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632 アフェアー
しおりを挟む「まただよ」
「まただね」
「あの女優さん、わりと好きだったのに」
「奪っちゃダメでしょう。ゲンメツだよ」
「少し前も、ほかの役者さんが散々に叩かれまくってたのに……。バカなのかなぁ?」
「分かってても、やめられないとまらない。それが恋」
「妻と別れるつもりだったとか、定番だよねえ。なんでダマされるんだろう」
「それがホレた弱味ってやつじゃないの。あばたもエクボってやつ」
「ダメ男なのにモテるみたいな?」
「っていうかモテるでしょうよ。芸能人だもの。それも俳優だもの」
「あー、確かにキラキラした人たちが集まる業界だし、美男美女にて才能も溢れてるとくれば、そりゃあ好きにもなるかぁ」
「奥さんがいるのに、他所の女にちょっかいを出すのが悪い」
「でも女性の方も相手にダンナがいるのを知っていて、付き合ってるんだから、どっちもどっちだよ」
「ケンカ両成敗? でも、誰が一番かわいそうかって言ったら、裏切られた奥さんだよねえ」
「奥さんと愛人を同席させたらしいよ。どんな神経してるんだろう」
「おっかねぇよ。そんな席はホラーだよ」
休み時間の教室にて、ミヨちゃん、アイちゃん、チエミちゃん、リョウコちゃん、ヒニクちゃんらが話題にしていたのは芸能人のスキャンダル。
某有名俳優と某有名女優が不倫。
きっかけば舞台の共演。
ここのところの世間の風潮にて、マスコミからやり玉にあげられて、絶賛炎上中。
「まぁ、ありがちと言えばありがちだよねえ。苦楽をともにして一つの作品を作り上げるうちに、ヘンな親近感とか一体感が生まれちゃうのかなぁ」
ミヨちゃんが首をかしげていると、「それはどうかしら」とアイちゃん。「みんながみんなくっつくわけじゃないもの。そりゃあ場の空気とか雰囲気に流されやすい人はいるでしょうけど、やっぱり共演者をそういう目で見ている演者に問題があると思うの」
映画やドラマ、舞台や番組なんかで共演していると、いっしょにいる時間が増える。
自然と接触する機会も増えるから、親密になるのは当たり前。
けれども、そこから先へ踏み込むかどうかは、当人次第。
「それもそうだよなぁ。だって共演が理由になるんだったら、いまごろ小学校はどこもかしこもカップルだらけになってるよ。でも現実は……」
リョウコちゃんがちらりと教室の男子どもを見てダマり込む。
彼女が何を言わんとしているかはわかっているので、ミヨちゃんたちも「だよねー」
「結局、相手次第ってことか。頭ポンポンとか壁ドンとかといっしょで、カッコイ人からされたらキャーってなるけど、それ以外からされたらゲロゲロで殺意をおぼえるから」
身もフタもないご意見を口にしたのはチエミちゃん。
「まぁ、個人的には奥さんやダンナさん、子どもや家族を裏切る行為は許せない。でもだからってドラマや映画で見るのもイヤかというと、それほどでもないかなぁ。スポンサーが降りるとか、コマーシャルが打ち切られるとか、番組降板とかはちょっと反応が過敏すぎると思うの。そもそもそんなのを気にしていたら、ハリウッドの映画なんて視れたものじゃないよ」とミヨちゃん。
ド派手なスキャンダルといえばハリウッド。
薬物、不倫、暴力、訴訟騒ぎに各種暴走などなど。
トラブルてんこ盛りにて、黒歴史だらけ。
なのにそんなスターがやってきたら、みんなキャアキャアよろこんでいる。
ミヨちゃんからすると、アレがよくってコレがダメとかいう境界がいまいちよくわからない。
そんな考えを受けて、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「不倫を英語でアフェアーという」
やった人を擁護する気はさらさらないけれども。
だからって外野が騒ぎ過ぎるのもどうかと思う。
問題を起こした方、問題を起こした相手を叩く方。
公私混同しているのは、はたしてどちらなのかしら。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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