癒やしの旅人

風待 結

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王都の闇と新たな学び

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エルラは王都の宿屋の窓から、夜の街を見下ろしていた。
生命の結晶を大賢者アルテミスに託してから数日、王都の喧騒は彼女に新たな世界を見せていた。
だが、結晶を巡る戦いは終わりではなく、王国の政治状況が複雑であることを感じ始めていた。
彼女は胸元で結晶の力を思い出し、仲間たちと共に新たな道を歩む決意を新たにしていた。

「どうした?考え事かい?」

カイが部屋に入り、穏やかに尋ねた。

「うん、ちょっと…。結晶を渡したのはいいけれど王国が本当に救われるのかなって…」

エルラはぎこちなく微笑みながら答えた。

「そりゃーお前さん、簡単じゃねえよなー!王都に来てわかったけど、なんかゴタゴタしてるぜ?」

タロンがベッドに寝転がりながら、陽気に言った。彼の軽快な口調が、緊張を和らげる。

「王国の政治状況は複雑だわ。貴族たちの派閥争いと、闇の使徒の動きが絡んでる。結晶が関わると、さらに混乱するかもしれない」

窓辺に立つリアは難しい顔をしている。

ガルドが部屋の隅で盾を磨きながら、低くつぶやいた。

「エルラ、お前が結晶を正しい奴に渡したのは確かだ。だが王都の闇は深い。気を抜くな」

エルラは仲間たちの言葉に頷いた。

「うん、ありがとう、みんな。大賢者様に結晶を渡したけど、これからどうなるのかをちゃんと知りたい。そして、私にもっとできることがあれば…学びたい。」

カイが微笑み、言った。

「エルラ、君のその気持ちが、僕たちをここまで導いたんだ。アルテミスに相談すれば、きっと次の道が見えるよ」



翌日、グループは再び王宮を訪れ、大賢者アルテミスの部屋に通された。
アルテミスは書棚の前で古い巻物を広げ、結晶を調べていた。
白髪の老人の目は鋭く、だが温かみが感じられた。

「君たちか。結晶のことは、王に報告済みだ。だが、王国の状況は…複雑だ」

アルテミスが重い口調で言った。

「大賢者様、王国の状況って、どういうことですか?」

エルラが真剣に尋ねた。

アルテミスは巻物を閉じ、椅子に座った。

「王国は現在、貴族たちの派閥争いで分裂している。王は病を治すため結晶を欲したが、一部の貴族は結晶の力を私利私欲のために使おうとしている。闇の使徒も、その貴族たちと繋がっている可能性が高いだろう」

リアが一歩前に出て、言った。

「師匠、闇の使徒のリーダーが貴族の関与をほのめかしていました。どの派閥が怪しいか、情報はありますか?」

アルテミスが頷いた。

「有力なのは、北の領主ガルシア卿だ。彼は軍事力を背景に王を脅し、結晶を手にしようとしている。だが、証拠が乏しくこちら側からは動けない。結晶は私が厳重に保管しているが、王都の外に運ぶのは危険だろうな」

カイが剣の柄に手を置き、言った。

「大賢者様、僕たちにできることがあれば、教えてください。結晶を守るためなら、どんな任務でも引き受けます」

アルテミスがエルラを見た。

「エルラ、君の癒しの力は失われたが、結晶を通じて新たな力を発現させた。補助魔法、あるいは付与魔法の素質がある。私の下で学び、結晶の力を正しく扱う術を身につけないか?」

エルラの目が輝いた。

「はい!私、学びたいです! 結晶の力をみんなのために使いたい。そして、王国を救うためにももっと強くならなきゃ。」

タロンが笑いながら言った。

「へーえ!エルラ、魔法使いデビューか! いいじゃねーか!楽しみだぜ!」

「タロン、騒がしいわよ。でも、エルラ、補助魔法なら私も教えられるわ。師匠と一緒に、しっかり指導するわよ」

リアが微笑みながら言った。

ガルドが静かに頷いた。

「お前が強くなるなら、俺たちも心強い」

アルテミスが立ち上がり、言った。

「では、エルラ、明日から私の弟子として学びなさい。結晶の歴史と力を理解し、補助魔法を習得するのだ。リア達は王都での調査に協力してほしい。闇の使徒の動きを追う必要がある」



翌朝、エルラはアルテミスの研究室で学びを始めた。
部屋は古い書物と魔法の道具で溢れ、結晶の歴史を記した巻物が広げられていた。アルテミスが説明を始めた。

「生命の結晶は、古代の神々がこの世界に残したものだ。記録によると、数百年前、王国が大疫病に襲われた時に最初の結晶が現れて多くの命を救った。だが、その力は強大すぎて争いを引き起こした。結晶は一度失われ、今回の発見まで誰もその所在を知らなかったのだ」

エルラが巻物を覗き込み、尋ねた。

「じゃあ、闇の使徒はその歴史を知ってるから、結晶を狙ってるんですか?」

「その通りだ。彼らは結晶の力を利用し、王国を支配しようとしている。君の補助魔法は、仲間を強化し、結晶の力を制御する鍵になるだろう」

アルテミスはエルラに小さな水晶を渡して言った。

「これを使って補助魔法の基礎を学びなさい。まずは、力を集中させる訓練だ」

エルラは水晶を握り、目を閉じた。
結晶の力と似た感覚が流れ込み、彼女の手から青い光が放たれた。
アルテミスが頷いた。

「ふむ。いいぞ、エルラ。君の素質は本物だ。この光を仲間たちに付与し、力を高める術を学びなさい」




一方、カイたちは王都の裏通りで闇の使徒の情報を集めていた。
タロンが市場で聞き込みをし、怪しい噂を耳にした。

「よお、カイ、どうやらガルシア卿の屋敷で黒いローブの奴らが出入りしてるって話だぜ」

カイが眉を寄せた。

「ガルシア卿か…。僕たちだけで動くのは危険だ。リア、アルテミスに報告しよう」

リアが頷いた。

「そうね。師匠なら、ガルシア卿の動きを抑える策を考えてくれるわ」





その夜、宿屋に戻ったグループはエルラの訓練の話を聞いた。エルラは興奮気味に話した。

「アルテミスさんに、補助魔法の基礎を教わったよ! まだ少ししかできないけど、みんなを強くできる力なんだって!」

タロンが笑いながら言った。

「やっべえ!エルラ、どんどん強くなってるな! そんでそんで??次は俺にどんなパワーアップくれるんだ?」

「ちょっとタロン、ふざけないで。エルラ、補助魔法は戦闘の流れを変えるわ。私は攻撃魔法に集中出来て助かるし、頑張って上達してね」

リアが微笑みながら言った。

カイがエルラの肩に手を置き、言った。

「エルラ、君の新しい力は、僕たちみんなの希望だ。王国の政治状況は複雑だけど、君がアルテミスの下で学べば、結晶を正しく守れる。僕たちも、闇の使徒を追うよ」

ガルドが頷いた。

「お前が強くなるなら、俺たちも負けてられねえ」

エルラは仲間たちの信頼に目を潤ませ、微笑んだ。

「ありがとう、みんな。私、アルテミスさんの下でしっかり学ぶよ。結晶を正しい未来に導くために、みんなと一緒に頑張る!」

夜空の下、王都の灯りが揺れ、グループの絆はさらに強まっていた。
エルラの新たな学びと、仲間たちの決意が、王国の未来を切り開く第一歩となっていた。
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