ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

月芝

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 少女マンガの世界にはさまざまなカップリングが存在する。
 その中にあって、いまだに人気が衰えないのが教師と生徒のラブラブゲーム。
 若い世代の読者層には、イケメン教師と女生徒が大人気。
 そうじゃない読者層には、女教師と男子生徒なんてのが大人気。
 が、これはあくまでマンガの世界でのお話。
 現実にこのカップルが存在して、これが発覚しちゃうと……。

「なぜだかニュースになっちゃうんだよねえ。これだけ歳の差カップルとか、世に受け入れられているのに、やたらと世間の目がきびしい」

 実際のところ、どれくらいリアルに存在しているのかはわからない。
 でもことが露見すると、けっこうな騒ぎとなって世間から袋叩き。
 当人同士がちゃんと考えての自由恋愛ならば、なんら問題ない。もちろん節度あるお付き合いが大前提ではあるけれども。
 トラブルが起きているのならばともかく、いい感じの関係ならば外野がヤイヤイ言うな。
 それが少女マンガをこよなく愛するミヨちゃんの主張。
 ある日の教室でのひとコマである。

「まぁ、その節度の線引きがむずかしいよなぁ。手つなぎはいいけど、キスはダメとか」

 そう言ったのはスポーツ少女のリョウコちゃん。
 監督と選手とか、コーチと選手とか、先輩と後輩とか、リョウコちゃんもそれなりに憧れるシチュエーションはあるという。だが彼女が所属しているのは女子サッカーチームにて、周囲は全員女。たまに男も顔を出すが、基本おっさん。グラウンドにあるのは汗と根性だけで、ラブはないと断言。
 というか、チームプレイが信条のサッカーにて、教え子に手を出すコーチとか、ちょっと信じられない。
 まず間違いなくチームにヒビが入る案件に発展することであろう。

「大学教授と女子大生なら年齢的にもオーケー。高校教師と生徒だとギリアウト。中学校以下だと全部ダメ。ただし生徒側が卒業し十八歳を迎えた後ならば問題なし」

 なんとも杓子定規な線引きをしたのはチエミちゃん。
 つねに世間のボーダーラインの上をひた走る偉大なる凡ならではの、極めて常識にのっとったご意見。
 でもこれには口にした当人を含めて全員が「夢ないよねえ」
 小中高大でずいぶんと印象が変わる教師と生徒のラブストーリー。

「いや、イケメン教師限定って、ちょっとひどくない? なかには渋い中年教師ってパターンもあるでしょう」とはアイちゃん。

 実際のところ教師と元教え子が結婚するというパターンは、けっして少なくはない。
 ただし、在学中にどうこうなったわけではなくって、卒業後に再会してから発展するケースがほとんどだとか。
 乙女心にいかなる感情の変遷があったのか。その詳細はわからない。
 尊敬が愛情に変わったのか。教師もまた一人の男だと認識したのか。あるいは厳しい人だと思っていた相手の意外な一面を知ったがゆえか。

「海外だといろいろ発覚して裁判沙汰にまでなったけれども、なんだかんだで愛を成就した話なんかもあるよね」とミヨちゃん。

 禁断の関係を貫き、ゴールを果たすパターン。
 ハッピーエンドだけれども、やっぱり途中でわちゃわちゃしちゃう。
 愛の尊さを説く大人たち。でもその愛を否定するのもまた大人たち。
 そのくせ芸能人とかがえらく若い女房を貰うと、これを称賛してうやらましがったり。
 幼女的には「愛は愛なのに、なんで?」と首をかしげざるをえない。
 これを前にしてこれまで沈黙を守っていたヒニクちゃんがおもむろに口を開く。

「周囲の反対と秘密の共有は愛のスパイス」

 古来より愛は障害があるほどに燃え上がるという。
 教師は大人だし立場もあるから、わりと自制が効くけれど。
 生徒のほうはまだ子ども。だからついついポロリしちゃう。
 でも理性が働いている時点で、それは本物? とか考えちゃう。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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