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163 集会
しおりを挟むそこかしこに、政治絡みのポスターが張り出されてある。
今度の日曜日に、タウンミーティングが市民会館にて行われる告知。
いつもは閑古鳥が鳴いているという話だったのに、今回は街をあげての盛り上がり。
その理由は、テレビでもよく見かけるイケメン二世議員がやって来るから。老いも若きも男前は大好物。おかげで婦人方を中心にして、ちょっとしたフィーバー。当日は、相当の混雑が予想されているとか。
街の事情をつらつらと語ったのは下校途中のミヨちゃん。近在のお年寄りらとの間に、強固なネットワークを保持している小学二年生。
「おばあちゃんも、めんどうくさいけど、つき合いで顔を出すって言ってた」
そんな話に黙って耳を傾けていたのはヒニクちゃん。
しばし告知のポスターを眺めていたが、あまり興味がないらしく、ついとソッポを向いた。
テクテクと通学路を歩いていると、イヤでもポスターが目に入る。それぐらいたくさんあるということ。
「この人って、ハンサムだとか、さわやかだとか、みんな言うけど……」
実際の役者やモデル、アイドルと比べたら、ぜんぜんモノが違う。
例えば芸人の男前と言われている人が、イケメン俳優と並んだら、「あれ? それほどでもない」といった具合に。
なんというか、ちょっと次元が違うというか、立ってるステージが違うというか、などと言うミヨちゃん。
ようは、このポスターの二世議員が騒がれているのって、周りが古ダヌキだらけの中にあって、一匹だけスマートなキツネが混じったから、目立っているだけじゃないのということ。
ぱっと見はそれっぽく見えるけど、よくよく見れば、そうでもないよね。と幼女は力説。
この意見を受けて、ヒニクちゃんもコクコクとうなづいてみせた。
「ところで、まえから気になってたんだけど」ミヨちゃんは言った。「タウンミーティングって、なに?」
タウンミーティング、地元住民と政治家や行政側の人間が、対話形式にて地域に関する事柄などを話し合う集会のこと。
しかしそんなちゃんとした意味を知らないヒニクちゃん。自身が知り得ることの中から答えを紡ぎだす。
彼女的には、適当にお茶を濁して、結論は出さない。揚げ足をとられないように用心しつつ、耳障りがよくてウケるような言葉を口にする。だけど根本的解決策は何ひとつ出ない。そして「話し合うことが大事なんだ」とかワケのわからないことでまとめる。無駄な時間。
しばし考えこんでいたヒニクちゃん。その口がおもむろに開かれた。
「合法的な票集めの会」
税金をつかって人を集めても罪にならない。
税金をつかって人気を集めても罪にならない。
未来を担うはずの子どもが呼ばれないのは、きっと投票権がないからだと思うの。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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