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100 ハイキング
しおりを挟む今日は学校の遠足にて、近在の山へと来ている。
頂上にて飛び跳ねると、タヌキがお腹を鳴らしているような音がするというので、ポンポコ山と呼ばれている場所。
お年寄りでも気軽に往復できる、緩やかなハイキングコースが人気。
と、いう話であったのだが……。
「ぜえ、ぜえ、なにが……ポンポコ……山よ。お年寄りに……、大人気、ですって? ぜったいにウソ……よ」
急な坂道、鬱蒼と茂る木々、ぬかるみと落ち葉に足をとられ、普段とは勝手の違う山道にて、息も絶えだえなのはアイちゃん。
クラスのオシャレ番長を自認する彼女は、この日のために、バッチリと山ガールの格好を決めてきた。だが山は思いのほかに過酷だった。
「ほら、ムダ口をたたいてると、よけいにバテるよ」
クラスメイトらのほとんどがヘロヘロの中にあって、ひとりケロリとしているのはリョウコちゃん。女子サッカーチームにスカウトされるほどの運動少女は、とっても健脚にてスタミナも充分。同世代とは比べ物にならない体力を武器に、さっきからブツブツと文句を言っている、アイちゃんの背中を押している。
そんな二人の後方から、ヨチヨチついて行っていたのは、ミヨちゃんとヒニクちゃん。
さすがに疲れているのか、ミヨちゃんも口数が少なめ。ヒニクちゃんは黙して、タオルにて額の汗をぬぐっている。
「ほら、あともうちょっとだから、みんな頑張ってー」
先頭を歩くヨーコ先生の声が坂道を転がってくる。
頂上についたら、お弁当とオヤツが待っている。それだけを希望に互いを励ましつつ、懸命に足を動かすクラスメイトたち。
山道の途中にて「落石注意」の看板を見つけて、「こえー」と言ったのは男子の誰か。
まさかの「クマ注意!」の看板を見つけて、「マジか?」と声をあげたのはアイちゃん。
これには一同ビクリ。心なしか、足がちょっぴり早まった。
「さすがにクマはこわいかも。死んだふりはダメなんだよね」
「石が落ちてくるのもイヤだなぁ。当たったら、ぜったいにイタイよ」
いつの間にか横に並んでいたチエミちゃんの言葉に、ミヨちゃんが応える。
ヒニクちゃんもコクンと黙ってうなずいた。
三人で並んで歩いてると、「クマの子どもだったら、あいたい」という話になる。ちょっと前にチエミちゃんが家族で動物園にいったときに、見てきたそうな。ころころとしており、まるでヌイグルミのようだったそう。
「自分もクマさん見たい」と羨ましがるミヨちゃん。
するとおもむろにヒニクちゃんが口を開く。
「クマも落石も、サイズによる」
落石ならば小さいのに限る。だって、ぺちゃんこはイヤだもの。
クマならば小さいのはマズい。だって、もれなくデッカイお母さんがついてくる。
ところで興奮したときにクハッと鳴くから、クマって説があるけど、本当かしら?
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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