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253 戦いのあと
しおりを挟む日曜日のお昼過ぎ、公園の池のほとりにあるベンチにて、魂が抜けたように放心していたのは、キャラメル色のストレートさらさらヘアーのミヨちゃんと、いつも以上に艶々サラサラヘアーのヒニクちゃん。
先日の午後におとずれたクラスのオシャレ番長のアイちゃん宅にて、母と二人の娘の三人がかりで、散々にもてあそばれた幼女二人。
事前の約束ではアイちゃんがちょっと髪をいじるだけという話だったのに……。
あれよあれよという間に、全身コーディネートという名の着せ替え人形あそびを強要された。
それでも夕方には解放されるからと、じっと耐え忍んでいたのだが、気がつけば外は真っ暗。
そしていつの間にか姿を消していたママさんが、喜色満面にて戻り「二人の家には今夜はお泊りって連絡を入れておいたから」
夕飯は美味しかった。
アイちゃんママは仕事と家事を両立するスーパーウーマン。料理の腕もすばらしく、チラシずしは絶品だった。デザートの美肌効果ばつぐんのフルーツたっぷり特製ゼリーもプルプルだった。
夕食後も人形遊びは続く。
さすがにミヨちゃんが精神と肉体の疲労により、うつらうつらし始めたところで、ようやく解放されたと思ったら、今度はお風呂場での攻防がはじまる。
アイちゃん、ミヨちゃん、ヒニクちゃんの幼女三人と女子高生との戦い。
お金持ちの家の浴室ゆえに、これぐらい一度に入っても余裕の広さなのがうらめしい。
なんとか幼女パラダイスに突入しようと目論むマイ姉さん。
それをさせじとアイちゃんが奮闘。
姉妹の騒ぎをききつけたママさんが顔を出したところで、戦いは終わるかとおもったのに、「アイちゃん、ママならいいわよね?」
味方かとおもわれた援軍が、実は敵の増援!
すりガラスの扉ごしにモメるサトナカ家の女性陣たち。
そんな様子を湯船に肩までつかりつつ、百を数えながら見守るミヨちゃんとヒニクちゃん。
アイちゃんの生お尻をさんざんに眺めるという意味不明な状況下に、もはや思考は放棄することにした。
いいお湯だったと、ほっとひと息する間もなく、ぬれた幼女たちの髪の手入れに精を出すアイちゃん。
彼女によればドライヤーの当て方ひとつでも、翌朝にはかなりちがいがでるそうな。
ナノとかマイナスイオンとか、なんだかよくわららないモノを熱風といっしょに吐き出す、うん万円もするドライヤーの風に吹かれて、風呂上りの火照りをとったミヨちゃんとヒニクちゃん。
小学二年生の身の上にて、あまり夜更かしはよろしくないと、早々にアイちゃんの部屋に用意された布団にもぐり込もうとしたら、そこにマイ姉さんの姿が。
そしてまたしても始まる姉と妹の攻防。
すでに疲労困憊な幼女たちは、とてもつきあいきれないと、アイちゃんのベッドに二人してもぐり込んで、さっさと寝た。
だって床に敷かれた客用布団の上では、姉妹が仲良くプロレスごっこをしていたので。
朝になって目を覚ましても苦行は続く。
結局、お昼までみっちり人形遊びにつき合わされて、ようやく解放されたのが、ついさっき。
「わたし、ショーウィンドーのマネキンの気持ちが、いまならよくわかる。あと着せ替え人形の気持ちも。むかしは人形の服をいっぱいもってる子とか、うらやましいって思っていたけど、あれって人形にとっては悪夢そのものだね。オーナーの気まぐれでとっかえひっかえだよ。自分がすきで着替えるのと、人にしいられるのとでは、おおちがいだよ」
陽の光を受けてきらめく水面をみつめながら、ミヨちゃんがブツブツ。
コクンとヒニクちゃんもうなづいて同意をしめす。
ここで今朝からひと言も発していなかったヒニクちゃんが、おもむろに口を開いた。
「とりあえずモデルと先生にはなるもんじゃない」
求められるままに、着たくもない服を着て、笑顔を浮かべて、
カメラの前でポーズを決めるモデルさんたち。
派手な見た目だから、ちゃらちゃらしているとか偏見を抱いて、ごめんなさい。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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