327 / 1,003
327 デスゲーム
しおりを挟むお昼休みの教室の片隅にて、ミヨちゃんとチエミちゃんが話題にしていたのは、先日発売された少女マンガの月刊誌。新たにはじまった新連載について。
おおまかなストーリーはこうだ。
放課後に教室にのこってお喋りに興じていた男女七人の中学生たち。
すると突然、窓の外が暗くなって、おかしなことに。
窓は開かず、教室の扉も。
あわてふためく一同。
するとピンポンパンポンと始まった校内放送。
「ようこそ、これからみなさんにはゲームに参加してもらいます。ルールは簡単、一日ごとに投票を行って、一人を選出。それをみんなでザクザク殺っちゃうだけです。最終的に三名となるまで続きますので。それではゲームスタート」
謎の声から開始を告げられたデスゲーム。
はじめは性質の悪い冗談かと、とりあわなかった面々。
いつの間にか廊下側の扉が開くようになっていたので、さっそく校舎を抜け出そうとするのですが……。
といった感じの、ホラーとミステリーとサバイバルがごちゃ混ぜになったかのような内容。
なかなか過激な展開になりそうで、主な読者が小学生の雑誌にしてはいかがなものかと思われるが、実はそうでもないんだとか。
フィクションやファンタジー、ホラーの名のもとに、わりとやりたい放題なのが実情なんだとか。
おかげで年々過激な傾向に向かっているとかいないとか。
「さいきん、この手のデスゲームネタ多いよね」
「うん、ふえたふえた。あちこちで似たようなのやってる」
「昔は修学旅行先で客船とか飛行機がダメになっての、サバイバル生活とかだったけど、ここのところ理不尽なファンタジー展開ばっかりかな」
「べつにおもしろければ、なんでもいいんだけど……、ちょっと安直かなぁ。ひと昔まえのハリウッド映画みたいで、展開が読めちゃう」
「主人公とヒロイン、その他みたいな?」
「そうそう。本性が出て人間関係がぎくしゃくとか」
「闇落ちとか、暴走とか、仲良しなんてウソ、まえから嫌いでしたーとか」
「あー、ありがち。あと黒幕が神様とかも」
「それも多いパターンだね。ある意味、神さまのお遊びだから許されるみたいな」
ミヨちゃんとチエミちゃんたちがそんな会話をしているのを、すぐそばでじっと聞いていたヒニクちゃん。内心では最近の少女マンガも、ずいぶんと殺伐としてきたものだと考えていたが、特に口に出すことはない。なにせ彼女は一日平均百文字前後で過ごす省エネ幼女。発言は最小限にて、聞き手に徹するのがいつものスタイル。
それをよく知っているミヨちゃんとチエミちゃんも、あえてムリに話をふったりはしない。
新連載について、今後の展開を予想し合う二人。
ミヨちゃんは「メンバーたちの誰かが、どこぞの神さまに願掛けした」という予想。
チエミちゃんは「ヒロインの闇落ち」を予想。
散々にブツクサ言っていたわりには、「どっちかなぁ」となんだかんだで次回を愉しみにしている幼女たち。
するとそこへ通りかかったのは担任のヨーコ先生のジャージ姿。
教室に用事があったわけではないみたいで、そのまま素通りして行ってしまった。
それを見て、おもむろにヒニクちゃんが口を開く。
「あれこそリアルサバイバーヒロイン」
三十路手前の独身女教師。彼氏いない歴ほにゃらら。
子どもにはモテモテだけれども、同年代からはサッパリ声がかからない。
晩婚化が進んでいるとはいえ、やはり境界線を意識しちゃうもの。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
0
あなたにおすすめの小説
乙女フラッグ!
月芝
キャラ文芸
いにしえから妖らに伝わる調停の儀・旗合戦。
それがじつに三百年ぶりに開催されることになった。
ご先祖さまのやらかしのせいで、これに参加させられるハメになる女子高生のヒロイン。
拒否権はなく、わけがわからないうちに渦中へと放り込まれる。
しかしこの旗合戦の内容というのが、とにかく奇天烈で超過激だった!
日常が裏返り、常識は霧散し、わりと平穏だった高校生活が一変する。
凍りつく刻、消える生徒たち、襲い来る化生の者ども、立ちはだかるライバル、ナゾの青年の介入……
敵味方が入り乱れては火花を散らし、水面下でも様々な思惑が交差する。
そのうちにヒロインの身にも変化が起こったりして、さぁ大変!
現代版・お伽活劇、ここに開幕です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
狐侍こんこんちき
月芝
歴史・時代
母は出戻り幽霊。居候はしゃべる猫。
父は何の因果か輪廻の輪からはずされて、地獄の官吏についている。
そんな九坂家は由緒正しいおんぼろ道場を営んでいるが、
門弟なんぞはひとりもいやしない。
寄りつくのはもっぱら妙ちきりんな連中ばかり。
かような家を継いでしまった藤士郎は、狐面にていつも背を丸めている青瓢箪。
のんびりした性格にて、覇気に乏しく、およそ武士らしくない。
おかげでせっかくの剣の腕も宝の持ち腐れ。
もっぱら魚をさばいたり、薪を割るのに役立っているが、そんな暮らしも案外悪くない。
けれどもある日のこと。
自宅兼道場の前にて倒れている子どもを拾ったことから、奇妙な縁が動きだす。
脇差しの付喪神を助けたことから、世にも奇妙な仇討ち騒動に関わることになった藤士郎。
こんこんちきちき、こんちきちん。
家内安全、無病息災、心願成就にて妖縁奇縁が来来。
巻き起こる騒動の数々。
これを解決するために奔走する狐侍の奇々怪々なお江戸物語。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
柳鼓の塩小町 江戸深川のしょうけら退治
月芝
歴史・時代
花のお江戸は本所深川、その隅っこにある柳鼓長屋。
なんでも奥にある柳を蹴飛ばせばポンっと鳴くらしい。
そんな長屋の差配の孫娘お七。
なんの因果か、お七は産まれながらに怪異の類にめっぽう強かった。
徳を積んだお坊さまや、修験者らが加持祈祷をして追い払うようなモノどもを相手にし、
「えいや」と塩を投げるだけで悪霊退散。
ゆえについたあだ名が柳鼓の塩小町。
ひと癖もふた癖もある長屋の住人たちと塩小町が織りなす、ちょっと不思議で愉快なお江戸奇譚。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冒険野郎ども。
月芝
ファンタジー
女神さまからの祝福も、生まれ持った才能もありゃしない。
あるのは鍛え上げた肉体と、こつこつ積んだ経験、叩き上げた技術のみ。
でもそれが当たり前。そもそも冒険者の大半はそういうモノ。
世界には凡人が溢れかえっており、社会はそいつらで回っている。
これはそんな世界で足掻き続ける、おっさんたちの物語。
諸事情によって所属していたパーティーが解散。
路頭に迷うことになった三人のおっさんが、最後にひと花咲かせようぜと手を組んだ。
ずっと中堅どころで燻ぶっていた男たちの逆襲が、いま始まる!
※本作についての注意事項。
かわいいヒロイン?
いません。いてもおっさんには縁がありません。
かわいいマスコット?
いません。冒険に忙しいのでペットは飼えません。
じゃあいったい何があるのさ?
飛び散る男汁、漂う漢臭とか。あとは冒険、トラブル、熱き血潮と友情、ときおり女難。
そんなわけで、ここから先は男だらけの世界につき、
ハーレムだのチートだのと、夢見るボウヤは回れ右して、とっとと帰んな。
ただし、覚悟があるのならば一歩を踏み出せ。
さぁ、冒険の時間だ。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる