8 / 12
王都の光と希望
しおりを挟む馬車の車輪が石畳を鳴らし、エルラたちはついに王都の門前にたどり着いた。
高い石壁に囲まれた都は、色とりどりの旗がはためき、商人や旅人でにぎわっていた。
生命の結晶を握るエルラの胸は、緊張と安堵で高鳴っていた。
幾多の戦いを乗り越え、黒いローブの集団「闇の使徒」の追跡を振り切った今、彼女は仲間たちと共に使命を果たす時が来たことを感じていた。
「エルラ、王都だよ。結晶は無事だな?」
カイが馬車の前方から振り返って穏やかに尋ねた。
「うん、大丈夫。…でも…誰に渡せばいいのかな。こんな大事なものって信用できる人に渡さないと。」
エルラは結晶を布に包みながら答えた。
「そりゃあ簡単じゃねえよな。こんなすごいもんなんて狙ってる奴らがまだいるだろうし」
タロンが馬車を操りながら、陽気に言った。
「タロン、軽率よ。結晶の力は王国を救う鍵だけど、間違った手に渡れば大惨事になるわ。信用できる相手を慎重に選ばないと」
リアがため息をつきながら言った。
ガルドが馬車の横を歩きながら、低くつぶやく。
「エルラ、お前が持ってるなら俺たちが守る。だが王都じゃ敵の目も多い。気をつけろ」
エルラは仲間たちの言葉に頷いた。
「ありがとう、みんな。私、この結晶を正しい人に渡すよ。絶対に間違えないようにする」
王都の門をくぐると広大な広場が広がっていた。
石造りの建物が立ち並び、市場では果物や布、武器が売られている。
子供たちが笑いながら走り回り、衛兵が堂巡回している。
エルラは初めて見る大都市の活気に目を奪われた。
「すごい…!こんな大きな街、初めて見た!」
エルラが感嘆の声を上げるとタロンが笑った。
「だっろー??王都はすげえぜ! でーもー!油断すんなよー?人が多い分、敵も潜みやすいからな!」
カイが馬車を止めて皆を見回した。
「まずは王宮に向かおう。結晶は王に直接渡すのが安全だ。だが闇の使徒が王都にも潜んでいる可能性がある。警戒を怠らないで」
リアが頷いた。
「そうね…王宮には大賢者アルテミスがいるわ。彼なら結晶の力を正しく扱えるはず。私の師匠でもあるから、信用できるわ」
「大賢者アルテミス? どんな人なの?」
エルラが興味津々に尋ねた。
「知識と魔法の達人よ。厳しいけど、公正で、人の命を第一に考える人。王国の病を治すためなら、きっと結晶を正しく使ってくれるはず」
リアの言葉にエルラは安心した。
「じゃあ、アルテミスさんに渡そう。リアが言うのなら、私は信じる」
王宮への道は賑やかな通りを抜け、衛兵の監視をくぐり抜ける必要があった。
グループは馬車を降り、徒歩で進んだ。
エルラは結晶を胸元に隠し、仲間たちに囲まれながら歩いた。
だが、市場の喧騒の中で怪しい気配を感じた。
「待て、誰か見張ってる」
ガルドが低い声で言い、盾を構えた。
皆が周囲を見回すと、路地裏から黒いローブの男たちが現れた。
数は十人以上、明らかに訓練された動きだ。
「結晶を渡せ! 今なら命は助けてやる!」
リーダーの男が剣を抜き、叫んだ。
「貴様ら、闇の使徒か! 諦めが悪いな!」
カイが剣を構え、応じた。
戦闘が始まった。
ガルドが盾で敵の攻撃を防ぎ、リアの火炎魔法が敵を焼き、タロンの矢が正確に敵を射抜く。
エルラは結晶を握り、青い光を放った。
仲間たちの動きが速くなり力がみなぎる。
「エルラ、ナイス! これならいけるぜ!」
タロンが笑いながら矢を放つ。
だが敵の数は多く、魔法使いが闇の魔法で反撃してきた。
カイが敵の剣士と激しく打ち合い、ガルドが魔法を盾で防ぐ。リアが叫んだ。
「エルラ、結晶の力を集中させて! 敵の魔法使いを狙うわ!」
エルラは頷き、結晶に全神経を集中した。青い光が強くなり、仲間たちの攻撃がさらに鋭くなる。
リアの魔法が敵の魔法使いを倒し、カイとタロンが残りの敵を仕留めた。
リーダーは逃げ出したが、ガルドが追い詰めて捕らえた。
「言え、誰の命令だ?」
ガルドが低く尋ねると、男は震えながら答えた。
「王都の貴族…名前は言えない。だが…結晶の力を欲してる…」
「貴族か…。ならばやはり大賢者様に相談するのが賢明だろうな…。エルラ、結晶はまだ隠しておくようにね」
王宮に到着すると、衛兵がグループを厳しくチェックした。
リアが大賢者アルテミスの名を告げると弟子であることで特別な許可を得て中に入った。
王宮の内部は豪華で大理石の柱と色鮮やかなタペストリーが目を引く。
エルラは緊張しながらも、結晶をしっかりと握っていた。
大賢者アルテミスの部屋に案内されると白髪の老人が出迎えた。厳格な顔立ちだが目には温かみが感じられた。
「おや、リア、久しぶりだな。…そして、君たちが生命の結晶を持ってきた者たちかな?」
アルテミスが静かに言った。
「はい、大賢者様。私はエルラと言います。この結晶を王国に届けるためにみんなと旅してきました」
エルラが結晶を取り出し、差し出した。
アルテミスは結晶を手に取り、じっと見つめた。
「ふむ、素晴らしい…。この力は王国の病を癒す希望になるだろう。だが君たちがここまで来るのにどれほどの試練を乗り越えたか、想像に難くない」
カイが一歩前に出て言った。
「大賢者様、闇の使徒という集団が結晶を狙っています。道中何度か襲撃にも遭いました。彼らは王都の貴族と繋がっているようです。結晶を渡すならば信用できるあなたに託したい」
アルテミスが頷いた。
「貴族の裏切りか…。王都にも闇は潜んでいるからな…。結晶は私が預かって王に直接報告するとしよう。君たちの勇気と犠牲に感謝するよ」
エルラはほっと息をついた。
「大賢者様なら、結晶を正しく使ってくれると信じます。私は癒しの力を失ったけど、この結晶で多くの人が救われるなら、それでいいんです」
アルテミスが微笑み、エルラを見た。
「エルラ、君の力は癒しだけではない。結晶を通じて仲間を鼓舞する力を持っている。それもまた、立派な力だ」
タロンが笑いながら言った。
「だろ? めっちゃすごいんだから!」
リアが静かに頷いた。
「エルラの新しい力は王国の希望になったわ。本当にありがとう。言葉では言い尽くせないわ」
ガルドも低く言った。
「お前がいたから、俺たちはここまで来れたんだ」
カイがエルラの肩に手を置いて言った。
「君のおかげで僕たちは使命を果たせた。これからも君と一緒に新しい道を進みたいと思っているんだけれど、どうかな?」
エルラは仲間たちの言葉に目を潤ませ、微笑んだ。
「ありがとう、みんな。私、癒しの力は失ったけど、みんなと一緒ならどんな未来も怖くないよ」
結晶をアルテミスに託した後、グループは王宮の外で夜空を見上げた。王都の灯りが輝き、星々が瞬く。エルラは新たな決意を胸に、仲間たちと笑い合った。
「次は何の冒険だ? また一緒にやろうぜ!」
タロンが笑いながら言った。
「これからもみんなで一緒にね」
エルラの言葉に皆が頷いた。
生命の結晶は王国の希望となりエルラたちの絆は新たな旅への第一歩を照らしていた。
26
あなたにおすすめの小説
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
【完結】令嬢は売られ、捨てられ、治療師として頑張ります。
まるねこ
ファンタジー
魔法が使えなかったせいで落ちこぼれ街道を突っ走り、伯爵家から売られたソフィ。
泣きっ面に蜂とはこの事、売られた先で魔物と出くわし、置いて逃げられる。
それでも挫けず平民として仕事を頑張るわ!
【手直しての再掲載です】
いつも通り、ふんわり設定です。
いつも悩んでおりますが、カテ変更しました。ファンタジーカップには参加しておりません。のんびりです。(*´꒳`*)
Copyright©︎2022-まるねこ
王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~
しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること!
8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。
どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
華都のローズマリー
みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。
新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦
未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?!
痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。
一体私が何をしたというのよーっ!
驚愕の異世界転生、始まり始まり。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる