ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

月芝

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561 虚言

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「なんだかまた小さくなった気がする。昔はもっと大きかったはずなのに」

 近頃、よく聞くフレーズ。
 ミヨちゃんのお母さんのちょっとした口ぐせ。
 原材料の高騰、増税、世界情勢、燃料費の値上がり、いろんな要素がどっと押しかかり、ついにこらえきれなくなったメーカーが商品の値上げに踏み切る!
 と、いけないところがツラいところ。
 消費者は値段にとっても敏感。
 たとえ一円、十円であろうとも、上がれば機嫌を損ねる。
 あっさり見限り、同業他社の品へと鞍替え。
 だからどこだって自社製品の値上げにはとっても慎重だ。
 どこが最初に辛抱しきれずに、値上げに踏み切るかのチキンレース。
 一社が行えば、他所もドミノ状態。でもしたたかなところは、あえて最後まで居残りガッツリ残り福にあやかったりもする。
 なかなか熱いかけ引きが市場にて展開している。
 それを踏まえて地元のスーパーをのぞけば、なにやら陰謀が渦巻いており、ちょっと楽しい気持ちになってくるというもの。

 マーガリンがいつのまにがグラム数を減らして、入れ物がコンパクトに。でも価格は据え置きと言い張っている。いやいや。
 ある醤油メーカーは、器を工夫して鮮度を維持することで付加価値を生み出した上で、値上げに踏み切った。これは良し!
 小袋が詰まったおつまみ系お菓子。気づいたら小袋の数がちゃっかり減っていた。なのに「うちは値上げしてません」と得意気。うーん。

「切り干し大根の袋が小さくなった。昔はもっといっぱい入っていた」

 そう言ったのはミヨちゃんのおばあちゃん。
 これはちょっと微妙な線だけれども、たぶん時代のせい。だって若い人はまず買わない食材だし、各家庭の規模も縮小気味。食べる人が減っている。使う人も減っている。だから昔ながらの量があっても、とても食べきれやしない。
 消費者のニーズに合わせた改良と考えれば、まぁまぁ。
 企業によって対応はまちまち。
 かと思えばガンコ一徹「うちは何も変えん!」とウン十年もそのままで通す、心意気を示すところもある。
 あんまり無茶をするもんだから、愛好家の方から、「せめて税金分ぐらいは値上げしてもいいから」と言われ心配されちゃうんだとか。
 意地も結構だが、それで消滅されてしまっては元も子もないから。
 その点、外食産業はわりとバッサリいっちゃう。

「材料が確保できませんので」「価格維持が難しいので」などと理由があれば、あっさりメニューを終了しちゃう。たとえ看板メニューであったとしても。
 そのくせちゃっかり限定復活! とかのイベントを企画したりもする。
 経営が苦しくなってきたら、「ヤツが帰ってきた!」とかあっさり廃止を取りやめて、再登板もさせる。
 この辺は生産ラインを抱える製造業との産業形態の差なのだろうか。

「このあいだウチの国で一番えらい人が言ってたよ。好景気だって。なのに量が減るんだよね。値段が上がるんだよね。景気がよくなった分はどこに行っちゃったのかなぁ」

 下校中のミヨちゃん。
 黄昏時の川の流れを見つめながら、軽くタメ息。

「水は上から下へと流れるのに、お金はちっとも流れてこない。そしてポテチの中身が減った。小さくても一袋は一袋。ツラい想いをするのは、いつも非力な子どもなんだよ」

 ぐだぐだと能書きを垂れていたが、とどのつまり、世の中が微妙なせいでオヤツの量が減ったことへのグチである。
 こちとら育ち盛りなんだよ。いま栄養を蓄えておかないと、将来、ボン、キュッ、ボンになれないんだよ。とのミヨちゃんの主張。
 これを受けて、いっしょに下校していたヒニクちゃんがおもむろに口を開く。

「そもそも本当に景気が良くなっているのなら、増税も医療費アップもない」

 外国に数百、数千億円も金をばらまいて、国内の困っている子や
 災害に苦しんでいる人たちには、ロクすっぽ手を差し伸べない。
 自国ファースト主義は決して褒められたことではないけれども、
 対外向けのカッコつけのためだけに、垂れ流される血税は、どうよ?
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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