寄宿生物カネコ!

月芝

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016 カネコ、冒険者になる。

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 ギルドのおっさん、見た目によらず仕事はデキた。
 おかげでサクっと登録を完了する。
 城門のところにもあったレジメ板なる水晶板がギルドにもあったので、それに触れるだけでピコピコっとしてチン! 手続き完了というから驚きだ。
 ギルドの制度や規則とかの細かいことについては、渡された小冊子を読めとのこと。
 う~ん、とってもビジネスライク。
 もっとも見た目がアレで愛想を振りまかれたら、それはそれできっと困惑していたことであろう。

 出来立てほやほや。
 冒険者カードを前にしてワガハイはにんまり。
 いつの間に撮影されたのか、カードは顔写真入りだった。
 カードはとても軽い。プラスチックのようでプラスチックではない。シリコンっぽくてグニグニ曲がる。けど、けっして折れはしない。かなり頑丈らしく、火の中に放り込もうが、魔獣に呑み込まれようが原型を留めるそうな。
 デザインは運転免許に似ている。
 ちなみに初回発行はタダだけど、再発行にはクソめんどうくさい手続きとけっこうな費用がかかるから、くれぐれも失くさないようにと受付のおっさんから念を押された。

 しかしこのカードが凄かった。
 身分を証明するだけでなく、冒険者ギルドと提携している銀行の口座に紐づけられており、カードでお金のやり取りがデキちゃうばかりか、買い物も可能。
 さすがに露店とかではカード払いはムリで、現金が必要となるものの、店舗を構えているところならばたいていカードが使えるというから驚きだ。

 導入時にゴタゴタしまくり。いまだに微妙に使えないマイナ〇バーなんちゃらとは大ちがい。よほどデキる子である。
 やはりこういった技術を導入するには、王様が君臨している国、トップダウンな体制の方がむいているのだろう。
 なお口座はギルドに登録した時点で、自動的に作成されるという。
 でもって依頼達成の報酬はすべて口座に振り込まれる。
 銀行は国営にて、金の流れは国に筒抜けというわけ。そして稼いだ分からは税金がきっちり天引きされると……

「んにゃ? だったらギルドを通さないで仕事を請け負ったらどうなるのにゃあ?」

 いわゆる闇営業というやつだ。
 客と直接やりとりをして、ニコニコ現金払いをすれば、いくらでもチョロまかせるのではなかろうか。
 制度の抜け道についてワガハイが言及すると、受付のおっさんに「フッ」と鼻で笑われた。

「悪いことは言わんからヤメておけ。裏での取引なんざろくなもんじゃないぞ。そもそも、ちゃんと報酬が支払われる保障もないし、ギルドを通していないから当然ながら補填もない。
 なんだかんだとイチャモンをつけられた挙句に、報酬を減らされたり、バックレられてタダ働きなんてこともあるからな」
「あ~~、そういうことにゃんねえ」

 ただでさえ後ろ暗い取引。
 ハイリスク・ハイリターンなだけでなく、取引が無事に終了したあとも気が抜けない。
 背中を向けたとたんにブスリ。
 とか、これをネタに脅され、以降ズブズブの関係に陥り、反社勢力に呑み込まれて、死ぬまでいいようにこき使われ搾取されるハメになる。

 その点、ギルドを通した依頼であれば安心だ。
 実力と実績に見合った仕事を斡旋してくれるし、査定もきちんとやって明朗会計。万が一、依頼内容に不備があっても適正に対処してくれる。ときには熟練の職員がアドバイスや、相談にものってくれる。
 と、いいことづくめ。
 諸々のわずらわしい作業を代行してくれることを考えれば、アガリの一割程度の手間賃なんぞは安い安い。

 冒険者ギルドってば、おもいのほかにしっかりしている。
 伊達に各国をまたいで活動しているわけではないらしい。
 ワガハイはおおいに感心しつつ、受付のおっさんに尋ねた。

「ところで、さっそくにゃんだけど、ワガハイ向けのお仕事はないかにゃあ。さっき違反切符を切られたせいで、懐がずいぶんと寂しくなったのにゃん」
「そいつはお気の毒さま。で、希望はあるか」
「ん~そうだにゃあ。デキたらゴロゴロしているだけでお金が手に入るようなお仕事があるとうれしいにゃん」
「…………ちょっと待ってろ」

 自分で言っておいてなんだけど、てっきりぶっ飛ばされるかとおもいきや、さにあらず。
 こめかみに青筋を立てつつも、受付のおっさんは「探してみよう」と、大きな背中を丸めて専用の端末をピコピコし始めた。
 で、待つことしばし。

「あったぞ。おまえさんにおあつらえむきの依頼が」

 これにはワガハイびっくり!
 驚きのあまり額の第三の目がカッと開き、あやうくカネコビームを炸裂しそうになった。


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