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301 超合金

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 することがなくなったら、自宅の庭にある物置を漁るにかぎる。
 なにせここにはミヨちゃんの二人の兄たちの想い出の品がゴロゴロ。
 年齢が離れているがゆえに、うまれる世代間ギャップ。
 それを古臭いと考えるか、一周回って新しいととらえるか。
 ミヨちゃんは後者であった。しかも男と女という性別までもがそこに横たわるので、女の子の目線からすると、兄たちが夢中になっていたモノというだけで、とっても目新しい。
 だから今日も今日とて、仲良しのヒニクちゃんとガサゴソ。
 何度も漁っているので、すっかり手慣れた調子にて、これはと睨んだダンボールを取り出しては、中身を確認。
 すると出てきたのは、なにやらゴツイ箱に入ったオモチャ。

「これは、ロボットだよね」

 パッケージのイラストをみれば、むかーしのアニメのロボット。
 いまはすっかり戦隊ヒーローモノに登場するロボットのオモチャが主流となっており、この手の品はめずらしい。
 だが箱から出してみると、アレ? と小首をかしげずにはいられない幼女たち。
 だってイラストと実物の姿がまるでちがうんのだもの。

「なんだかぜんぜんちがうよね。サギ商法とかいうやつかな」とミヨちゃん。

 カニとかおせち料理の通販で、豪華な画像とお得な値段にひかれて頼んでみたものの、届いた品物を見てびっくり! なにコレ、中身スッカスカじゃない。入っているはずのモノが入っていないじゃない。写真と全然ちがうじゃない。といったヒドイ目にあうインチキ。
 さいわいヤマダ家では、いまのところ大きな被害は受けていない。
 せいぜい次兄のタカ兄が表紙買いした小説が、中身とぜんぜんちがう! とボヤく程度ですんでいる。

「それにしても……、重い。これはヤレる重さだよ。うっかり足の上にでも落としたら、とんでもないことになるよ」

 実際に手に持ち、本当に子どものオモチャなのかと疑問を禁じ得ないミヨちゃん。
 じじつ鉄の塊のように重たい。

「ちょうごうきん? ってなんだろう。めずらしい素材だから重いのかなぁ。ひょっとして見た目はダサいけど、いい品なのかも」

 箱にかいてある超合金の文字。
 なんだかよくわからないけれども、スゴいパワーを感じる言葉。
 たしかに叩いても殴っても、壁にぶん投げてもこわれそうにはないけれども。
 そんな頑丈そうなオモチャの人形。
 これで何をどうやって遊べというのか? 幼女たちの悩みはつきない。
 箱をじっくりと眺めていたヒニクちゃんが、とある箇所を指さす。
 そこにはこのオモチャに秘められたギミックの数々の説明が。

「えーと、なになに、腕のボタンを押すと、パンチが飛び出します」

 ポチっとすると、飛び出した拳が十センチばかり跳ねてポトっと落ちた。
 それを見たミヨちゃん。「これで何をどうあそべと。これならたぶんノック式のボールペンの方がよっぽどバネが強いよ」

「あとは背中のボタンをおすと目がひかる。これは電池を入れないとダメだね。他は……、背中のツバサみたいなのがとれるのか。これを合体とか、なんだか昔の子どもがふびんだよ。いまのなんて十とかでムリやり合体するのに」

 昨今の戦隊ヒーローものに登場する合体ロボットを引き合いに出すミヨちゃん。
 合体して大きくなるのはいいんだけど、そのたびに巻き込まれる街はたまんないよね、毎回ビルとかどっかんどっかんだよ。とか冷めた意見を口にする。
 その手の話題にはうといヒニクちゃんは、とりあえず適当に相槌をうっておく。
 いろいろひと通り試した幼女たち。
 はっきりいってちっとも面白くない。
 結果として「これで楽しめるって、男の子ってふしぎだね」という結論にたっした。
 そしてここでおもむろにヒニクちゃんが口を開く。

「男の子も女の子も基本的には人形好き」

 ロボットやフィギュアも人形といえば人形。
 着せ替え人形やぬいぐるみとかも人形。
 なぜヒトはヒト型を求めるのか? 支配欲求とかだった悲しすぎる。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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