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727 バグって忍者ワールド
しおりを挟む全長三メートルほどもある六本腕のロボット。各々の手に剣やら斧などの武器を持ち、絶賛大暴れ中。節々した腕がカクカク、その動きが虫の足みたいでちょっと気持ち悪い。
対する芽衣たちは奇天烈なメカを相手に攻めあぐねているといったご様子。
第一の塔、最上階へときたとたんにバトル展開!
そのくせ天井近くに設置されているスピーカーから聞こえてくるのは、世界的に有名な某アミューズメントパークの「ちゃんちゃら~ちゃんちゃん、ちゃかちゃかちゃんちゃん」とかいうナイトパレードっぽい音楽。
あげくにこんなDJ風アナウンスのおまけつき。
『ウエルカム、トゥ、忍者ワールド! さぁ、九つの塔の試練をクリアして、城に囚われたプリンセスを助けよう』
どうやらこの施設は忍者をモチーフにした遊園地であったようだ。それも外国人が抱くイメージに近しいタイプ。ところどころ難易度がバグっているのはご愛敬。
「うーん、これはどこかから拾ってきて改装でもしたのかな?」
バブリーな好景気に浮かれて軽いノリで手を出したものの、あっという間に経営がぽしゃってしまうアミューズメントパークのケースは枚挙にいとまがない。
それを聚楽第が引き取ったか。なんにしろ酔狂なのはかわらない。
あきれている探偵を横目にバトルはより激化。
「ボク、アニマルロボのあしゅらくん、よろしくね。さぁ、良い子のみんな。愛と勇気と知恵でボクを倒して、第一の塔をクリアしよう」
なんぞと子どもボイスを発しながら、手にした斧を問答無用で振り下ろし、刀で斬りつけ、槍でブスブス突く突く突く。
「台詞と行動がまるでかみあってない! なんかこえーよ、このロボット! とてもじゃねえが、愛と勇気と知恵ごときでどうにかなるとはおもえねーっ!」
探偵、たまらずツッコミ。
すると芽衣が「ぼんやりしてないで、四伯おじさんも手伝って」と無茶を言う。
とはいえ何もしなければ、あとできっと尻を蹴飛ばされるので、おれはしぶしぶ「わかったよ、どれ、変化」
ドロンと化けたのは鉄パイプ。
見た目はなんの変哲もないシロモノ。
鉄パイプを手にした芽衣におれは言った。
「じゃあ、こいつを野球のバットの要領にてぶん回してくれ。えっ、敵に近寄れないから困ってる? ああ、べつに近寄らなくていい。ここでかまわない。相手に向かってフルスイングしてくれ」
頭にハテナマークをうかべつつも、タヌキ娘はぶぅんとひと振り。
おれはタイミングをみて「重ね化け!」
たちまちうにょん、のびる鉄パイプ。さながら如意棒のごとし。
十分な勢いにてガッキーン! ホームラン級の大当たり。
予想外の動きに対応できなかったアニマルロボあしゅらくん。鉄パイプの一撃をまともに喰らって、たまらず吹き飛び壁に激突する。
しかし丈夫な造りらしく、すぐに立ち上がろうとする。
が、そこに殺到したのが燐火さんら白羽の者ども。
タコ殴りにされて、ゲームセット。
「ぎぎぎぎ、やるね。第一の塔クリア、おめでとう。でもこれで勝ったとおもったらおおまちがい。なぜなら、ボクは九天の中でさいじゃ……く……ぷしゅう」
白煙をあげてアニマルロボあしゅらくん、沈黙。
そして閉じられていた扉が開く。
「やれやれ」と一同、扉をくぐって先へと行こうとするも、そのときのことであった。
おれは「関係者用」というパネルの貼られた扉の存在に気がつく。
「あれ? ひょっとしてあっちからなら、直で城に行けるんじゃねえの」
そこを通ればバカ正直に九つの塔をクリアせずに楽してゴールできる。
もしも鍵がかかっていたとて、おれの鍵開けスキルを使えばおちゃのこさいさい。
とか考えつつ、試しにドアノブを回してみたらあっさりガチャリと開いた。「なんと不用心な」他人事ながらちょっと心配になってくる。とはいえありがたく利用させてもらうことにしよう。
「おーい、こっちから近道できるみたいだぞーっ」
おれはさっそくみなに声をかける。
するとタタタと真っ先に駆け寄ってきたのは芽衣。
かとおもえば、いきなりの飛び蹴り。
蹴飛ばれたおっさんは「ぎゃっ!」
で、直後にビュンと風切り音。
ついさっきまでおれが立っていたところをかすめ、奥の床へと突き立ったのは黒い矢。
もしも芽衣が気づいて反応してくれなかったら、おれはいまごろ脳天を串刺しにされていたことであろう。
黒い矢には文が結ばれており、そこにはこう書かれてあった。
『順路をお守りください。違反者にはデスペナルティが課されますので、あしからず』
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