癒やしの旅人

風待 結

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追跡者の影

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エルラは馬車の荷台で生命の結晶を握りしめ、夜の平原を進む馬車の揺れに身を任せていた。
結晶の青い輝きは、まるで希望そのものを映し出しているようだったが彼女の心には不安が広がっていた。
突然黒いローブの集団が現れたことで結晶がどれほど危険な存在かを思い知らされていたのだ。

「エルラー?お前さん、結晶をそんなに握りしめてると疲れちまうぞー?」

タロンが馬車の前方から振り返り、軽い口調で言った。

「うん、そうだね…。でも…この結晶で狙われてると思うと…なんだか怖くて」

エルラは微笑みながら答えた。


「心配すんな! 俺たちがいるんだから誰にも渡さねえよ!」

タロンが胸を叩いて笑った。

「タロン、軽率よ。敵の数はわからないし、結晶の力を知ってる相手ならばもっと組織的な攻撃を仕掛けて来てもおかしくないわ」

リアが眉をひそめながら言う。

「そうだね、リアの言う通りだ。結晶を個人で持ち続けるのは危険すぎる。僕たちは王都に届けるまで全員でエルラも結晶も必ず守る必要がある」

カイが馬を操りながら穏やかだが真剣な声で言った。
ガルドも力強く頷く。

エルラは仲間たちの言葉に胸を熱くした。

「ありがとう、みんな。私…王国に届けるまでどんなことがあってもこの結晶を守るよ」

「よっしゃーそうこなくっちゃ!」




夜が深まる中、グループは小さな森の入り口でキャンプを張った。
火の光が揺れスープの香りが漂う。
エルラは結晶を布に包んで胸元にしまった。

リアが突然立ち上がり、森の奥を見つめた。

「何かいるわ!気配が…不自然すぎる…!」

リアの言葉に皆が一斉に武器を構えた。カイが剣を握り静かに言った。

「エルラは結晶を隠して。僕たちが確認するから」

エルラは結晶を馬車の荷台の隠し箱にしまいこみ、緊張しながらうなずいた。

森の闇から複数の影が現れた。
黒いローブをまとった集団だったが、今回は数が多く明らかに訓練された動きを見せている。
リーダーの男が前に出てきて冷たく笑った。

「結晶を渡せ。さもないと命はない」

「貴様らは何者だ? なぜ結晶を狙う?」

カイが剣を構えて鋭く尋ねた。

「我々は『闇の使徒』。結晶の力は我々のものになるべきなのだ。渡すのならば痛みなく終わらせてやる」

男の言葉にタロンが叫んだ。

「ふざけんな! てめえらの言う事なんて聞くわけねーだろが!」

「ならば、ここで死ね」

戦闘が始まった。
ガルドが盾で敵の魔法を防ぎ、リアが火炎魔法を放つ。タロンの矢が敵を射抜き、カイが剣で突進する。
だが敵は数で圧倒し、魔法と武器の連携が巧みだった。

エルラは馬車の後ろで戦いを見守り、結晶の力を呼び起こした。青い光が仲間たちを包み彼らの動きが速くなって力がみなぎる。

「オッケーナイスー!これならいける!」

タロンが笑いながら矢を放ち、敵を次々に倒す。

だが敵のリーダーが強力な闇の魔法を放ち、ガルドの盾を砕いた。
ガルドが膝をつく。

エルラが叫んだ。

「ガルドさん!」

彼女は結晶を握りしめ力を集中した。青い光がガルドを包み、彼の体力が回復し、彼は盾を再び構えた。

「ああ、ありがとう! 俺はまだやれる!」

ガルドが立ち上がり、敵の攻撃を防ぐ。

カイがリーダーに斬りかかり、リアの魔法が援護する。
激闘の末、ついにリーダーが倒れて残りの敵は逃げ出した。

「ふう、なんとか追い払ったな…」

カイが息をつき、剣を収めた。





キャンプに戻り、皆は火のそばで休息した。
エルラは結晶を取り出して仲間たちに見せた。

「この結晶、こんなに狙われるなんて…。王都に届けるまで、私、ちゃんと守れるかな…」

リアが真剣な顔で言った。

「君の力は素晴らしいけど、結晶の力は大きすぎるわ。王都に着いたら、王に直接渡しましょう。君が個人で持つのは危険すぎる」

「うん。リアの言う通りだ。僕たちで守るにしてもどうも敵の動きが本格化してる気がしてならない。王都まで急ごう」

カイが頷き、皆を見回した。

タロンがスープを飲みながら言った。

「でもさーエルラの新しい力ってめっちゃ頼りになるぜ! あの青い光ってなんかわくわくしねえ?!」

ガルドが静かに言った。

「お前がその力を使ってくれるならば俺たちはどんな敵とも戦える」

エルラは仲間たちの信頼に目を潤ませた。

「ありがとう、みんな。私…癒しの力は失ったけど、この結晶とみんながいるから、怖くないよ。王都に届けるまで、絶対に諦めない」

カイが微笑んで言った。

「エルラ、君の決意は僕たちのみんなの力になる。王国を救うため、そして君の新しい道のためにも前に共に進もう」



翌朝、グループは王都を目指して旅を続けた。
だが道の先で新たな気配を感じた。
黒いローブの集団が再び現れ、今度は巨大な魔物を連れていた。
リーダーの男が冷たく笑って言った。

「結晶を渡せ。さもないと、この魔物が貴様らを粉砕するぞ」

カイが剣を構えて叫んだ。

「かかってこい!結晶は渡さない!」

エルラは結晶を隠して仲間たちを見た。
深呼吸して結晶の力を呼び起こす。
青い光が仲間たちを包み、彼らの力がみなぎる。

「みんなは絶対に負けないよ!」

エルラの声が響き、戦いが始まった。
ガルドが魔物の攻撃を盾で受け止め、リアの魔法が炸裂し、タロンの矢が魔物の急所を狙う。
カイが剣で突進し、エルラの力が仲間を支える。

戦いは激しさを増したがエルラの結晶の力と仲間たちの絆が敵を圧倒した。
魔物が倒れ、黒いローブの集団は再び逃げ出した。

「これで、終わりじゃ、ない。奴らは…奴らは、きっと…また来るわ」

リアが息を切らしながら言った。

「ならば僕たちが王都に着く前に、結晶の力をどう使うか考えないといけないね」

カイが真剣に言った。

エルラは結晶を握りしめ決意を新たにした。

「私、この力を正しく使ってみんなと王国を救うよ。個人で持つのは危険だろうけど…みんなと一緒なら、できるよね」

ガルドが頷いた。

「お前がそう言うならば俺は信じる。行くぞ」

タロンが笑いながら言った。

「よっしゃ、エルラ! 王都まで突っ走るぜ!」

夜空の下、グループは結晶を守り、王都を目指した。
青い光が彼らの道を照らし、未来への希望を灯していた。
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