寄宿生物カネコ!

月芝

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101 カネコ、尻に敷かれる。

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 ガンガン暴れまわっているシェイプシフターのロケットパンチ×2。
 そこへカネコに乗った女騎士が突っ込んでいく。

「右斜め後方から来るぞ! 左横からも! あっ、跳ねて軌道が変化した! 上だ!」
「うにゃーっ!」

 騎乗しているパートナーから次々に指示が飛ぶ。
 それに合わせて、ワガハイも飛んだり跳ねたりと忙しい。
 だが、女騎士が周囲に目を配ってくれるおかげで、ワガハイはその分だけ走る方に専念できる。
 う~ん、これが女の尻に敷かれるということなのかしらん。
 案外悪くないな、誰かを乗せて走るというのも。
 ただし、おっさんは却下で。
 なんぞと考えていたら、前方からキラリと光る何かが飛んできたもので、ワガハイはあわてて急停止する。

 カッカッカッ。

 引っ込めた足下、床に刺さっていたのは…………金貨?
 いや、ちがった。金貨に似せた金メッキのコインである。
 放ったのはシェイプシフターだ。口からプップッとスイカのタネを飛ばすみたいに、コインを飛ばしてきた。
 いささか下品な攻撃である。
 だが固い石畳の床にめり込むほどの威力があるから、あなどれない。

 と、動きを止めたところに右横からロケットパンチが轟っと迫る。
 コイン攻撃はそれを狙っての牽制であったのだ。
 まんまとシェイプシフターの策にハマったワガハイは「しまったにゃん!」
 でも、その時のこと。

「おらよっと」

 後方にてウォーハンマーを振り下ろしたのはギルド長である。
 ドッカン! 床を打ち砕き地面を揺らしたとおもったら、次の瞬間――
 ワガハイのすぐ脇に出現したのは巨大な岩の腕、ギルド長による地魔法だ。
 あらわれた岩の手がロケットパンチをむんずと掴む。
 が、それでも回転は止まらない。なおも手の中でギュルギュル暴れている。ガリガリ削れていく岩肌。このままではじきに拘束が解けてしまいそうであったが、そこへ魔法使いが追撃を放つ。

 ゴルフボールほどの大きさにまで圧縮された火球が着弾。
 灼熱の玉は爆ぜることなく内部より対象を溶かして破壊するタイプで、さしものロケットパンチもじょじょに勢いを失っていく。

 それを横目にワガハイたちは、ふたたび進撃を開始する。
 ロケットパンチのひとつを無効化したことにより、格段に進みやすくなった。このままいっきに接敵を試みる。
 させじとシェイプシフターがコインを大量にばら撒き、進路を阻む。
 でも、そのタイミングでワガハイたちとシェイプシフターの間にサッと割ってはいったのは――勇者さま!?
 ビュンビュン飛んでくるコインらをキンキンキン、手にした聖剣にて華麗にさばいてみせる。

 閃く切っ先、風切る刃、銀閃が舞う。
 これまでとはまるでちがう、キビキビしたムダのない動き。
 モブ勇者がここにきて覚醒した?
 なんだかんだで、じつはやればデキる子だったのか?
 ワガハイはその戦いぶりに感心するも、よくよく見てみたら勇者さまの四肢には怪しげな細い光糸のようなものが繋がっていて……

 糸を目で辿っていくと、その先にいたのは聖女である。
 マリオネット――彼女が光糸で勇者を操り戦わせていたのだ。
 聖女の傀儡と化すことで本領を発揮する勇者。
 もはや何もいうまい。
 ワガハイと女騎士はすっと目をそむけて、自分たちがいま成すべきことに集中することにした。

 そんなワガハイたちの体がほんのり光を帯び始めた。
 どんどん力と気力が溢れてくる。
 賢者による支援魔法だ。
 ステータスをアップさせるバフをかけてもらったところで、ついにシェイプシフターの本体のもとへと辿り着いた。

  〇

「かまわん、そのまま突っ込め!」

 女騎士が剣を抜く。
 命じられるままにワガハイは走る。
 両腕をロケットパンチにしているため、シェイプシフターにこちらの攻撃を防ぐ手立てはない。
 かとおもわれたのだけれども、それはいささか早計であったらしい。
 爪先立ちとなったシェイプシフターが、その場で回転を始める。自身を巨大な独楽と化す高速スピン。
 これではうかつに近寄れない、かつ攻撃をもはじかれてしまう。
 なのに女騎士は命令を撤回しない。
 だからワガハイはそのまま突っ込んだ。

 巨大独楽とカネコにまたがった女騎士が激突する。
 刹那、閃光が生じたのをワガハイは見た。
 やったのは女騎士である。キッと敵をねめつける双眸、右の瞳がいつのまにか茶から蒼へと変化していた。
 彼女が放ったのは三連撃。
 銀閃が流星のごとく疾駆、目にも留まらぬ早業にて一撃目と二撃目にてクロスを描いたとおもったら、間髪入れずにその中心を貫く。
 穿った穴の奥にあったのは魔晶石。
 魔獣の急所にて、いかなる強者であってもこれを壊されたらおしまいだ。

 絶叫――

 シェイプシフターは足をもつれさせて、どぅと倒れた。


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