ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

月芝

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 テレビゲームが市民権を経てけっこうな歳月が流れた。
 数多の名機と呼ばれた家庭用ゲーム機が誕生した一方で、市場競争に敗れ惜しまれつつも消えていったモノも多い。
 膨大な数のゲームタイトルも産み出され、おそらくどこぞの石油王とか王様でもないと、すべてを手中に収めるのは不可能なぐらい。
 それこそ星の数ほどのという表現がぴったり。
 良作と呼ばれ伝説になったタイトルもあれば、駄作過ぎて逆に伝説になったタイトルもある。
 有象無象に埋もれて陽の目を見なかった隠れた傑作なんてものも少なくはない。
 開発会社がとっくに倒産しちゃっているのに、ウン十年後に大ヒット! とかして時代がようやく追いつくなんていう皮肉なケースもある。
 ゲームの業界はどんどんと発展し、より高度化。
 ついにはスポーツ化して国際大会やプロゲーマーなんてものも登場する時代になった。
 かつて子供に向かって「ゲームは一日一時間まで」と目くじらを立てていた大人たちも、いまでは「プロになって一攫千金。老後ウハウハ安泰」とか言い出すように。
 そんな時代の片隅にて、最新のゲーム機と、最新のゲームタイトルをまさにこれからプレイしようとしていたのはミヨちゃんとヒニクちゃんたち幼女二人。

 ミヨちゃんのお宅には大学院生と高校生の二人の兄がいる。
 男の子はとくにゲーム好きが多くて、彼らもわりとよく遊んでいる。
 が、末妹のミヨちゃんはゲームがあまり得意ではない。
 まずコントローラーが小学二年生の小さな手には大きすぎる。また身近にあったゲームの種類が、どうしても男向けのタイトルばかりとなるので、あまり好みに合わなかったことも理由のひとつ。
 血がドバドバでるのはイヤだし、ちびちびレベル上げとかもめんどう。
 派手なアクションだと画面を見ているだけで目がチカチカ、動きも速すぎてよくわかんない。
 ルールがあんまり複雑なものはダメだし、パズル系もパニックになっちゃう。
 なによりせっかくのいい天気の日に、家に閉じこもってかちゃかちゃコントローラーをいじっているのなんて、もったいないと考えてしまう。
 幸か不幸か、ミヨちゃんの周囲の友だちにしても、あまりゲームをプレイする子がいないせいか、いまのところ幼女はあまり興味がない。
 そんな彼女がヒニクちゃんを誘ってのゲームプレイ。
 というかこれは長兄に頼まれたから。
 なんでもこのゲームを制作したのが長兄のゼミの先輩が就職した会社らしく、幅広い層の意見を聞きたいからと、ムリヤリゲーム機ごと押し付けられたんだとか。
 それでとりあえずヒマをもてあましていた末妹にモニターをお願いした。

「なんでも社長のキモイリ? とかで、予算たっぷりで作ったらしいよ」とミヨちゃん。

 美麗な映像のオープニングがダラダラ流れるも、幼女は容赦なくスキップ。
 ゲームはアクションロールプレイングにて、プレイヤーはキャラクターをメイキングしてから、異世界へと繰り出し大冒険を繰り広げるというもの。
 細かいキャラクターメイキングが一押しなのだが、細かいパラメーターの振り分けとかムズかしいので、幼女らはここもザックリスキップ。
 最初から用意されてあるキャラクターを選択し、とっとと冒険の旅へと出た。
 広大なフィールド、いろんなステージ、多彩なモンスター、行動次第で変化するシナリオとやり込み要素満載なのだけれども……。

「なんか、いまいちパッとしなよね」

 ミヨちゃん酷評。
 どこがどうというわけではないのだが、とにかくその通りにて、よく言えば玄人好み。悪く言えば地味?
 湯水のごとく予算をかけたというわりには、うーんな内容。
 ヒニクちゃんはそっとコントローラーを置くと、おもむろに口を開いた。

「制限なき自由は人を不自由にする」

 予算使い放題の企画や研究とかって、たいがいポシャる。
 浮気や不倫に走るのは、いろんな制限下にあるからこそ。
 何らかの枷をはめたほうが、いい知恵も浮かぶというもの。
 追い詰められ、ギリギリの状況下でこそ、いいモノが生まれる。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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