ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

月芝

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241 続々参観日

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 給食の時間にもなると、参加している親御さんらの数は三分の一ほどに減っていた。
 運動会にはわりと理解のある職場も、授業参観はそれほどでもない?
 時間の許すかぎり、子どもたちの授業風景を眺めた後に、勤め先に直勤という人も多いみたい。
 残った三分の一でも給食まで付き合うとなると、さらに数を減らす。

 みんな家ではいつも親といっしょに食事をとっているというのに、教室での給食となると、なんとなく緊張しちゃうのか、ちょっといつもよりおとなしい給食の時間。
 とりわけヘンな緊張感が漂っているのが、とある班のところ。

 クラスのオシャレ番長のアイちゃん。
 バツグンの運動神経を誇るサッカー少女のリョウコちゃん。
 容姿、能力、その他もろもろが平均値におさまる偉大なる凡、チエミちゃん。
 キャラメル色のくせっ毛と笑うとのぞく八重歯、お人好しだけど友だち想いなミヨちゃん。
 一日百文字前後で過ごす超省エネ幼女のヒニクちゃん。
 クラス内どころか学年内、いや、下手をすると校内でもかなり濃いメンバーが、神様のいたずらにて集まった班。
 しかも今日はそこにヒニクちゃんの両親が揃っている。
 屈強な体にオールバックにまとめた黒髪、サングラス姿のコヒニイサム。
 黒髪ロングのストレート、人形作家ゆえに工房に引きこもりがちなせいか、とっても色白美人なコヒニサユリ。
 夫婦揃ってどころか娘もまとめて、とっても無口なコヒニ一家。
 未来からきた殺人サイボーグといにしえの黒魔女カップルを前にして、どうしたって表情が硬くなりがちな班の面々。
 まるで動じることなく、普段通りなのはコヒニ家とはズブズブな関係にあるミヨちゃんぐらい。

 この場に居合わせることになった幼女たち。しかし反応はまちまち。
 アイちゃんの目はサユリさんの艶やかな黒髪にくぎづけ。「ブラッシングしたい、セットしたい」との意思が透けて見えている。
 リョウコちゃんの目はイサムさんの厚い胸板にくぎづけ。どうやらスポーツ少女はたくましい男性が好みだったみたい。
 ミヨちゃんはニコニコと揚げパンを頬張っている。
 そんな三人とは対照的にすっかり縮こまっていたのはチエミちゃん。
 前々からコヒニイサムのウワサは耳にしていたが、聞くと見るとは大違い。ましてや真向かいの席に座ったら、とにかく圧がすごい。おもわずスプーンを持つ手がカチカチふるえてしまうのを止められないチエミちゃん。

「イサムさん、食事のときぐらいサングラスをとったら」

 妻のもっともな言葉にうなづいた夫。
 だがよかれと思ったことが完全に裏目に出る。
 なぜ彼がいつもサングラスを着用しているのか。ソレはその体格と合わせるととっても狂暴に見えて、周囲を怯えさせてしまうから。その鋭い眼光を見て堅気だと思う人はまずいないという、イーグルアイ。
 ふつうの感性を持つチエミちゃん、チラリと目が合っただけで、神経が耐えきれずノックダウン。
 保健係が緊急出動する事態になって、和やかなハズの給食の時間が一転してけっこうな修羅場に。
 ちょうどそのとき、デザートのフルーツゼリーに着手しようとしていたヒニクちゃん。その手を置いて、ぽつりとつぶやいた。

「一皮むけばみな同じと言うけど、その一皮が問題なのよね」

 私の分のフルーツゼリーが一つ。お母さんの分のフルーツゼリーで二つ。
 お父さんの分のフルーツゼリーと合わせて三つ。
 これらはとりあえず、あとでお詫びにチエミちゃんにあげようと思うの。 
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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