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しおりを挟むとあるテレビ番組のコーナーに、素人さんの服装を玄人さんがチェックするモノがある。
最新の流行などの情報とともに、キレイなモデルさんが動くマネキンとなり、これを披露する場面もあるのだが、それをリビングのソファーに腰を下ろして見ていた主婦が、不服そうにつぶやいた。
「けっきょくカッコイイ人は、何を着ても似合うのよ」
ぶっちゃけ美男美女は、割烹着を着ようが、モンペを履こうが、長靴でカッポカッポと歩こうが、それなりに絵になる。
ましてやモデルは基本的にカッコイイ人が大半。
そんな連中が着飾って、「はい、コレがいまの流行です」と言われても困る。
というのが、一視聴者の貴重なご意見。
なおその視聴者というのは、性格の良さが災いして、なにかと級友たちからは雑事を押しつけられ、クラスでもお人好しで通っている、ミヨちゃんのお母さんのことである。
休憩時間中、仲の良い五人の女の子らが集まっての、他愛のない会話の一コマ。
「たしかにね……、でも最近はずいぶんと変わってきてるわよ。海外だとやせすぎてたり、過度なボディメイクをしたモデルは採用されなくなったし、服のイメージやターゲットに合った体型のモデルを起用するところも増えてるし」
ミヨちゃんの話を聞いて、答えたのはアイちゃん。
お父さんが服飾関係の会社に勤め、お母さんはデザイナー、高校生の姉は読者モデルとファッション一家。自身もその影響をモロに受けて育ったクラスのオシャレ番長。ゆえにそちら方面の情報には詳しい。
「うーん、でも、やっぱりチヤホヤされるのは、キレイな人なんだよな」
サッカー少女のリョウコちゃんが率直な意見を述べる。
スポーツ業界でもそうなのだが、やはりルックスありきなところがある。美人のアスリートと、普通のアスリート、成績が同じぐらいならば、断然、美人の方にスポンサーが殺到するのが現状。世間も「美しすぎるほにゃらら」とか、すぐに言いたがるし。
「でも、オジさんオバさんがモデルのチラシとかあっても、たぶん見ないかも。まず注目されないことにはダメだしね」
やはり見栄えが大事と力説したのはチエミちゃん。
能力、容姿、考え方、その他もろもろが平均値の域を出ない、直球ド真ん中な子。それゆえに世間全般における主要意見となりうる。新たな可能性や面白味こそないが、彼女の意見を取り入れてさえいれば、きっと安定したヒットを企業は続けることが出来るであろう。
「そうなんだけど、お金をポンと出すのは、たいていそのオバさんとかなんだよねぇ」
ミヨちゃんが身もフタもないことを言ったところで、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「闇は光に恋い焦がれ、底辺ほど天辺に憧れる」
誇大広告はダメ。消費者の誤解を招くような文言も禁止になった。
だけど変わらず、著名人やキレイな人やカッコイイ人が広告塔に起用されている。
実際のところ、ウソもイメージ戦略も、たいして差がないと思うの。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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