に乗せるのを許可するとでも?」

「ただでとは言いません」

 そう言ってアスターはカナとカモから袋を受け取った。

「これはもう作ることができるのが、私達のみとなったある薬です……人が怪我をした際にそこに打つとしばらく痛みが消える薬です」

 ロキはその袋を受け取って中から瓶を取り出した。

 そしてそれを自分の手の甲に少しつけた。

「麻酔だな」

「そんなもん作れんのか……」

「私達の誰かを同行させていただきましたら、道中の草木などでいくらでもお作りいたしましょう、それだけではありません、お料理、洗濯、お掃除、どれも無料でお手伝いさせていただきます。それにそのお薬はとても高くお売りすることが出来るのです」

「……成る程な……確かに麻酔ぐらい取り寄せようとすれば幾らでもあるが、禁則事項としてその世界にない技術の譲渡があるからな……もし麻酔とか薬を奪われたらと思うと、薬とかは病気になってからとかじゃないと取り寄せれないと思っていたが……」

「それだけじゃなくて簡単なお薬もお作りすることができます」

「効き目は?」

「バッチリです」

「………今持ってるか?」

「その袋の中に」

 ロキは復路から別の液体の入った瓶を取り出した。

「これは何に効くんだ?」

「それは高熱や風邪、頭痛などにもよく効きますよ、他のは腹痛とか便秘下痢とかにも効くのを作ることもできますよ」

「……ふーん……どうやらそれは本当みたいだな」

 ロキはそう言って比喩表現ではなく本当に目を輝かせながら液体の入った瓶を見つめていた。

「……わかった、だが乗せることができるのは1人だけだ、それに旅の途中で金を取る、お前らは客じゃないからな」

「ええ、構いません」

 アスターはロキの瞳を真っ直ぐに捉えてそう言った。

「わかった……良いだろう、それじゃあ誰が乗るか決め……」

「それは勿論私が乗りますよ」

 ロキが最後まで言い切る前にアスターは強気にそう言った。

「もとまと、私が貴方達にお願いした事がありますし、カナとカモ達には私が帰る場所になっていただかないと」

「その言葉もう話しあったカモ」

「三人ともそれで異論はないカナ」

「……そうか」

 ロキはそう言うと、杖を取り出して、アスターの肩に杖をポンポンと置いた。

「アスターお前を今日から『WTsワールドトラベラーズ』の一員に任命する、ようこそ」

 と、そう言ってアスターに微笑んだ。

「ええ、末長くお願いいたします」

「馬鹿野郎、結婚する訳じゃねぇのによ」

 クスクスと2人は笑い合うとがっしりと握手を交わした。
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