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203 悪党
しおりを挟むヤマダ宅のリビングにて、テレビを見つめるこの家の末の娘のミヨちゃんが、プリプリ怒っている。
とっても楽しみにしていた「天空の古代遺跡・幻の文明を追う」の再放送がトンだからだ。
本放送のときは時間が遅かったので、録画しておいたのだが、これをお父さんがうっかり消してしまった。その時は、お土産のいちごの大きなショートケーキで手を打つ。
録画していた人がいないか近しいところを当たってみるも、あいにくと誰もいない。
これも縁がなかったのだろうと諦めたミヨちゃん。だが三ヶ月後、チャンスが訪れた。だからお茶とお菓子を用意し、トイレもすませて、準備万端で待っていたというのに、開始わずか五分にてプツリと画面が変わる。
映ったのは油ギッシュで不健康そうな肌の色をした、政治家らがニギニギと手をとり合う姿。またぞろ新党結成である。
「また、このパターンかっ!」
なんというか、巡り合わせが悪いのか、たまたまなのか、ミヨちゃんが楽しみにしているドラマとか特番とかが、この手の出来事とよく重なってはツブされる。これには人のいいことには定評のある幼女もカンカン。
しかも画面下のテロップにて、今後の再放送予定は未定との文字。来週、改めてとかだったら、まだ許せたというのに……。
キャラメル色のくせっ毛を逆立て、「シャーッ」と猫のように怒っている。
そんな友人を、「どうどう」と宥めていたのはヒニクちゃん。
特番の再放送につき合うつもりにて、ヤマダ宅にお母さん特製のマドレーヌを手土産にお邪魔していた。
騒いでいる孫娘に何ごとかと、おっとり刀にてリビングに顔を見せたのはおばあちゃん。
孫より理由を聞き画面を見つめて、「なんだいなんだい。嫌われ者同士が集まって、連中も懲りないねえ」と新党結成に呆れ顔。
それもそのはず、中心となる顔ぶれがとにかくヒドイ。
ひとりはかつて政界のフィクサーとか言われていたが、絶えずつきまとう黒い噂がついに露見して、トップの座から引きずり降ろされ放逐された者。
ひとりは裏金献金疑惑、利益供与、関係各所にていらざる口を挟んでは、トラブルを引き起こしまくっていた地元では剛腕で通っているお山の大将。
ひとりは女性問題がボロボロと出るわ、出るわ。議会中にも関わらず抜け出しては愛人と官舎でイチャイチャしていたところをすっぱ抜かれて、信用が地に落ちた人。
こんな三人が中核となって結成された党。
いったい、どこの誰が何を期待するというのであろうか。
あげくに新党の名前を公募するとか言い出して、集ったマスコミ関係者らも呆れて、あっけにとられている。
「チーム戦力外でいいと思うよ」
急激に沸騰していたのが、阿呆な大人たちの姿にストンと冷めたミヨちゃん。凍えるような目にて、そんなことを口にした。
ぶふっと吹き出すおばあちゃん。
これを受けて、おもむろにヒニクちゃんがポツリ。
「悪党」
いろいろと言いたいことはあるけれど、
アレを選んだ大人たちがいることだけは、間違いない。
この国、もう、ダメかもしれない。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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