455 / 1,029
455 不法投棄の問題
しおりを挟むいきなりの家宅捜索宣言!
おれと芽衣はあたふた、しらたきさんはとりあえず来客をもてなすべくお茶を淹れに給湯室へと。
で、当のカラス女の不良刑事なのだが強い口調とは裏腹に、ソファーにどっかと腰を降ろしてタバコに火をつけては、のんべんだらりとし始めたものだから、こちらはますます困惑するばかり。
「不法投棄って何だよ? まるで身に覚えがないんだが……。自慢じゃないが携帯灰皿をつねに持ち歩き、タバコの吸い殻一本、その辺にポイ捨てしたこともないぞ」
これは愛煙家として死守すべき最低限のマナー。そして探偵としては必要な心得でもある。無防備に己の痕跡を残すとかありえない。
おれがぶーぶー抗議をすると、安倍野京香が組んだ足にて貧乏ゆすりをしながら説明を始めた。
◇
数日前、とあるゴミ屋敷がきれいに清掃された。
近隣住民たちはようやく苦行のような日々から解放されて「やれやれ」
屋敷を相続した親族も、まずはひと安心とほっと胸を撫で下ろし「やれやれ」
住民たちからやいのやいのとせっつかれていた行政側も、やっとしょうもない仕事から解放されて「ひゃっほう」
とまぁ、関係者一同が浮かれていたのだが……。
せっせと屋敷より積み込まれて、どこぞに運ばれていったトラック数台分にもおよぶ大量のゴミ。
そいつがよもやよもや、またべつのゴミ屋敷の敷地内に放りこまれていたものだから、さぁ、たいへん!
大量に持ち込まれたゴミの袋を調べれば、どこら辺から運んできたのかなんてすぐにわかる。
それで投棄された先の行政から問い合わせがあって、ことが発覚する。
どうやらわずかばかりの予算をケチったばっかりに、悪徳清掃業者にまんまと騙されたらしい。
親族側は怒り心頭。すぐに業者に連絡を入れるも電話は繋がらず。「現在おかけになった番号は使われておりません」ときたもんだ。で、業者から渡された名刺に記載されてある住所にも押しかけてみたが、そんな番地は存在していなかった。
ようやくゴミ屋敷から解放されたとおもったのに、とんだぬか喜び。
一難去ってまた一難とはまさにこのこと。
すぐさま詐欺の被害届を出し、警察が動き出したところで現場を目撃していた近隣住民からとある証言が……。
「清掃員たちはみな全身完全防護状態だから顔とかちっともわからないけれど、そういえばのほほんと素顔を晒しているのが二人ばかりいたような」
漬け込んだオリーブの実のような色のジャケットを着た草臥れたおっさんと、オカッパ頭の小さな娘。
◇
「話を聞いた瞬間にピンときた私は、こうしてすぐにわざわざ出向いてやったというわけだ。署の方に呼び出しても良かったんだがな」
やたらと恩着せがましい台詞を吐くカラス女。
「いや、わざわざもなにも、おれたち無関係だし」
例のゴミ屋敷を相続した親族からの依頼を受けて、清掃作業より先に重要書類の発掘をしていただけのこと。
仕事に際して依頼人と交わした契約書もちゃんとある。相手にたずねてもらえば濡れ衣は一発で晴れる。
はずだったのだが……。
「んなこたぁ、いちいちおまえに言われんでもわかっているさ」
カラス女が茶を淹れてくれたしらたきさんに会釈し、湯飲みを受け取る。
「ゴミ絡みの案件ってのはけっこうめんどうくさくってね。悪質なわりに量刑が軽いもんだから、いくらひねり潰しても後を絶たない。なにせ捨てる側からすれば、楽して儲かるし、不法投棄する場所はどこでもよくって、なおかつ県のひとつやふたつをひょいと跨ぐぐらいわけもないこと。一方でそれを追いかける警察の方は管轄を一歩出るのだけでも、なんのかんのとうるさいったらありゃしない。そこで、だ」
いったん言葉を切ったカラス女。お茶の湯気で曇ったサングラスを拭きながら言った。
「これも何かの縁だろう。四伯、あんた、この件を追いな。もちろん依頼料は出す。なぁにべつに犯人一味をとっ捕まえろとまでは言わないさ。だいたいのところが分かれば、あとはこっちで適正に処理する」
女刑事は神妙な面持ちにてもっともらしいことを言っているが、ようは丸投げである。
変態と怪異に続いてゴミ問題までこっちに押しつけるつもりか。
「冗談じゃねえやいっ、そもそもうち、まったく関係ねえじゃん!」
抵抗するだけ無駄なのはわかっている。だが文句のひとつでも言わなければやってられない。そしてねばってごねてどうにか報酬とは別に、違反切符をいくつかもみ消してもらうことで折り合いをつけた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
消息不明になった姉の財産を管理しろと言われたけど意味がわかりません
紫楼
ファンタジー
母に先立たれ、木造アパートで一人暮らして大学生の俺。
なぁんにも良い事ないなってくらいの地味な暮らしをしている。
さて、大学に向かうかって玄関開けたら、秘書って感じのスーツ姿のお姉さんが立っていた。
そこから俺の不思議な日々が始まる。
姉ちゃん・・・、あんた一体何者なんだ。
なんちゃってファンタジー、現実世界の法や常識は無視しちゃってます。
十年くらい前から頭にあったおバカ設定なので昇華させてください。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます
黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。
だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ!
捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……?
無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!
にゃんとワンダフルDAYS
月芝
児童書・童話
仲のいい友達と遊んだ帰り道。
小学五年生の音苗和香は気になるクラスの男子と急接近したもので、ドキドキ。
頬を赤らめながら家へと向かっていたら、不意に胸が苦しくなって……
ついにはめまいがして、クラクラへたり込んでしまう。
で、気づいたときには、なぜだかネコの姿になっていた!
「にゃんにゃこれーっ!」
パニックを起こす和香、なのに母や祖母は「あらまぁ」「おやおや」
この異常事態を平然と受け入れていた。
ヒロインの身に起きた奇天烈な現象。
明かさられる一族の秘密。
御所さまなる存在。
猫になったり、動物たちと交流したり、妖しいアレに絡まれたり。
ときにはピンチにも見舞われ、あわやな場面も!
でもそんな和香の前に颯爽とあらわれるヒーロー。
白いシェパード――ホワイトナイトさまも登場したりして。
ひょんなことから人とネコ、二つの世界を行ったり来たり。
和香の周囲では様々な騒動が巻き起こる。
メルヘンチックだけれども現実はそう甘くない!?
少女のちょっと不思議な冒険譚、ここに開幕です。
【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!
つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。
冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。
全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。
巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる