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301 獣王武闘会 第二試合 バトルロイヤル
しおりを挟む敵味方が入り乱れての大乱闘。
最後に立っていた者が勝ちのバトルロイヤル。
いささか消化不良であった第一試合とはちがって、第二試合は波乱のスタート。
これに観客が湧かないわけがなく、出場選手を紹介するアナウンスにもチカラが入る。
ここでざっくりメンバー紹介。
まずはチーム・海獣から。
セイウチ男の伊勢道隆。
でっぷりした巨漢にて、洋梨にちょっと似ている。嘩威勇漢戦闘術の遣い手。
トド男の伊賀泰三。
もっちりした巨漢にて、ひょうたんにちょっと似ている。忍者っぽい苗字だが関係なし。嘩威勇漢戦闘術の遣い手。
オットセイ男の甲賀信也。
細マッチョ。瓜にちょっと似ている。これまた忍者っぽい苗字だが関係なし。嘩威勇漢戦闘術の遣い手。
皇帝ペンギン男の西園寺景。
レディースコミックに登場するイケメンだけどちょっとイジワルな上司っぽい容姿。尊大さが全身からにじみでており、上から目線がたまらない。そんな彼は皇帝拳の遣い手。大会申し込み書類上はチームリーダーとなっている。
ちなみに嘩威勇漢戦闘術とは、打撃あり投げあり関節あり凶器攻撃ありと、プロレスっぽいダイナミックな武術。攻防や見た目がとにかく映えるとの評判にて、熱狂的な支持層を持つ。
皇帝拳は、名前に拳とついているけど構成は手刀と蹴りのみ。連打はない。そのかわりに一打一打がえげつない。
続きましてチーム・尾白探偵事務所。
尾白四伯。
数多の難事件を解決へと導き、ときに悪漢に対して勇敢に立ち向かい、ときに陰謀の渦中へと飛び込みこれを阻止、ときに高月の地を騒がす変態どもを懲らしめ、ときに慮外の魑魅魍魎をも黙らせては、ときにカラダを張って悲嘆に暮れる女の涙をそっと拭う。
あまりの快男児っぷりに、高月の乙女たちをキャアキャアいわせてきたであろう探偵。
種族はよくわからない珍動物。特技は多彩な化け術。誰が呼んだが、百化け怪奇探偵。
タヌキ娘の洲本芽衣。
三大化けタヌキである淡路の芝右衛門直系の血筋。蒼雷との異名を持つ伝説の武人、洲本葵を祖母とし、幼少期より彼女から厳しい手ほどきを受けてきた。狸是螺舞流武闘術の免許皆伝の腕前。数多の武勇伝を着々と量産中にて、畿内では「伝説を継ぐ者」ともっぱらの評判。歩く市松人形みたいな容姿ながらも、夢はステキなシティガールになること。でもそれはきっと武の頂に立つよりも厳しい茨の道であろう。
トラ女の弧斗羅美。
荒事師としてその筋では知られた存在。腕っぷしもさることながら、カラリとした性質、その気風の良さにて周囲から慕われている。妹を溺愛していることも有名。トラは個体数減少が著しく、そのせいであまり遭遇する機会がない生き物。それゆえにトラ固有の武術である滅爛虎慄紅武爪術も長らく幻とされて存在すら疑問視されていたが、彼女の活躍がその疑惑を払拭する。トラ族の未来を担う次世代のホープでもある。
零号。
ネコ耳メイド。詳細は不明。母玄福郎が経営する古書店「知恵の森」にて住み込みで働いている。地域密着型フリーペーパー「ラヴィラント」の表紙を飾った際には、あまりの人気により街中から冊子が瞬く間に消えた。「メイド王決定戦!」なるイベントでは惜しくも準優勝。獣王武闘会へは尾白探偵たっての願いによって参加。このことからも秘めたる実力は相当であると推察される。
以上、計八名によってバトルロイヤルは行われる。
はたして最後まで立っているのは誰か?
◇
「では、はじめませい!」
仰々しく試合開始を告げたわりには、すたこら舞台から逃げた審判。
まぁ、それも無理からぬこと。なにせ敵味方が入り乱れる乱戦となるのだから。巻き込まれたらたいへん。
本音をいえばおれもいっしょに逃げたかった。けれども敵前逃亡なんて観客たちが許してくれそうにない。たちまち大ブーイングの嵐。今後の事務所経営を考えれば、あまり情けない姿はさらせない。
でも逆に考えれば、ここでいいところ、もしくはキラリと光る才能の片鱗でも示せれば、評判になって依頼がいっぱい、報酬もがっぽがっぽ。
今回のバトルロイヤルはチーム戦の意味合いもある。
最後まで立っていた者が所属するチームが二回戦へと進出。
だから「己こそが一番強い」との矜持を示すにしても、まずはウォーミングアップがてら邪魔な相手チームをやっつけてから、となるのが自然な流れ。
各々、たまさか自分の前に立っていた者を目下の対戦相手と定める。
弧斗羅美と伊勢道隆。
トラ女とセイウチ男が互いにメンチを切りまくる。
洲本芽衣と伊賀泰三。
大男を見上げるタヌキ娘。これを平然と見下ろすばかりのトド男は無言で腕組み。
零号と甲賀信也。
メイド型アニマルロボはお人形のようにたたずむばかり。オットセイ男が何やら熱心に口説き文句をベラベラしゃべるも、零号はツーンとお澄まし。
尾白四伯と西園寺景。
「のぞき屋風情の相手をせねばならぬとは、なんという屈辱だ」
と皇帝ペンギン男。
探偵という職業をあからさまに卑下し、バカにされたおれはムカっ。
「そんな相手にやられて地べたを舐めさせられたとき、あんたはどんな顔をするのかねえ」
お返しだとばかりに、おれはベロっと舌を出して挑発してやる。
すると西園寺のこめかみがピクリ。プライドが高そうなイケメンはたいそうご立腹の様子にて、おれは内心で「ケケケ」と意地の悪い笑み。
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