ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

月芝

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 モフモフが大好きなのに、モフモフからしこたま嫌われる星の下に産まれた幼女ヤマダミヨ。
 特に興味もないのだが、モフモフの星のプリンセスに産まれた幼女コヒニクミコ。
 なんの因果か、そんな二人が出会い、とっても仲良しになった。
 今日も今日とて、いっしょにルンルンと下校中。

「そういえば、世の中にはいろんなペットを飼ってる人がいるんだねぇ」とミヨちゃん。

 小学校の飼育小屋のウサギたちからも、全力にて逃げられる幼女は、その満たされることのないモフり欲求を、テレビの動物番組にて補っている。
 時代の変遷とともに、より多彩に細分化されていくペット事情。
 ヘビやイグアナなどの爬虫類を飼っている、変わり者。
 大きな毒クモなんかを飼っている、すっごい変わり者。
 ナマケモノとか希少な動物を飼っている者。
 メダカやグッピー、エビ、ハムスターやハリネズミ、イモリやヤモリ、カブトムシやクワガタ、フクロウ、カワウソやペンギン、クマまで飼っているというのだから、驚かされる。
 SNSなどで注目を集めたいがゆえに、珍しい動物をわざわざ飼う人までいるというから、驚きを通り越して呆れるばかり。

「カワウソとか、かわいいけど、水まわりがビチャビチャでたいへんだって、この前、テレビでやってた」

 珍しい動物を飼うには、かなりの覚悟と、かなりの手間と、かなりの財力が必要。
 それこそ専門の飼育員になるぐらいの知識量が求められる。うっかり飼育放棄して野に放とうものならば、世に有名なアライグマ事件の再来となろう。

 アライグマ事件。
 動物と人間との交流を描いた、某ハートフルアニメの人気に便乗して、じゃんじゃん輸入して、じゃんじゃん販売したのはいいが、見た目に反して気性の荒い動物にて、ちっとも懐きやしない。手に負えなくなった無責任な飼い主が捨てたのが、野生にて逞しく生き残って、絶賛、増殖しては生態系を破壊中。
 同様の事件は枚挙にいとまがない。
 結局、飼育用だとか、養殖用だとか、毛皮目的だとかで持ち込んだ動物で、環境に悪影響が及ばなかったモノのほうが稀有。
 しょせん、自分らの都合で自然をコントロールしようだなんて、人の驕り以外の何ものでもない。

 なんてマジメな話を交えつつも、「カワウソ、かわいいけどね」と微笑むミヨちゃん。ちらりとチャームポイントの八重歯がのぞく。
 どうしてコレで動物に嫌われるのかと、思わずにはいられないヒニクちゃん。
 モフモフにはとことん嫌われるが、魚類とか昆虫類、あとホモサピエンスには大人気だというのに……。

「このまえミニブタってのも出てたんだけど、ぜんぜん小さくないの。こーんなに大きいんだよ」

 両腕をいっぱいに広げてみせるミヨちゃん。たしかにソレは、もう、立派なブタだろうというサイズ。
 なんかヘンなのー、とケタケタ笑うミヨちゃんが、ふと、急に口をつぐむ。
 鼻先をスンスンさせて、何やらニオイを熱心に嗅いでる。
 ヒニクちゃんもマネをしてスンスン。
 すると美味しそうなニオイが確かに漂っている。
 思わず、「くぅ」と可愛いお腹の音を鳴らしたのはミヨちゃん。
 フラフラとニオイに釣られて歩いてみれば、そこは商店街にあるお肉屋さんの前であった。

『特製チャーシューあります』

 店先のチラシにて告知されてある。
 特売日の激安コロッケが、子どもや若者らに人気のお肉屋。チャーシューも大人気にて、あっという間に売り切れてしまう幻の逸品。もう経営が先細りの肉屋をヤメて、総菜屋になればいいのに。
 こうしちゃいられないと、家路を急ぐ幼女たち。
 帰ってお母さんに、今夜のオカズにおねだりするつもり。

「そういえばペットが亡くなったら、人と同じようにするんだよねぇ」道すがら、ミヨちゃんが言った。「ミニブタもやっぱり焼いちゃうのかな」

 ペットとして飼われていたから、さぞや、健康的かつ、いいモノを食べて、愛情たっぷりに育ったブタちゃん。それは飼育業者が丹精込めて育てた家畜と同等、いや、一匹に集中している分だけ、それ以上なのかも、とか考えちゃった幼女。やわらかジューシーな肉質を想像して、思わずゴクリ。
 そこまで聞いたヒニクちゃん。みなまで言うなと、おもむろに口をはさんだ。

「最近の火葬場の機械は、ニオイもケムリも一切出なくて、超優秀」

 その気になれば、ムシも獣も、たいていのペットは食べれられるらしい。
 もっともブタを飼っている人は、心情的にブタ肉は食べないかと。
 だけど、いざとなったら、その逆は充分にありえると思うの。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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