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765 しんがた

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 小学校の教室にて、男の子たちの話題の中心はゲーム機のこと。
 今度、新しいのが発売されるらしいのだが、それがめちゃくちゃスゴイらしい。
 あまりにもスゴすぎて、朝のワイドショーとかでもとりあげられていたぐらい。

「いよいよ新時代に突入するってテレビで言ってたよ」

 ミヨちゃんは出がけに知った情報を口にするも、あまりゲームにはくわしくないので、どのへんがスゴイのかいまいちピンとこない。
 するとチエミちゃんも聞きかじった情報を披露する。

「なんでも人工衛星に積んでるコンピューターよりも、スゴイパーツが使われてるんだってさ」

 家庭用ゲーム機がいきなり宇宙並みと言われて、「へー」と感心する幼女たち。
 よくわらかないけれども、確かにスゴそうな気がする。

「本格的なバーチャルゲームも楽しめるって話なんだけど……」

 少々歯切れが悪いのはアイちゃん。
 SFのように仮想空間を実現しようとした試みは、かなり昔からある。
 コンピューターが登場し、その機能が向上するたびにチャレンジされてきた。
 が、どれもこれも微妙。
 仮想空間の土地を売買なんてこともあったし、バブルでぶいぶいいわせていた時期もあったけれども、すぐに企画が立ち行かなくなって、尻切れトンボで消滅。
 なんてパターンにて死屍累々。
 最近では体験型アトラクションみたいな形式で発展しているけれども、それとてもまだまだ。自在に仮想空間で暴れまわるとまではいかないのが実状。
 そして何より、遊んでいる当人はともかく、その姿をはたから見ていると、とってもマヌケで格好悪い。
 それゆえにアイちゃんは微妙な反応を示したのである。

「マンガやアニメとかだと、あっちの世界にとり込まれてとかいうパターンが多いけど、さすがにそこまではムリだろうから。新型機も実際のところどうかな? サッカーゲームはいい感じに進化しているから、いまのままでも十分楽しめるんだけど」

 地元のサッカーチームに所属しているリョウコちゃんは、家でたまに嗜む程度でしかゲームで遊ばない。
 それもサッカーゲームばかり。
 近頃のは動きがよくできており、フォーメーションとかの研究にも活用でき、遊んでいるだけでも勉強になるそうな。
 今の段階でも画面はCG映画ばりにキレイで、動きも滑らか。
 これ以上、何がどう進化するのか皆目見当もつかないと、首をかしげる幼女たち。
 するとここでおもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「新しくなってもやることはいっしょ」

 ボタンをぴこぴこ。十字キーをかちゃかちゃ。
 スティックをぐりぐり。かつては夢中になってプレイしていた。
 でも、ひさしぶりにやってみると、それほどでもない。
 そのことに気づいたときの、さびしさときたら……。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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