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499 買いだめ
しおりを挟むお昼休みの学校に、大きな荷台のトラックが乗り付けたので、ちょっとした騒ぎに。
聞けば、増税前に大量購入された備品を運んできたという。
箱に入ったトイレットペーパーとか、石鹸やらプリンターのインクとか、その他もろもろ。ここぞとばかりにまとめ買い。
なかには花壇の土や肥料、飼育小屋の動物たちのエサなんかも山と積まれていた。
あらかじめ教頭先生が用意してあった場所に、それらがせっせと運び込まれていくのをみんなと眺めていたミヨちゃんたち。
「うちもけっこうモメてるよ。お母さんは買いだめ派なんだけど、おばあちゃんは『焦って買いに走るとロクなことがない』って。あとヒロ兄ちゃんがノートパソコンを買い替えるかどうか、すっごく悩んでいる」とミヨちゃん。
「うちは生活雑貨をちょっと多めに買ったぐらいかなぁ。洗剤とかシャンプーとかメインで」とはチエミちゃん。
集合住宅暮らしゆえにあまりモノを置いておく場所がない。欲張って生活圏を圧迫するのはちょっと、という考えらしい。
「うちはお母さんのために電動自転車を買ったよ。弟の送り迎えとか買い物がけっこう重労働だから」と言ったのはリョウコちゃん。
ずっと二の足を踏んでいたのだけれども、買い物帰りに荷物パンパン、後ろに幼稚園児とかの曲乗りでの坂のぼりはキツイ。夫から「何か欲しいモノはあるか?」とたずねれて妻は迷うことなくコレを希望したという。
「うちはお姉ちゃんが愛用の顔パックとか、化粧品にけっこうつぎ込んでる。お母さんらは仕事で使う物がほとんどね。あとは常備薬とか」とアイちゃん。
ファッション関係に従事している両親、姉も読者モデルをしているので、どうしてもその手の品が多くなる。
テレビのニュースとかでも、増税前に買いだめに走る人々の映像がよく流れているから、もっと世間でははじけているのかと思いきや、身近なところではそうでもないみたい。
まぁ、元手がなければ始まらないし、あわてたところで欲しい品にかぎって売り切れとかになっている。
「どうせ、反動でガクンと冷え込むから、またぞろセールを打つはめになるわよ」
アイちゃんは市場の動向にとっても冷ややかなご意見。
「そういえば品物によって値段がかわるんだろ? あと場所とかでもかわるとか」と言ったのはリョウコちゃん。コンビニでも持って帰るのと、店内のスペースで食べるのとでは値段が変わるとか、アレは据え置き、コレは新税率とか「なんでそんなややこしいマネをしたんだ?」と首をかしげている。
これには他の幼女らも同意見にてそろって首をかしげて「なんでだろうねえ」
「えらい大人って、たまによくわからないことするよね。せっかくいい大学とか出てるのに何でなのかなぁ」
「さぁてねえ……。もしかしたら上とか数字ばっかり見てるせいかも」
「役人は優秀だけど、その上の政治家がダメだからじゃないの」
「でもその政治家を選んだのも大人たちだろ? 少なくとも子どもは誰も選んでないし」
「選択ミス?」
「それを言うなら人選ミスよ。やらしてみないと適性なんてわからないのが困るわ」
「見習いなら給料半分でいいんじゃないのか」
増税前の買いだめ話から、話題が横道にそれて「あーでもない」「こーでもない」とにぎやかなミヨちゃんたち。
それを尻目にヒニクちゃんがぼそり。
「しょせんは自分の財布が痛まないから」
予算じゃぶじゃぶ、ムダもじゃぶじゃぶ、高給でぶくぶく。
最小で最大の効果をあげる方法を模索すればいいだけなのに、
最大で最低の成果しかあげられない。もう意志決定はかしこいAIでいい。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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