ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

月芝

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11 視る眼

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 選挙のときだけ一致団結。手を取り合ってにっこり笑顔。
 だけど受かってしまえばこっちのもの。気軽に党を離れる政治家たち。
 いくら、つかず離れずが日常茶飯事の政界でも、うしろ足で砂をかけるようなやり方は、見ていて気持ちのいいものじゃない。
 その時どきでコロコロ都合よく変わる主義主張。口だけでなんら行動がともなわず、結果も出せない。そのくせ、ちょいちょい出てくるのは、金と色のスキャンダル。
 忙しいというわりには、けっこう余裕があるじゃない。
 あとマスコミから我が身すらも守れない人が、いったい国の何を守れるんだろう?
 幼いながらにも、「政治家ってなんだかヘン」と小首をかしげる昨今のありさま。

 下校時の通学路にて立ち止まったのは、二人の女の子。
 彼女たちが見上げた先には、異様に白く輝いた歯をみせて笑う政治家のポスター。
 性格の良さが災いして、なにかと級友たちからは雑事を押しつけられ、クラスでもお人好しで通っているミヨちゃん。赤いランドセルがちょっと重たい小学二年生。
 クラスでも無愛想で通っているのだが、ここぞという時に、あまりにも辛辣な毒を吐くので、級友たちのみならず、先生たちからも密かに恐れられているヒニクちゃん。
 彼女は手さげかばん派。人形作家をしているお母さんが、技巧をこらして作ったジーンズ生地のかばんを、入学以来、愛用している。

「このまえテレビで、えらい先生が言ってた。『今の時代、いい政治家がいない』って」

 ミヨちゃんが「えらい先生」と言っているのは、この頃、テレビで見かけない日はないというほどの、売れっ子評論家の大学の教授のこと。
 男ぶりもよく、豊富な知識をおりまぜた話しはとても面白い。語り口は軽妙にして、それでいてどこか斜に構えた態度が、お茶の間でも受けている。
 その人気を背景に、今度は特番のメイン司会をするという。
 素直でミーハーな小学二年生は、わりとテレビの情報を鵜呑みにしてしまう。
 だが素直じゃない小学二年生は、どこか胡乱げなジト目をしている。そんな彼女のお気に入りは、ローカル局にて放送されている、視聴者が持ち寄った骨董品をプロが鑑定する番組。
 渋好みなヒニクちゃんの長らく閉じられていた口が、おもむろに開かれる。

「盆栽、壺、茶器、絵画……。素人にはムリ」

 見る人が見ないとわからない。それは見えていないのと同じこと。
 本当にいないのか? それとも見つけられないだけなのか?
 評論家と政治家、マスコミに有権者、本当は質が悪いのは誰かしら。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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